NSDI-PTの広報

 久しぶりにNSDI-PT関連の記事を掲載します。 以前にもお伝えしたように本年の鑑定協会は役員交替選挙の年であり、6/16開催の定例総会にて2009年度事業計画案及び予算案が承認されてから、今年度執行部構成が定まります。 現時点では今期の情報安全活用委員長も委員も未定です。したがって、その内部プロジェクトチーム(小委員会)の構成も白紙の状態です。 ですから四月以来NSDI-PTに関して報告できる何の活動事跡もないのですが、チーム発足当初からプロジェクトに関わってきた茫猿としては、協会予算を費消し地価公示や悉皆調査にも少なからず関わるNSDI-PTについて、関係方面に対して然るべく広報すべきではないかと考えておりました。 それはまた、昨年講義をいただいた関係筋への礼儀でもあろうと考えたことです。


 そこで今週、関係者をお招きしてプロトタイプモデルの説明を致しました。 説明会では、プロトタイプモデルの概要並びにオンライン作業の実際、このモデルの09年度構築事業予定、NSDI運用に伴い予想される波及効果など、多くの質問をいただき、またお答えすることもできました。 一回の説明会でご理解が得られたとか、ご支援が期待できるなどとは毛頭考えませんが、少なくとも各方面で関心が高い地理空間情報の利活用について、鑑定協会も関連事業を進めているのだという認識はお持ちいただいたであろうと考えています。
 さて、その席上で話題になったのは今年度のNSDI-PT事業計画についてです。 先に述べましたような状況ですから、あくまで試案(私案)に過ぎませんが、09年度事業予算要求に並行して執行部に提示した事業計画案では次のような構築事業を予定しているものです。
1.実際運用版モデルの構築
「安全なネットワーク環境での運用検討」
 構築を終えて会員に公開しましたプロトタイプモデルはネットワーク関連を除けば、既に実用段階に達しております。具体的にいえばスタンドアローン的な運用であれば、今のままでも実用が可能です。 しかし会員(悉皆調査担当評価員)間におけるデータの共有並びに利活用を考えれば安全なネットワークシステムにおける運用が不可欠であり、具体的に云えばREA-NET環境(JAREA認証システム)における(仮称)REA-MAP運用版を検討し構築しなければなりません。
「ウエブデザインの検討」
 また、それと並行してよりユーザーフレンドリーかつ機能的なモデルへとバージョンアップするためにはウエブデザインを重視すべきであろうと考えます。 利用者にとって親しみやすく、使い勝手のよい、業界用語的に言えば”サクサクとストレス無く動く”モデルへと進化させなければ、多くの会員のご理解は得られないだろうと考えられます。 
「基盤地図の検討」
 プロトタイプモデルに使用している基盤地図は国土地理院地図(基本縮尺二万五千分の一)ですが、利用可能な縮尺図面その他の難点は既知のことであり、より利用効果が高く使い勝手の良い市販地図、例えばグーグルマップやゼンリンマップなどの併用も検討しなければならないと考えられます。
2.試験施行の実施
 (仮称)REA-MAPの実際運用における問題点を洗い出し、より効率的かつ効果的なシステムを構築する上で避けて通れない事項は、実際業務における試験運用です。この試験運用は複数の士協会もしくは分科会で実施されることが望ましく、REA-NET環境との融合が整い次第に試験運用をお引き受けいただける士協会或いは分科会を募集したいと考えられます。 募集時期は七月末頃、試験運用開始は九月末頃と考えられます。
3.情報開示モデル構築事業
  実はこのことが最も重要であり、NSDI-PTのターゲットテーマでもあるのですが、NSDI-PTは様々な不動産情報をインターネットを通じて一般社会に提供することから、鑑定業界が社会に貢献し、そのプレゼンスを高めてゆくものでありたいと考えます。 この情報開示モデルの企画概要を検討しプロトタイプ版構築に速やかに着手しなければならないと考えます。 その際には、事業主体の在り方、他組織・関係機関との連携等についても検討を始めなければならないでしょう。
 よく誤解を受けますから、念のために申し添えますが、この情報開示モデルは「土地総合情報システム」と競合するものでも、その延長線上に位置するものでもありません。 ましてや単純な取引価格情報開示を意図するものではありません。(現状以上の価格情報開示は法的な規制その他が存在しますから、現実問題としてできません。) 端的にいえば「鑑定士が提供する不動産情報ウエブサイト」であり、「鑑定士と市民とのあいだの双方向性を有する情報交換システム」と云えるものを目指すべきであろうと考えられます。 同時にその情報開示モデルにはビジネスモデルとしての側面も必須なのであろうと考えられます。
4.NSDI-PTのターゲットテーマ
 NSDI-PTの当面の目標は公示事例カード二枚目のデジタル化であるが、これは目標と云うよりは目標達成の過程にしか過ぎないと断言できます。 NSDI-PTの目標は、時系列分析と地理空間分析を併せた地価の三次元アプローチにあり、三次元アプローチでピンポイント評価が直ちに可能とは思えないが、ベクトル分析とかトレンド推定は可能であろうし、フラクタル的現象に着目することから地価変動の屈折点を認めることも可能であろうと考えられる。 また国土交通省土地・水資源局土地政策課で研究が進められている「地価のヘドニック・アプローチ」についても、将来的に有効な解析ツールとして位置づけられるのではなかろうかと考えられます。
 デジタル化された多量の市場データに地理情報を付加し、それらを基礎として、三次元的な傾向分析を行うことから何かが読みとれるのではなかろうかと考えるのであり、さらに、それらの分析結果を基礎として、社会に有益な不動産情報を提供してゆくことが鑑定業界の為すべき責務なのだと考えるものです。
 茫猿が今期のNSDI-PTに引き続いて参加できるかどうかは不明です。 それでもメンバーに採用されるか否かなどということは別にして、このサイトを通じてNSDI-PTに参加し、もの申してゆこうと考えております。 大胆な物言いをすれば、昨今のインフルエンザ騒動に見られたような、疫学的見解と個別臨床的見解を混同したようなアプローチ手法が地価分析において行なわれてはならないと考えるのである。アイテムとカテゴリーを的確に把握した上で、推論・仮説を立てて実験を繰り返すという方法が検討されるべき時期に至っていると考えるものである。 不動産鑑定評価における地理情報という問題に関心をお示しいただける方々の一層のご支援をお願いする次第でもあります。

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