新スキームが話題になった一昨年以来、茫猿は単位会における士協会ネットワークの構築を提唱してきた。オンラインネットワーク構築を提唱する理由はサンザ書いてきたから今さらに書かないが、要するに
(一)新スキームの情報整備事業効果を一層高める手段であり、
(二)それはそのまま鑑定評価の基盤整備につながる手段であり、
(三)個保法ガイドラインに関わるコンプライアンスを向上させる手段
であると、考えるからである。つまりは、ネットワーク構築は目的ではなく、幾つかの事業効果を高める手段にすぎない。このことだけは肝に銘じておきたい。
2006.01.21記事「H18の新スキーム」記事で茫猿はこう記した。
「この件はいずれ日を改めて記事にするであろうが、現行の新スキームファイルとネットワークの使い勝手を考えれば、全国一括とか一斉という縛りばかりが多くて小廻りや融通の利かない画一・中央集権的ネットワークには多くの期待を懸けない方が無難と思えるのである。 」
この件について、そう考えるに至った理由をその代案を含めて述べてみようと思う。 昨年秋まで提唱し関わってきた「新スキーム中央ネットに併存する士協会ネットワーク構築」に期待を懸けなくなった理由、というか断念に近い理由は次の通りである。いずれも当たり前すぎるほどに当たり前であるが、2年近く踏み留まった果ての結論だから許されるであろう。
【ここで云う士協会ネットワーク】
中央スキームネットに併設し、新スキーム中央サーバーのセキュアコネクト、具体的にはSSL-VPN・USBキーを併用することによりコストの軽減を図ろうとする。同時に併設してホステイングすることからイメージデータ(PDFファイル)等の移管に伴う負担を軽減するものである。
他にも管理その他諸費用軽減を見込むが、実現するか否かは未だ不明である。
「断念すべしと考える理由-1」
東京会をはじめとする都市圏大規模会の意志決定に時間がかかりすぎること。構築までに長い時間を要することは、構築後の改編に際しても長時間を要するであろう。また目指す方向が前述の(一)〜(三)などではなく、単に事例閲覧の手段として、あまりにも矮小化されてきていることも見逃せない。
地方にいてはなかなかに理解し難いことであるが、都市圏の幾つかの士協会では士協会会員と地価公示分科会構成員が一致していないのである。つまり複数士協会の会員で分科会が構成されている。随分以前にはそういう構成状況もあったと記憶するが、未だにそのような錯綜する状況が継続しているのである。さすれば、会員数が多いとか公示評価参加会員割合が低く受託地点数が少ないといった事由もさることながら、それ以前の問題としてねじれ現象に帰因する障害も存在するのである。
「断念すべしと考える理由-2」
個々の士協会の自主性とか独立性を保持しようとする方向が押しやられ、中央集権・一括管理的設計思想が見え隠れするようになったこと。
この集中管理思想の延長線上を進めば、全国一括して資料管理や一括しての資料閲覧料管理という思想が登場する危険性を払拭できないのである。
一括管理は先のことであるとはいえ、その道を今の時点で開いておくことにより後輩に憂いを残す愚に荷担してはならないと考えるのである。
誤解されると困るのであるが、茫猿は全国的資料オンライン閲覧システムを無碍に否定するモノではない。そのようなシステムを作るとしても、あくまでも各単位会の自主性と独立性によるべきと考えるのである。
「断念すべしと考える理由-3」
コンピュータの世界では集中管理と分散管理のいずれが優れているか軽々には結論が出ないと考える。問題は何をしたいかであろうと考える。
何をしたいかについて、フリーハンドが維持できなくなれば、茫猿が当初から考え提唱しているナレッジマネージメントなどは雲散霧消してしまうであろう。
また従来通りNTTに依存すれば安全という時期は終わったのではなかろうか。NTTに依存する危険性を考える時期に至ったのではと思える。パソコンやサーバについて今年中に劇的な変化は無かろうと予想するが、通信手段については様変わりが予想される。
固定電話、携帯電話、IP電話、光通信、ADSL通信といった手段が複合的に統一される可能性が云われつつある。とすれば、現時点で小回りの利かないマンモスシステムを構築するのは愚かでなかろうか。
『そして、結論』
幸いなことに茫猿が所属する士協会では安全で高速なブロードバンドネットワークが順調に稼働しているのである。鑑定協会の検討結果が出るまではと留保を続けてきたサーバ安全管理も次年度を待たずに着手されるようである。各種資料のオンライン閲覧システム、グループウエア、士協会・分科会各セクションの共有フォルダー等もトラブル無く稼働しているとすれば、今動く必要は何もない。そういう結論なのである。
都市圏大規模会は金も知恵も潤沢なのだから、お好きに考えて頂ければよいであろう。そのシステムが佳ければ参加するなりリンクするなり、そのときの選択である。百人未満の会については憚りながら茫猿が提唱してきたネットワーク構築経緯が少なからず参考になるであろうと思う。先例有りなのである。
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