鱧とナニワのマルクスと寅さん

 「鱧」は読めますか?、関西の方は読めるでしょうが、関東以北の方は馴染みがないと思います。関東以北で珍重される魚は「鮟鱇」でしょうね。鱧も鰻も泥鰌も穴子も夏場の魚ですね。皆、鱗がなく細長い身体で、少々水から離して置いてもヘタラナイ強い魚です。いずれも精力が付くと云われています。精力についてはウツボが一番でしょうが。


 遅めの短い夏休みが取れました。旧盆の4日間も拠ん所ない諸般の事情から仕事に追われる破目となり、娘の墓参りもままならない始末でしたが、やっと短い夏休みを京都で過ごしました。
 古くからの友人達の好意で、この夏初めてのハモを頂きました。
「牡丹鱧」、小骨が多いので、そのままでは大変食べにくい鱧は、三枚におろして骨切りをします。シャリシャリと大振りの包丁で皮一枚を残し、1ミリか2ミリの間隔で包丁を入れて、小骨を細断します。その後で湯引きをしますと。皮が縮んで、美しい身が白牡丹のように開くのです。これを梅肉や山葵醤油で頂きます。冷たくひやした鱧は、あっさりした爽快感を口の中に広げてくれます。
 牡丹の異名は、白い鱧の花びらの真ん中に紅い梅肉を添えて、彩り艶やかなことから発しているのでしょうか。
 「鱧皮」、鱧に限らず魚は身皮が一番美味しいと思います。虚実は皮膜の間にありと申しますが、美味も皮膜の間にありでしょう。河豚も林檎も塩ジャケも口唇の間に美味有りではないでしょうか。男女の虚実も紅唇と口舌の間に有りといえますが。鱧の皮を炙ってきざみ、胡瓜と二杯酢を合わせて頂きます。箸休めに最適です。
 「鱧の柳川風、鱧寿司」鱧を柳川鍋風にして頂きます。夏でも美味しい鍋です。
鱧寿司は照焼した鱧を押し寿司にします。鱧を鱈腹頂くと、夏を感じますし、夏休みを頂いた実感がします。この夏は、それに「鄙願」が加わりましたから、一層味わい深い夏休みでした。(鄙願は前回の記事を読んで下さい。)
 とても高価で一度しか食したことはありませんが、美味と贅沢の極みは「鱧シャブ」です。骨切りをした鱧とハシリの松茸でシャブシャブをするのです。鱧も松茸も美味しいのは当然ですが、何よりは松茸の香りと鱧のエキスから出来上がるスープです。上品で、香気漂い、あっさりとしていて、それでいて深みのある澄まし汁です。最後は当然「おじや-雑炊」にします。この夏は、友人達もそこまでは面倒を看てくれませんでしたから、食することはできなかったのですが。
はも【鱧】はも(広辞苑より転載)
(古名はハム。ハミ(蛇類の総称)と同語源)
ハモ科の海産の硬骨魚。体形はウナギ形で、全長2メ-トルに達するものがある。吻はとがり、口は大きく鋭い歯をもつ。背部は灰褐色、腹部は銀白色。体は滑らかで鱗がない。南日本に産し、関西では、はも料理の材料として珍重。北日本で、アナゴのこと。
 ところで、晩夏はなぜかもの悲しい雰囲気が漂いますが、あれはどうしてなのでしょうか。空気が澄んで、日陰と日向のコントラストがあまりにも鮮やかだからでしょうか。朱夏・盛夏の峠を越えてしまったという気怠さがもたらすものなのでしょうか。子供の頃に夏休みが残り一週間になって、在所の友達と遊び呆けた報いから、宿題に追われる悲しさを未だに引きずっているからでしょうか。何故か晩夏の昼下がりはもの悲しいのです。
 閑話休題、テーマの三題噺は、鱧で尽きてしまいました。ナニワのマルクスと寅さんについては、次回に譲ります。

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