【茫猿遠吠・・ブロードバンド化-2・・04.04.25】
前号記事に引き続き、岐阜会の情報基盤ブロードバンド化について
ご案内します。
四、現況コールバックシステムWAN&Cybozuの問題点
現行のコールバックシステムにるWAN及びCybozuは長所ばかりではございません。少なからぬ欠点も内在させています。現在準備作業進行中の士協会情報基盤のブロードバンド化はその欠点を補おうとするものです。
1.WANとCybozuの利点
手軽に構築できるし、会員(クライアント)側では、M.I.Eなど一般のブラウザーを使用するのみであるから、特段のソフトの導入を必要としない。
サーバー側(士協会事務局)でも、メンテナンスが容易であるし、導入コストは低額である。
2.通信速度と通信容量の限界
しかし、ISDN回線利用であることから、通信速度は 64KBpsが限界である。
テキストデータの送受信には不便を感じないが、地図や写真などのイメージデータの送受信あるいは大量ファイル等大容量データの送受信には不向きであるというより、現実的ではない。
3.コールバック費用の負担
コールバックシステムを利用することから、アクセスした会員が利用後直ちに回線を切断してくれないと、無駄な通信費が発生する。岐阜会ではダイアルアップの設定で切断するまでの待ち時間を10分以内に設定するように求めているが、実際の処、各会員の設定詳細は不明であり、無駄な接続経費が発生しているおそれがある。
仮に接続設定を行っていても、利用後直ちに切断しなければ自動切断までの待ち時間は無駄な通信時間となってしまいます。
これらに要する通信費は、全て士協会が負担することになります。
ただし、煩雑に利用しなければならない地価公示幹事さんや士協会役員にとっては通信費が士協会負担となる点において合理的と云える。
4.通信経費の無駄
ここで云う通信経費の無駄とは、コールバックに伴うものではない。
読者諸氏も既にフレッツADSLやBフレッツを導入されていることと思います。岐阜会でも最近では過半の会員がブロードバンドに対応する状況です。
したがって、会員はフレッツADSLまたはBフレッツ導入により、定額料金でインターネットを利用している訳であり、士協会WAN接続だけのためにISDN回線を維持しているという状況です。
個々の会員のISDN維持経費は数千円以内であるが、士協会全体としてみれば数千円×会員数というわけであり、この毎月の過剰経費を別の事業に振り向けることができれば、コストパフォーマンスが改善される訳である。
さらに、フレッツADSLやBフレッツを通じた接続であれば、シームレスにインターネットにあるいは士協会WANにアクセスできるが、別回線の利用であれば、士協会接続の都度ダイアルアップする必要があり、コールバック待ち時間を含めて時間的ロスも軽視できない。
5.通信時間の冗長さ
ISDNによる士協会WAN接続とADSLや光ファイバーによるインターネット接続の両方を体験している会員には既に自明のことであるが、士協会WANを通じて表計算ファイルなどを開いてデータの書き込み保存に要する時間と、インターネットを通じて法令検索、相続税路線価閲覧、固評路線価閲覧に要する時間の大きな差はいかんともし難いというより我慢ならないものになりつつあります。
ブロードバンドで路線価値図をサクサクと閲覧し印刷した後で、士協会WANに接続してあまりにも遅い接続待ちに遭遇するとなぜにこのような差があるのか、あるいは時代遅れのシステムを維持しなければならないのかと考え込まされてしまいます 士協会WANの通信速度の遅さは、ブロードバンドとの比較上の話であり、インターネット接続もISDNで行っている会員にとってはその差を体験したことがないから、痛痒を感じてはいません。
最近の面白い話は、会員事務所が自宅併設または近接の場合に、息子さんや娘さんなどが学校や職場でブロードバンドを体験していますから、帰省するたびに事務所のiNet接続速度の遅さに呆れかえったり、フレッツ対応(月間定額料金で使い放題)でないことに驚いたりすることです。
事務所のブロードバンド化とLAN対応が家族の要請で進められ、使い放題と複数PC接続が実現すると同時に、結果的に士協会情報基盤のブロードバンド化を後押しするという事象は興味深いことです。
5.安全性の落とし穴
コールバックシステムは、前号で説明したように、ピアツーピアシステムでありファクシミリと同程度に安全性は高いものである。またファクシミリには送信先ダイアル間違いという事件が起こり得るが、コールバックシステムではそのような事態は起こり得ないから、より安全とも云える。
しかし、安全性というものは昨今の多くの企業に於ける個人情報漏洩事件をみても判るとおり、オンライン上で起きることは稀というよりは実態上殆ど無くて、多くは属人的状況で発生する。
例えば
・ノートパソコンの置き忘れ、紛失。
・事務所パソコンの安易な廃棄処分。
・HDを物理フォーマットするか破壊しない限りデータの漏洩は起きる。
・CD、FD、MOの置き忘れ紛失
・最悪なのは、意図的な流失あるいは漏洩である
・会員が意図的に漏洩しなくとも、事務所スタッフによる漏洩はあり得る。
以上のように、安全性に100%は無いのであり、システムをいかに頑丈に
しても、パスワードの漏洩やパスワードの安易な設定があれば、セキュリテイ
は維持できない。さらに属人的な漏洩は、個々のクライアントの意識向上以外
に防げないが、その意識向上ということこそが実は一番難しいことである。
五、士協会情報ネットワーク基盤整備事業(ブロードバンド化仕様案)
(一)事業内容
1.事務局の基盤整備
・バックボーンとして、光ファイバーを導入する。
・VPN(バーチャル プライベート ネットワーク)の採用
2.事業効果
・コールバック方式に代わり、VPNを利用し通信速度を向上させる。
・同時に通信手段のシームレス化を図る。
・情報伝達速度と安全性を向上し、管理と操作の簡便さを実現する。
・事務局LANと士協会WANを更新し、機能性を高める。
・事務局で印刷物スキャニングを行い、印刷データの保存配布を簡便にする。
・会員の情報伝達手段について選択肢を広げる
・公示等幹事の負担をより軽減する。
・オンライン閲覧システムを起動させて、スキャンデータの閲覧配布を行う。
・IP電話機能を利用し、TV会議を可能にする。(将来課題)
・事務局の配付資料コピー費用を全面削減する。(経費削減効果)
・コールバックシステム通信費の全面削減。(経費削減効果)
3.留意事項
・会員の選択肢維持のため、現行のISDN接続も当面は維持する方向です。
・Cybozuは現行のままですが、WAN接続とのシームレス化を実現する。
・岐阜県士協会では大量データの配布用に20GBUSB接続の携帯HDを利用して
いますが、ブロードバンド化を実現しても、この携帯HD利用は継続し、その
有効活用を行ってゆく予定です。
六、士協会情報基盤(WAN)の更新企画の長短
1.プラス点
◎速くなる。 ADSLの場合下り最大40MBPS、上り1MBPS
◎大容量データの送受信が可能。 Bフレッツ(光)最大100MBPS(上下)
◎安くなる。 フレッツADSLまたはBフレッツへの統合
◎コールバックの廃止。 NTTの保証するセキュリテイ実現
◎簡易になる。 各種の接続を統一する。
◎ブラウザー・クリックでシームレス移行できる。
◎複数接続地点の登録やフレッツスポット利用により、モバイルの実現。
◎ADSLであれ、光であれ、iNetが格段に速くなる。
2.マイナス点
◎会員の住所によっては、全員が同じ環境を享受できない。
◎士協会事務局のバックボーン・ランニングコストが発生する。(50,000円/月)
フレッツADSLもBフレッツも引き込めないのに、士協会のバックボーン
負担コストは同一では納得できないと云う意見が存在するであろうと予想でき
ます。しかし、フレッツISDN会員も若干の速度向上と操作利便性、並びに
システム機能向上の便益は享受できます。
また、よほどの山間地でない限り、近い将来にADSLやBフレッツの圏域
拡大は見込まれますし、フレッツスポット利用によるモバイルは実現できる。
さらに、コールバック廃止に伴う、トータルコスト軽減の益は享受できる。
七、岐阜県士協会員の認識状況
一口に情報基盤整備と云いますが、情報基盤に対する士協会会員の認識度或いはiNet利用の状況に相当の差違が生じていることは、まぎれもない事実です。
例えば、他の会員にE-Maill等を発信するのに、一々事務局を経由したり、事務所職員にタイピングして貰ったりと他者の手を煩わせるてから発信するという、不可思議な方法をとられる役員氏も見受けられます。
受信E-Maillも、事務所職員が閲覧印刷して鑑定士の机上において確認を求めるという、錯誤的状況も存在しているようです。
士協会会員の情報基盤即ちインターネット接続状況も相当の差違が生じています。ISDNのみの単独接続会員、ISDNプラスADSL或いはケーブルテレビ、Bフレッツ等のブロードバンド複数接続会員の二者に分かれつつあります。特に45歳以上の会員と45歳以下の会員の落差は結構大きいように見ています。
以上の状況を考えますと、岐阜会会員一斉に接続回線更新という方策は無理が生じます。希望する会員から、可能な会員から順次移行すればよいと考えるものです。会員の自己責任に基づく判断に委ねればよいと考えるものです。
八、ブロードバンド化のもたらすもの
ブロードバンド化で何を行うのかという疑問も多く寄せられていますが、茫猿は次のように考えています。
ブロードバンド化という整備自体がコストの削減と通信速度の向上及び利用環境の簡易さをもたらすものであることです。
いわば、電話を引いて何をする、ファクシミリを使って何をするという設問に似ております。ブロードバンド利用は写真・地図その他の大量のデータの送付配布を容易にし、さらにはHD共用による資料の共用・共有等をもたらすものです。
二十五周年事業で大量の写真がデジタルカメラで撮影されました。
これらの写真を印刷して配布するのは論外ということは、どなたもご承知のことでしょう。では写真ファイルをCDやDVDに複写して配布するのがいいの
か、それとも士協会事務局HDに二十五周年記念アルバムというフォルダーを用意しておいて、会員はその全てをあるいは必要なものをダウンロードする。
ダウンロードもしないで、見たい時印刷したい時にアクセスして閲覧または印刷する。いってみれば、オンデマンド化ということでもあります。
記念アルバムだけのためならば、あえてブロードバンド化を進める必要はないでしょう。しかし、今後の地価公示、地価調査をはじめとして、我々鑑定業界を取り巻く環境が変化しつつあり、ブロードバンド化が進められています。
鑑定評価依頼先から、地図や測量図や写真がPDFファイル等で送られてくるようになりました。評価書データのオンライン納品も求められるようになりつつあります。そう云った状況を考えればブロードバンド化対応は必須と思われます。
九、VPNについて
(1)VPN
VPNは二種類あります。インターネット上で暗号化通信を行うという方法と、NTTの地域IP網を利用して交信するという方法です。今回岐阜県士協会が実施しようとしているのは後者です。後者は経費が若干高くつきますが、安定性及び安全性に優れているという評価がされるものです。
茫猿は暗号化VPNで十分セキュリテイが維持できると考えますが、万、万が一の事故、(それも会員事務所で起きる可能性や会員の不注意事故の方が多いと考えます)その万が一の事故に責任を誰が持つのかと考えた時に、社団法人という組織の特性からは、NTTの地域IP網利用のVPNを選択することにより、一義的なセキュリテイ責任を通信事業者が負う方式を採用すべきと考えるものです。
(2)守秘義務
最後に、岐阜県士協会がブロードバンド化と並行してネットワーク構築をNTTのフレッツグループあるいはフレッツオフィスを基盤として行おうとする最大の理由は、個人情報保護法の施行にあります。
鑑定評価を行う際に知り得た個人情報については守秘義務が課せられていま
すが、これらの個人情報やプライバシー権に関わる情報をE-Maill添付ファイルなどで扱う危険性は云うまでもないことです。
課せられた守秘義務にかなう情報基盤整備が求められる訳であり、その速やかな対応が必要と考えるものです。
このあたりに関しては、日本鑑定協会による速やかなガイドラインの設定が待たれるところです。
個人情報保護法
http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/houseika/hourituan/
個人情報とプライバシー権
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/03/23/2004/2525.html
十、VPN並びに光ファイバーその他について
VPN(バーチャル プライベート ネットワーク)について
http://www.ntt-vpn.com/index.html
岐阜会が採用しようとしているフレッツグループについて
http://www.ntt-west.co.jp/flets/group/
IP-VPN、その他について
http://www.ntt-west.co.jp/ipnet/office/
オンライン情報共有について
http://www.ntt.com/sme/index.html
光ファイバーは、各社から様々なサービスが提供されていますが、読者の住所地に於けるサービス提供状況については、下記のサイトから西日本NTTのサービス提供状況が確認できます。
http://www.ntt-west.co.jp/ipnet/ip/bflets/entry/entry_form.html
東日本NTTはこちらから
http://www.ntt-flets.jp/
http://ntt-ocn.parfait.ne.jp/
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