地価公示2004&花灯路

【茫猿遠吠・・地価公示2004&花灯路・・04.03.23】
 01/01/2004地価公示価格が公表された。
東京都心と拠点都市の一部を除けば、依然として下落基調にあり、前年下落率を上回る下落率を示した地域も多い。
 今朝の朝日新聞は、「固定資産税収維持等、行政の意向を映して公示地価は実勢より高い。商業地では収益還元法による評価が主流」という、いつもの論調を掲載していた。
 そのなかで、岐阜版に掲載された地元A鑑定士のコメントに注目したい。岐阜県の鑑定業界で指導的立場にあるA氏は、こう述べる。
「現在の地価下落は、もはやバブルの後遺症ではない。少子高齢化などの構造的なものだ。」
 短いコメントだから、A氏の真意は定かではないが、茫猿は多分つぎの様なことであろうと考える。即ち、量的拡大成長増強を目指す方向から、質的充足を目指す方向に転換すべき時ではなかろうか。
・農地の30%が余剰となっている現実がある。
・この余剰農地は、常に宅地転換圧力として存在している。
・少子化の進行は、住宅地需要を減少させている。
・近隣型商店街や小都市商業地の衰退が進みつつある。
・商業地地価が成立するエリアがどんどん狭くなっている。
・もしくは、商業地の選考性がより明瞭になってゆく。
・要素均等定理的に云えば、工場地の余剰、農地の余剰は止めようがない。
・勤労者の海外移転という視点からは、住宅地の余剰も避けられない。
 つまり、農地や林地は本来の農林地価格に収斂して行き、宅地転換を軽々に
は云えない状況が進んでゆく。工場地も生産コストとして成り立ち得る水準を
目指して価格は推移してゆくであろう。
 商業地も郊外路線型地域と限られた都心型商業地以外の商業地が存在できる
余地はますます乏しくなってゆく。近隣型商業地の衰退は顧客の減少と後継者
の不足という二つの要因が相乗効果をもたらしている。
 農林業は既に後継者不足の時代を終えて、専業農林家が僅かではあるが育つ
萌芽が芽生えつつある。そこには農地価格(地代)がコストとして意識される。
 こういった構造的な問題を考えると、地価は単なる地価問題では収まらなく
なる。税とか流通といった小手先的な手法が地価下落の解決策になるとはとて
も思えない。農林業、商工業といいた産業問題は別にして、住宅地問題を考え
る時に、改めてシビルミニマム的目標設定が必要なのではなかろうか。
 一つは、東京圏への過度の集中を避けるための、日本列島二眼レフ構造的発
想が求められるのではなかろうか。今や灯の消えた首都機能移転を持ち出そう
というのではない。関西圏の復活復権を日本全体として考えなければいけない
のではなかろうか。
 いま一つは、住宅を考える時に量的充足を求める時代はとっくに終わってい
るのであり、質的目標を国家的プロジェクトとして掲げる時なのではなかろう
か。
 戸建住宅について云えば、需要者の支払い能力との関係から総額2千万円程
度の目標設定ができないだろうか。目標設定に際して、住宅の質的な充足が必
須条件であるから、2千万円の内訳は4LDK・100平米程度の住宅とその敷地
(250平米)位を目標にする。
 建物価額と敷地価額を半々とすれば、建物は平米単価10万円、敷地の平米単
価は4万円である。 これは地方中核都市の中心価格帯としての話だから、都市圏都心や地方都市周縁部では自ずと異なる価格帯設定となろう。
 いずれにしても、百年住宅であること、中古住宅市場に流通しえる汎用性を
有するものであること、そしてシビルミニマムを満たす住宅であること。
こんな政策目標を掲げて、全ての施策をその方向に向けることはできないのだ
ろうか。
 優遇税制、都市計画、建築規制、融資等による誘導、なによりも広義の社会
資本充実という観点からターゲットゾーンの設定が求められると思うのである。
 可能、不可能を議論するのでなく、設定目標に向かって努力することが大事
であり、目標達成のための手法を考えるべきであろう。
 例えば、住宅を1年で完成させるのではなく、当面不要な内装・建具などは
後回しにするとか、敷地の一部を定期借地にするとか、様々な方法論が存在し
得るのではなかろうかと考える。
 何よりも、住宅の目標が質・規模的に明らかになり、価格目標も明らかにな
れば、地価はその方向に向かって軟着陸を始めるだろうし、底の見えない地価
下落という不安からは解放されるであろう。
夢物語と一笑にふすのは簡単でしょうが、真面目に検討する可能性は全くないと云うのでしょうか。過度に持ち家政策に偏重してきた住宅宅地政策を大きく転換するとても佳い機会だと考えるのですが、駄目でしょうかね。
・・・・・・閑話休題・・・・・・
 久しぶりに京都話題です。先日、花灯路なる催しを見ました。
 花灯路を紹介するサイト
 http://www.hanatouro.jp/
 いつもは、東山通りから参道越しに見る黒々とそびえる知恩院山門が、ライ
トアップされて荘厳な趣でした。高台寺付近ねねの道や石塀小路は灯籠の数が
多すぎて幽玄というよりは、少しせせこましい感じだったのが残念でしたが、
それでも円山公園の枝垂れ桜や、大谷廟参道の雰囲気は結構なものでした。

 ライトアップされた知恩院山門

 まだ蕾の円山公園枝垂れ桜

 路地の花灯籠

花灯路の其処彼処におかれた生け花

関連の記事


カテゴリー: 茫猿の吠える日々 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください