はんげしょう

岐阜県の東濃地方、中津川市内の国道19号を中津川ICから木曽方面に向けて走りますと、市役所へ向かう交差点を過ぎてしばらくすると、栗きんとんで有名な「川上屋」さんが国道沿いに見えます。道路をはさんで向かい側には同じく栗きんとんの「すや西木店」さんが見えます。今日はその「すや」さんでのお話しです。


「すや西木店」さんには、お菓子の販売店と併設して茶店がございます。庭木に使うのはめずらしい栗の木も数本あしらった、庭木と草花の調和が美しいお庭がお店から茶店に通じる路地を囲んでしつらえてあります。
その栗の木や楓の根元に白い花を見かけました。茶店で一休みと、冷やし白玉を頂きながら、お店の方に「あの白い花の名前はなんですか?」と伺いますと、まだ若い店員さんは「花ではございません。葉が白いのです。名前はハンゲショウといいます。」と答えてくれました。
ハンゲショウという名前はかねてから耳にはしていましたが、実際に見るのは初めてでしたから、近くに寄ってしげしげと眺めますと、確かに花ではなくて葉がそれも一部が白く、ほの暗い木立の陰にほのかに浮かんでいるのです。
ハンゲショウは半夏生と書くのです。一説には葉の一部が白いことから半化粧とも云うのだとか。
名前の由来はともかくとして、緑濃い木立のなかで白く浮かぶさまは、何とも妙です。白玉という食べ物も初めて頂いたのですが、冷やしゼンザイのような、これもとても微妙な味で、美味しく頂きました。

茶店の名前は榧(かや)といいます。東濃地方には多い樹木の名前だそうです。

中津川には蕎麦の有名店が幾つかあるのですが、堂守は市役所付近の「あお木」さんが好きです。飾り気のないお店で、昨日もこんな会話を交わしながら玄(クロ)蕎麦を頂きました。
お店、「相済みません。天麩羅が無くなりましたが、宜しいか?」
堂守、「構いません。ところで、ザルとモリはどう違いますか?」
お店、「当店では、そば粉も汁(ツユ)も同じです。ただ、器とキザミ海苔をのせるか、のせないかだけの違いです。」
堂守、「それでは、モリを大盛りで下さい。」
お店、「当店は二枚盛りです。大盛りは三枚盛りですが宜しいか?」
堂守、「大丈夫です。大盛りを願います。」

運ばれてきたのが写真の三段重ねです。一段で優に東京の二人前はありそうな量です。それでも好きな蕎麦ですし、少し辛めの汁に大根オロシがよく合いますから、たちまち二段は頂いて、薬味大根オロシのお代わりを頼みますと、小皿に山盛りのオロシ大根を届けてくれました。久し振りに辛味が十分利いていて旨味もある大根オロシに感激した堂守は、お勘定の際に尋ねたのです。
堂守、「美味しかったです。久し振りに旨いオロシを頂きました。どうしてメニューにオロシ蕎麦が無いのですか?」
お店、「当店は木曽の出ですから、大根も木曽から取り寄せていますが、品質にバラツキがあって「オロシ蕎麦」をメニューにできないのです。それにいつも手に入るものではなく、端境期も長いことですから、オロシ蕎麦をメニューにできないのです。」
看板に偽りありとでもいうか、甘ったるい大根のオロシ蕎麦が蔓延するなかで、辛味大根の質にこだわるお店の姿勢に蕎麦好きとしては敬服しました。あお木さんは、国道19号から市役所方面に北進して、市役所へ向かうT字路を市街地方面に少し行き過ぎたあたりにございます。蕎麦で満腹したい方は一度お尋ね下さい。でも初めての時は「大盛り」は注文されない方が宜しかろうと存じます。
また、川上屋さんにも店内に栗おこわ栗ぜんざいがいただける甘味喫茶がございます。
『 見え隠れ  白き葉揺れる  半夏生 』 (茫猿)

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はんげしょう への1件のフィードバック

  1. 後藤雅文 のコメント:

    私もあお木の蕎麦中津川に行ったら良く食べていました。懐かしい蕎麦の色美味そうにです。半化粧なんか気になる植物ですね。芭蕉の奥の細道の黒羽:雲厳寺で見ました。

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