止揚へお歳暮

昨日は、止揚学園へお歳暮をお届けしてきました。 今や茫猿にとっては年末の恒例行事となった感さえある氷見鰤のお届けですが、クリスマスや歳末を迎える前にブリ刺しやブリ大根で温まっていただければと考えてのささやかなお届け物です。 今年も皆さんに喜んでいただけましたが、他にもとても嬉しいことがありました。

例年の如く鰤を買い求めるために、岐阜市千石町の魚豊さんへ伺ったところ、魚豊の大将からこんな嬉しいご挨拶をいただきました。 「一年の経つのは早いもので、今年も鰤の美味い季節になりました。今日は良い氷見鰤が入っています。 ところで、今年は私も一口のせて下さい。新巻鮭を二本お預けしますから学園へ一緒に届けて下さい。」 とても嬉しく有り難い申し出です。

魚豊さんで鰤を求め、学園へお届けするようになって随分になります。 魚豊さんでは私の趣旨にご理解頂き、毎年 仕入れ原価で鰤をわけていただいているのですが、今年はそれに加えて魚豊さんからの差入れもいただきました。 止揚学園への支援の輪がまたひとつ広がり、障碍者支援への理解が深まったのはとても嬉しいことです。

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鰤や新巻鮭を前にして、学園の皆はとても喜んでくれました。 学園の詩人でもあるかつ美さんは、「大きい魚やなー、釣ってきたの?」と尋ねます。 「そうだよ、びわ湖で釣ったの」と、答えようかと一瞬思いましたが、ウソはよくないので、「残念!お魚屋さんで買ってきたの」と答えました。

学園に在籍することが長くなり身体の不調なところも多くなった園生の人たちは、喜怒哀楽を大きく表現することはあまりありません。 知能に重い障碍をもつひとたちの日常性格は単調になりがちです。 そんな単調さを明るく賑やかな日々とするために、学園スタッフの人たちはお八つの時間には一緒に歌をうたい、訪問客があれば共に和やかに過ごします。 この日も体調の佳い人たちが学園スタッフのリードでホールに集まり、鰤にさわったり記念撮影をしたりして、小さなイベントを楽しむのです。

こんな話も伺いました。学園の食堂は一階、遊戯ホールは二階にあり、エレベータも備え付けてあります。 車椅子を使っている園生はエレベータで移動しますが、介助があれば歩ける園生は階段を使って移動するのです。 エレベータを使えば早く無理なく移動できますが、衰えつつある足腰を少しでも維持したいから、介助に手がかかり移動時間も長くなりますが階段を使い、エレベータは車椅子専用なのだそうです。 福祉には一般的な経済性や合理性は不似合いだと達雨先生や面条先生は常々言われていますが、こんな日々の小さな介護が長く続けてゆける止揚学園であっていただきたいと思います。

また学園は調理施設と調理スタッフをかかえていますから食事を外注していませんが、行政の指導姿勢は給食センターなどの利用を勧めるものであり、そのほうが経済的かつ合理的な施設運営であろうと行政は指導されるそうです。 でも園生にとって食事は一番大切なことであり、一人ひとりの好みや体調に合わせた食事を用意することが大事なのだと達雨先生はじめスタッフの皆さんは考えています。 つまり、学園に調理施設が無ければ、茫猿が鰤を丸ごとお届けするようなことなどはできないのです。

学園にとっては一年の初めであり、一年最大の行事であるクリスマスが近づいてきましたから、学園のなかはクリスマスムードに溢れています。 冬陽射しの明るいホールにはシラカバやナラで作られたトナカイが四頭も飾ってありました。 伺えば、これも支援者から先日贈られてきたものだそうです。しっかりとした細工のトナカイ人形にはクリスマスリーフも飾られているのです。

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応接室のなかもクリスマスムードです。 伺えば、サンタのクッションはもう十年も前にいただいたもの、小さな人形やツリーもあの方から、そしてこの方からいただいたものとのこと。 そういった様々な方からの贈り物を大事にしていますから、クリスマスの飾り付けは年々華やかになりますとも話されていました。

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無職渡世の身となって久しく懐寂しい茫猿ですから、実のところ、今年はどうするか少し迷いました。 でも、私にとっても一年を無事に過ごせた締め括りになるだろうし、何より学園の皆さんが喜ぶ顔が見たいと思ってのことでしたが、魚豊さんからの思わぬご支援もあり、心なごむ歳末の一日を過ごせました。 来年のことなどわかりませんが、来年も学園に鰤をお届けできたら嬉しいことだろうな、できれば来年こそは止揚学園特製の『ブリ大根』をいただきたいなと思いながら、暮れなずむ近江路を帰ったのです。

 

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