哀しいできごと

 このところ、結構多忙である。業務的には公示も相評も終わり、固評は担当地点数が少ないのでそれ程でもないが、どういう訳か通常業務がやや繁忙状態である。そこへもってきて、お決まりの風邪、それに近所づきあい(茫猿は親代々田舎に居住するから冠婚葬祭の付き合いが、結構多い。新年は隣家の葬式付き合いが立て続けに2件もあって数日間閑在をした。今日も午後から町内の新年懇親会が行われる)等々の他にも、新スキーム関連も放置できないことが多くなってきた。なんやかやで忙しいのである。 そこで、放置できないと考える最近の出来事を短くコメントしてゆく。


『西武前社長の自死事件』
 昨夜、西武鉄道(株)前社長が自殺された。報道に拠れば、連日の事情聴取で極度に疲労されてのことのようである。死者に鞭打つことは、日本人の礼儀ではないが、とても哀しく感じる出来事である。
運輸省退官後、93年に西武に役員として迎えられ、一連の西武騒動の後で社長に就任し、つい最近後任に社長職を譲って退職された方である。
 疲労の故か、連日の取り調べに参ってしまったのか、それとも一身に全てを背負おうとされたのか、判らない。判らないが、とても日本的で哀しい。本当の責任者である「堤義明氏」が前面に出て、いさぎよく全てを語るか、全てを闇に持ってゆくか、それがリーダーの務めであろうと思うが、兎角、日本の真のリーダーは責任を取ろうとしない。 ここにも、「ノブレスオブレージ」に欠けたというか、その自覚のない指導者(堤氏のことである)の一例がみられる。
『ライブドアその後』
 ライブドアがニッポン放送株を取得した事件は、表向き膠着状態にあるようだが、ライブドアに融資したリーマンブラザーズは投資利益を確保したようである。詳しいことは下記のブログ記事に委せるが、日本の証券法制の間隙を縫ったクールな遣り口ということである。
 この点に関して、長銀事件の時と同じく「禿げ鷹ファンドは、ケシカラン」という論調が横行しているようだが、彼等の跳梁跋扈を許す日本の遅れた法制度が問題なのである。それはライブドアの時間外取引についての批判にも表れている。リーマンにしてもライブにても、違法行為を行った訳ではない。
 英米では許されないかもしれないが、日本では許される。その間隙を突かれただけのことである。
 ライブの時間外取引についての政官財界の意見も多数派は在来型日本情緒的であり、その根っこは行政指導や阿吽の呼吸的慣行にあるようだ。
 最も端的に表れているのは、ニッポン放送株支配に対する、フジテレビ社長や前現総務大臣のコメントである。問題を取り違えており、アンシャンレジュームへの郷愁以外の何物でもない。ここで云うアンシャンレジュームというのは政財官界の癒着トライアングル体制を云う。法治主義ではなく、人治主義というか行政指導(主導)主義というものである。
 ホリエモンはニッポン放送支配か産経新聞支配か、それとも第二の創業者利潤を得て、ライブドア経営から引退することを選択するのか、近々に結論が出るのであろう。
『小学校乱入事件』
 またまた、小学校乱入事件である。他にも幼児虐待は後を絶たず、子供への通り魔的犯行も頻発している。それら異常事件に共通するのは、弱い者虐め心理ではなかろうか。自分が優位に立てると確信(実は錯覚)する対象に、自己の不満や歪んだ欲求の捌け口を求めるということではなかろうか。
 他者とのコミュニケーションがとても不得手で、自己中心世界に引きこもることから始まるような気がする。それは、責任も義務も伴わない誤った個人主義が蔓延することから始まっているように思われる。
 十把一絡げ的乱暴な筋立てをする意図はないが、電車や通路に座り込むのも、社内で化粧や食事をするのも、映画館で携帯着メロを鳴らすのも、皆同じ根っこにあり、そう云った誤った個人主義:ミーイズムの究極の到達点が弱者虐待なのではなかろうか。
 そういった意味からは、もう高齢世代となった世代の拝金主義、引退時期に入った戦後世代のマイホーム主義などが、今の風潮の呼び水と為っているのではなかろうか。
 茫猿が、ノブレスオブレージを云うのも、教養主義(リベラルアーツ)を云うのも、鄙を云うのも、ミネルバの梟を云うのも、みな、其処を危惧するからです。
※リベラルアーツ【liberal arts】
 ギリシア・ローマ時代からルネサンスにかけて一般教養を目的とした諸学科。
すなわち文法・修辞学・論理学(弁証法)の3学および算術・幾何学・天文学・音楽の4科の7学科を云う。
『北鮮の蟹』
「セコガニ」というのをご存じですか。
地域によって名前が異なり、セコガニ、コウバコガニ「甲箱蟹・香箱蟹」とかゼンマル、アカコ、クロコなどという名前でも呼ばれる。ズワイガニの雌のことである。そもそもズワイガニとは雄のみの名前で、これも地方により松葉蟹とか越前蟹とか呼ばれる。
 雄のズワイガニが甲羅の直径だけでも15cm前後あるのに、雌のセコガニは5~7cm程度の小振りな蟹である。でも甘味があってとても美味しいし、甲羅が抱く卵や蟹味噌も美味である。
 茫猿がよく立ち寄る魚屋に、昨日のこと、そのセコガニが売られていた。
セコガニは資源保護の関係から漁期が短く1/15頃には禁漁になっているはずだから、不思議に思って尋ねたら「北朝鮮輸入物」だそうだ。 新鮮でまだ生きているし、一杯・二百円ととても安いから十杯も買って、美味しく賞味したのだけれども、食べながら気がついた。
 日本では、資源保護の為に禁漁期に入っているのに、北朝鮮ではまだ捕獲されているのである。しかも安く輸出されて、日本の消費者が賞味している。昨今話題の経済制裁の問題やら、日本海の資源枯渇問題やらに気付いたら、今冬最後の珍味を味わいつつ考えさせられてしまった。
でも、いけない消費者と反省しつつ、セコガニは十分堪能した。
『新スキームと個人情報保護法』
 最近、茫猿はこんなことを云われた。
「あんたが、警鐘乱打していても、誰も見向きもしないし関心もない。」
別に、警鐘乱打なんて大袈裟なものではないし、茫猿としては過去の公取調査事件のトラウマがあるから、個人情報保護法の曖昧さや行政裁量主義がとても気に掛かるだけである。
 この件は何度も記事にしているから、手短に云うと、鑑定業界が05/04/01以降に直面するのは、一つは行政情報であるところの個人情報を運用かつ利用するという事態に直面するということであり、二つは、個人情報保護法第20条から23条の「講じなければならない。行わなければならない」という、一読すると努力規定とも読める曖昧な規定と、第32条から34条にかけての行政指導、助言、勧告、命令規定である。 つまり、行政情報(異動情報)を扱うに際して、全てを行政の指導、助言、勧告、命令に委ねなければならないという「危うさ」を、とても危惧するのであ
る。

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