【直球ストレート内角勝負】

【直球ストレート内角勝負】 有限会社ランドフォーライフ研究所所長 不動産鑑定士 田中利彦様
 今回森島氏が鑑定協会会長立候補の決意を固められたと聞き、日頃権威には批判的で、「弱きを助け、強きを挫く」言動ぶりからは当初信じられず、大変僭越ながら、森島氏とも有ろう方でさえ権力ポストが欲しいのかと、内心うがってしまいましたが、動機を伺っていると、逆に日頃の言動どおりに、否「そこまで我々後進の者の事を、そして業界の将来の事を真剣に考えて頂いているのか」と胸が熱くなりました。


 森島氏は皆さんご存知のとおり、岐阜県鑑定士のカリスマ的存在でありながら、私が知る限り最も鑑定評価を楽しみ、技術向上に熱心な方です。
 普通本会理事までやるようなお偉いさんになると、若い衆を複数事務所に配置し、ご自身は営業や対外活動に忙しいのが通 常ですが、森島氏の場合には、氏自ら鑑定評価を為されています。「鑑定評価の仕事を楽しみたい、いい仕事を自分で確認しながら出していきたい」という意欲が非常に強い方です。仕事に関する愛読書はもちろん「不動産に関する基本的考察」(櫛田光男著)であり、この本のスピリッツをこよなく愛する私にとっては、この本を土台に独自にヴィジョンを展開される森島氏のお話には非常に共感するところが多いというのが率直な感想です。
 岐阜県鑑定士協会は県と協議し、全土地取引をパソコンに入力し、当事者に発送し、得られた回答をまた入力しています。各会員はWANにより、協会パソコンからデータを取りだして、取引事例を作成し、出来た事例はさらに協会のパソコンにデータ保存されます。
全国の士協会(部会)の中でも取引事例のデータベース化ではおそらく先端を進んでいるでしょう。このシステムは森島氏のリーダーシップに負うところが大きいのです。
 さらに氏の先見性に富んだ指導で、岐阜県鑑定士の若手を中心とするメンバーにより、企画小委員会が発足し、賃貸事例の収集体制の検討を行い、収益還元法におけるデータ整備にむけて一歩づつ進めているところです。
 土地取引情報が不完全であった時代背景に基づき、鑑定士制度が創成され、適正な地価価格形成を通 じて社会に貢献する役割を背負ってきているはずですが、鑑定士制度が出来た当初の燃えるような理想像・輝かしい将来像が「基本的考察」には書かれていますが、現状の鑑定業界はどうでしょうか。櫛田光男氏がこの状況を見ることができたら、喜んでもらえるでしょうか、地価公示制度等の公的評価拡充により、鑑定士の活動領域が公的に広がり、喜ばしい反面 、その内容と将来の動向については大層嘆かれるのではないかと危惧します。 
 今まで多くの鑑定士は土地取引情報の独占権益の上に胡座をかき、評価書の内容の精度向上として研鑽を怠り、現場の地価価格の声さえ聞く努力を怠ってきたのではないでしょうか。今は鑑定士バッシング(いじめ)されていますが、今後土地取引情報の開示により、鑑定士パッシング(無視)の方向になりかねません。また競売制度における最低売却価格の廃止さえ、検討され始めています。
 収益還元法についても昔から市井から切望されているのに賃貸事例データの収集体制・利回りの議論が不十分であるので、十分な回答を一般 社会に提示できないのが現状です。
  森島氏はこのような極めて危機的状況にある鑑定士業界なのに、本会理事会では、このような危機感が非常に希薄であることが残念であると言われています。誤解を恐れず申し上げれば、「鑑定業界はあと5年から10年はこのまま推移するであろう、その後は危ないかも知れないが、私はその後は年金生活だから傍観することになるな。」というのが、大変僭越ながら、今の多くの50代から60代の鑑定士の氏方の率直なお考えではないでしょうか。
 森島氏はこういう状況に少しでも風穴を開けたいからこそ立候補したのだと言われています。本当はラクしようと思えば最もラクできる立場であるのに。こんな火中に栗を拾わなくても良いのに。
 いわば同点の場面で9回裏二死満塁の絶体絶命的な状況で、リリーフエースとして登板されるということでしょう。登板の際には、必ず、具体的な数々の提案の実現という、内角をえぐるような直球を投げて頂けるものと確信しています。
 願わくば森島氏以外の候補の方にもこのような状況から逃げることなく、直視して、速球の投げ合いを見せていただきたいと、固定作業をサボって高校野球を見ながら思いました。
有限会社 ランドフォーライフ研究所
所長・不動産鑑定士 田中利彦

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