第二次新スキーム改善 §Ⅹ

第二次新スキーム改善 §Ⅹ:(蝸牛角上の争い)
我ながら諄すぎると思いつつも、連合会宛に提出した上申書は何が云いたいのかさっぱり判らん、『鄙からの発信』記事も読んだがやっぱり判らんなどという批判を耳にすれば、クドイと云われようともウザイと云われようとも、重複も承知の上で今一度手短に要点をまとめておこうと思うのである。

一、経緯と現状
新スキーム事例利活用の現状が、法に抵触する恐れありと国交省から指摘されたのは、昨年初めのことである。 もちろん、新スキーム事業開始当初から、個人情報保護法、独占禁止法等に抵触する恐れは一部で指摘されてきたが、具体的に連合会・士協会の閲覧事業を改善するよう指摘されたのは初めてのことである。 そこで、新スキーム改善特別委員会が設置されて、一年余の審議を経て士協会会長会議の理解を曲がりなりにも得、理事会・総会承認を得たのは本年六月のことである。

ところが、この第一次改善案の実行に着手する暇もなく、同案は不十分であると差し戻されたのが、本年八月前後のことである。 そこで、連合会執行部は改善委員会委員長に連合会会長が就任し、 第二次改善案の作成に入ったのである。
第二次改善案の骨格は、安全性の担保と透明性の確保であり、具体的には(a)セキュアなネットワークによる全国一元化オンライン閲覧であり、(b)閲覧料は実費主義を貫き、閲覧料並びに閲覧窓口規制などの士協会内外格差を撤廃することにある。

二、連合会の業務
連合会が為すべきことは、取引価格情報提供制度の不動産価格情報、いわゆる三次データの全会員一元化閲覧ネットワークシステムの構築とその運用であり、加えて閲覧料(アンケート発送回収費及びネットワーク維持費)のオンライン徴収である。 いわゆる四次データ(地価公示由来事例資料)については、関与する必要は無いし、関与すべきでもない。

四、士協会の業務
士協会はいわゆる四次データについて、どのように関わるかの検討を開始すべきである。ただし、どのように関わるかと云っても、関わり方は三次データの利活用方針を逸脱することは許されないのである。 さらに様々の今後の対応を検討しなければならないが、それらは「第二次新スキーム改善 §Ⅶ」の1から6に列挙する事項の全部または一部である。

最も重要なことは、地価公示から固評業務にいたる公的土地評価業務のなかで三次、四次データを如何に利活用してゆくかの方針を定めることであり、その具体的な準備を始めることである。そのあたりについては「第二次新スキーム改善 §Ⅷ」にふれているから、参照されたい。

新スキーム改善第二次案の決定並びに実施は次年度当初からと予想されるから、まだ時間はあるとお考えかもしれないが、四次データの利活用の具体的スキーム・ツールその他を、構築し運用することを考えれば、半年をきった準備期間は短いといえるのである。それに、それら士協会事業について連合会の支援はあてにできないのである。 連合会は自らの改善案作成とその実施に忙殺されており、士協会を顧みる余裕はないのである。

連合会執行部に関わる様々な批判や不満を聞きますが、今や全国の士協会執行部にその批判や不満が向かいつつあると言っても過言ではない状況が生まれつつあることにも留意されたいのである。 自ら為すべきこと、為さねばならぬことを放置しておいて、何が連合会批判なのかということである。 しかも士協会会長は連合会理事会メンバーなのである。 定款に定められる理事の権能を十全に発揮することもなく、自らの士協会運営も事勿れ放任であるとすれば、その責任はとても重大なのである。

《補足》  閲覧料の実費主義と連合会徴収については、士協会財政を破綻させるのかという批判を耳にします。 しかし、この批判は一方的に過ぎるのであり、現在まで続く高額の閲覧料収入は無くなりますが、同時に多額のアンケート発送回収費用の士協会負担は全廃されるのであり、この収入減と支出減の相当部分は相殺されるものであることにも留意したいのである。

新スキーム第二次改善案を頓挫させるようなことがあれば、取引価格情報提供制度の調査委託が地価公示スキーム(鑑定業界)から第三者へ移管されかねないことも想定しておくべきであり、ひいては地価公示のあり方についても重大な影響をもたらすものであろうことにも留意しておきたい。 何よりも一連の動きの背景には「グローバル標準の不動産インデックス構築」という対外公約や、「不動産インデックスの中核機能(ハブ機能)を設け運営する」といった大きな政策目標が存在しているのである。 小さな業界の蝸牛角上の争いに終始している場合ではないのである。

《追記》 2012.10.08付け日経新聞朝刊、16面「景気指標」というコラムに「公表が始まった住宅新指標」と題する記事が掲載されています。 2012.08.28から公表が開始され10/03には二回目の公表も行われた、不動産価格指数・住宅地に関わる記事です。 記事は公示地価と基準地価(日経記事のママ)について、次のように述べている。
『双方の調査地点はかなり異なることもあって、半年間の動きすらはっきりとつかめないのが現状だ。 しかも公示地価などは不動産鑑定士が地点毎に判断する「あるべき価格」だ。実際の取引価格とは必ずしも一致しない。 新指標の作成は評価するが課題も多い。現在は5ヵ月遅れの公表で、これでは足元の動きはわからない。国際指針では取引後90日以内の公表を求めている。』

不動産鑑定士にとってこの日経記事は、とても示唆に富む内容と思います。この記事が全てではありませんが、 社会が地価公示や価格指数をどのように考えているのかを知る一つの材料にはなるだろうと考えます。

《蛇足》 身近な者からは、こんな批判を浴びました。「業界の前線から引退して既に三年、今や何の利害関係もない者が、いつまでも五月蠅くもの申しているのは、目障りであるし、余計なお世話である。 スッコンデイマショウ、イッタイ何様のツモリデスカ。」  まことにもって、そのとおり、自らも十分に自覚していますが、雀百まで踊り忘れず、茫猿は遠吠するしか能がないのです。

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