NSDI・PT設置提案書

 本日、08/6/21付けにて、鄙の堂守が行いました総会質問をフォローする意味において、「NSDI・PT(地理空間情報活用推進プロジェクトチーム)」の設置についてと題する提案書を鑑定協会宛に発送致しました。以下は、提案書の全文です。


「NSDI・PT(地理空間情報活用推進プロジェクトチーム)」の設置について
(社)日本不動産鑑定協会
 会長 神戸冨吉 様
 (08/06/21 岐阜県士協会・森島信夫)

 昨年8月29日に施行された地理空間情報活用推進基本法は、取引価格情報開示制度の充実に取り組み、REA-NETやGISの活用推進を図ろうとする鑑定協会にとっては、見過ごせない重大関心事であるべきだろうと考えます。同時に、同法の主務官庁が国土交通省であることや、公益法人制度改革に伴う公益法人資格認定を目指す鑑定協会にとりまして、同法への取組方如何が、戦略的にも戦術的にも鑑定協会並びに業界の今後に大きく影響するものであろうと考えます。

 今やインターネットが重要な通信インフラであるように、NSDI(National Spatial Data Infrastructure)は国土情報コンテンツの枢要なインフラであろうと考えます。既に国土交通省や経済産業省においては、幾つかのプロジェクトチームや研究会が創設されていますし、都道府県単位の取り組みも始まっているようです。不動産取引悉皆調査や取引価格情報が「国土情報コンテンツの大きな一つ」であることは疑いないことであり、それらを国民生活に密着するかたちで提供してゆく事業に鑑定業界が関わってゆくことは必然である以上に、不動産鑑定士の責務であるといえます。同時にWebの持つ双方向性を十全に活用したビジネスモデルの構築も待たれるところであります。早急に、外部専門家も交えた「NSDI・PT(地理空間情報活用推進プロジェクトチーム)」が設置されるべきと考え御提案申し上げます。

『NSDI事業提案書』
その1 ターゲット・テーマ・社会的プレゼンスの充実
その2 NSDI事業の具体的イメージ
その3 ビジネスモデル構築
その4 NSDI事業と地価公示等事例カード
その5 基本図その他

「その1 ターゲット・テーマ・社会的プレゼンスの充実」

 本来的には国民の共有財産である「取引価格情報:一次データ(所有権移転情報)、二次データ(アンケート回収結果)、三次情報(属性情報を付加した取引価格情報)」について鑑定協会主導のもとに、それらの不動産情報を国民生活に密着した利便性の高い形態で提供してゆく事業の構築を目指すものである。いわば、不動産取引に係わる地理空間情報(NSDI)を、インターネットを通じて社会に還元してゆく事業の構築を目指すものである。
1.どのような不動産情報に社会のニーズが存在するかをリサーチする。(需要の存在調査)
2.社会の需要に応える情報提供方法の実現可能性をリサーチする。(実現性の可否)
3.一連の地理空間情報関連事業が鑑定評価にもたらす効果を具体的に検討する。
 取引価格情報開示制度に係わる調査:取引価格悉皆調査(いわゆる新スキームであり、不動産センサスである)のGIS化、GPS導入を図ることにより、社会へ提供することが可能となる情報の質的並びに量的転換を行うものである。

「その2 NSDI事業の具体的イメージ」

1.携帯電話GPS機能を活用して、事例地の緯度経度情報を取得する。
 事例地の緯度経度情報は事例現地で携帯電話からダイレクトに取得する他にも、クライアントPCから取得したり位置修正を行うことも併用される。
2.サーバにおかれるデジタルマップ上に、事例地位置情報をはじめ地価公示等既存の公開地価情報を一覧表示する。
 当然のことであるが、これらの地理情報はそれら事例の属性情報とリンクするものである。その具体的イメージは、岐阜県士協会が公開しているGoogle Mapを活用した岐阜県地価公示・地価調査地図要覧が参照できる。
3.中古マンション価格を含めた不動産の売買希望価格について適切なアドバイス情報を提供すると同時に、アクセス者から提供される情報を基にする市場情報を取得することにより、提供情報の付加価値を双方向的にかつ同時進行的に高めてゆく。
 以上は直ちに実施が可能なものではありません。個人情報守秘義務に係わる調整、鑑定士のITリテラシー充実、システムの構築及びメンテナンスに係わる業務提携者の募集と選択など、乗り越えなければならない様々な課題があります。しかし、技術的には既に可能なものであり、何よりもこの事業を提唱し主導できるのは鑑定協会をおいて他にはないと考えます。同時に、他者主導の元に事業が展開された場合には、前掲する各種GIS化地価情報の一元的管理利用機能が鑑定協会の手を離れてしまうという事態が懸念されます。

「その3 ビジネスモデル構築」

 当該事業の構築に際して予想される最大の障壁は事業資金の獲得と事業リスクの負担です。であればこそ、具体的かつ実現可能なビジネスモデルの構築が優先課題となります。この具体策について現段階で軽々に論じることはできませんが、以下のように云うことはできようと考えます。
 所管庁である国土交通省をはじめ、関連地価情報を主管する総務省、財務省、法務省、経済産業省等の理解と協力が必要です。全国の単位会を通じた都道府県や市町村との連携も視野に入れておかねばなりません。インターネットを経由して情報提供を行う事業であるからして、ポータルサイト運営事業者、GIS技術提供業者等の関連業界の協力や業務提携も欠かせません。
換言すれば、NSDI事業の成否は所管庁の理解と提携事業者の存在にあると言えます。もちろんのこと、鑑定協会自体の理解と推進意欲こそが基本であることは云うまでもありません。

「その4 NSDI事業と地価公示等事例カード」

 直接的に鑑定士に係わることとして、地価公示等における取引事例カード作成についての発想転換が挙げられます。この際に重要なのはA4二枚からなる事例カード書式を離れることからスタートしなければなりません。様式-1:テキストデータからなる事例属性情報書式は現行のままでも差し支えありませんが、様式-2は大きく変えるべきです。
 A4二枚目は所在位置図、A4三枚目は地形図、A4四枚目は現場写真(携帯写メール)と転換されます。と言うよりも、A4二枚とか三枚といったハードコピーイメージは捨ててしまい、テキスト並びにイメージの全情報をデジタル化し紙情報を追放することにあります。鑑定士のデスクサイドのパソコンモニターに表示されるシームレスのデジタルマップ上において、公示価格や取引事例を検索し整理することから鑑定評価作業が始まるというイメージを共有することが事業のスタートです。当然、納品成果物もデジタル納品となります。

「その5 基本地図その他」

 基本の地図は国土地理院地図のほかにGoogleMapや、既に多くがベクトルデータ化されつつある市区町村都計図(1/2500)等が検討できます。さらに付加属性情報等について著作隣接権の獲得も忘れてはならない事項です。
 事例調査のGIS並びにGPS導入は調査に係わる評価員負担を可能な限り軽減します。そこではデジタル地図上に地点をプロットすれば、都計用途図、学区図、上下水道配管図、駅バス路線図などの複数のレイアー(Layer:階層、重ね表示)を用いることにより、都計規制や施設距離などの属性データを自動的に取得できます。活断層図や防災マップなどの利用も当然に視野に入ることでしょう。
 特段に留意されなければならにのは、地理空間情報活用推進事業とは云え、新スキームデータに鑑定協会が直接関わることは全国士協会の反発や誤解を招くであろうと予想できます。したがって、プロトタイプシステム構築段階、デモ・プレゼン段階はともかくとして、事業実施段階では実施に合意する単位会と鑑定協会の提携事業であるべきことも云うまでもありません。
※関連資料
1.地理空間情報活用推進基本法
 
2.地理空間情報プラットフォーム(国土交通省)
 
3.GISポータルサイト(国土交通省国土計画局総務課国土情報整備室)
 
4.地理空間情報活用推進研究会(経済産業省)
 
5.県域レベルの大縮尺地図統合 ~ NSDI 構築に向けて ~(岐阜県)
 
6.自民党地理空間情報活用推進合同部会
 
7.「地理空間情報フォーラム2008」(土地家屋調査士会)
 
8.(財)土地情報センター
・GISの普及推進を図るための地方公共団体等への支援を目的とした各種調査関連業務
・GISを利用した各種システム開発業務
 
9.「地理空間情報活用推進基本計画」について(国土計画局 総務課国土情報整備室)
 
10.『鄙からの発信』カテゴリー「NSDI」
 

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