時代の一つの折り返し点を伝えるニュースが報道されている。 ついにネット広告費が新聞広告費を上回ったという出来事である。 新聞への広告出稿量が年々減少を続けていて、広告収入の減少から経営の危機を伝えられる全国紙さえ現れていたから、増加を続けるネット広告と新聞広告がいつか逆転する日が来るだろうと思っていたが、予想より早く逆転が起きたようである。
この数年のあいだ、十年、十五年前には地方紙でも見ることの少なかった類の広告が、全国紙に掲載されるようになっていたから、新聞業界の内実は厳しいのであろうと思っていたが、昨日今日の報道は、その現実を数字として示している。 宅配制度、記者クラブ制度、過剰な全国展開指向など、新聞業界が抱えている様々な問題は以前から指摘されていたが、いよいよ抜本的な改革が求められる状況に立ち至ったということであろう。
電通の発表(02/22)によれば、2009年の国内広告費は前年比▲11.5%:5兆9千2百億円という。 減少は2年連続で、テレビは▲10.2%:1兆7千1百億円、インターネットは+1.2%:7千億円、新聞は▲18.6%:6千7百億円、雑誌は▲25.6%:3千億円、ラジオは▲11.6%減:1千3百億円である。 マスコミ4媒体が軒並み減少するなか、インターネットは伸び率こそ大きく縮減したものの(08年は+16.3%)増加を続け広告費全体に占める割合も12%弱と拡大している。
広告対象を絞り込みにくいマスコミ広告に対して、ダイレクトレスポンスや検索連動広告など対象を把握しやすい、ネット広告の特徴が広告主に理解・評価されてきたのであろうと思われる。 そんな折りも折り、岐阜の老舗書店J書房の幹線道路沿い支店が閉店した。 帰宅途中に立ち寄ることが多かったから、残念であるとはいうものの、今年からはその店の前を通ることも少なくなるのであるが。 多分、岐阜駅や幹線道路沿いにオープンした全国チェーン店やネット通販との競争が厳しくなったのであろう。
《閑話休題》
新聞の凋落はどのあたりから始まったのだろうかと考えてみれば、それはWindows95なのだろうか、それともGoogleなのだろうか、Weblogなのだろうかと思う。 若者の世界では携帯Siteも大きく影響しているのだろうと思う。 今回の新聞とネットの広告費逆転現象は新聞の危機を明らかに示したものと考える。
トヨタ自動車がリコール騒動で揺れている。 米国議会・公聴会でトヨタはどのような主張をすべきかについて、とても興味深いレポートがJMMに掲載されている。 冷泉彰彦USAレポートNo.449「豊田章男社長の公聴会パフォーマンスへの期待」である。 一読をお勧めする。
民主党は長崎県知事選で自民党候補に負けた。県選出国会議員全員が民主党所属であるのにである。 七月の参議院選挙に向けて、民主党の危機を示していると思われる。
逆風下が言われて久しい不動産鑑定業界もまた、危機的状況なのかもしれない。 鑑定士政治連盟推薦議員は一名を除いてオール自民党だったが、次の参議院選挙はどうするのだろうか。 そんなことはどうでもよいのだが、岐阜県や愛知県など都道府県財政の逼迫が伝えられているから、2010年地価調査は相当の地点減少が避けられないだろうし、同じく市区町村財政の逼迫は評価替え年度にあたる固定資産税標準宅地評価にも大きく影響するであろう。
昨年秋の事業仕分けでは、その対象となることを免れたと聞く地価公示も、今夏からの仕分け作業では俎上にのぼりかねないと噂されている。 業界の基幹的業務が危機的状況にあれば、問われるのは危機管理能力である。 危機管理はボトムアップではなくトップダウンである。 危機に直面したときには船頭の舵取りが全てであるが、鑑定協会には戦略はおろか戦術すら見えていないのではと、思わされることが聞こえてくる昨今である。
危機といえば、茫猿もミニクライシスを感じている。 朝目ざめ、顔を洗い食事を摂り、事務所へ向かう、ほぼ40年続いた日常である。 大袈裟に云えば小学校入学以来六十年間、起きる、食事、学校・職場へ向かうという、連綿と続けてきた日常である。 朝起きても向かう処が無いというリズム感のなさに馴染めないのである。 先ほど畑を歩いたら薄もや曇り空の下、梅の香りがむせかえるようだった。 こんな晴耕雨鑑の日々を楽しむようにならねばと思ったところである。
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私も3月17日(岐阜県士協会 総会の日)に40才になります。
久しく県下で最も若い事務所経営者でしたが、美濃加茂の渡邉さんに続き、昨年は小池さんや小野木さんが東京からもどってきました。
『もはや「若手」ではない』を、総会以降のキーワードとして自分に課しております。
昨今のマラソンブームにのって今春から10㎞走ることにしました。エリアオフィスの伊藤さんも誘っていくつかの大会にエントリーしています。
体の衰えを意識し始め、忙しい中で欠けているものを楽しみながら補って行くことの難しさと大切さを感じているこの頃です。
貴兄に限らず、業界の若手とされた方が力をつけ発信力を増してゆかれるのを拝見するにつけ、自らの老いと衰えを自覚させられるというのも冷厳な事実です。先輩面をお許しいただけるなら、それは寂しさよりも嬉しさのつのることです。