平成26年地価調査結果が公表された。地価動向の詳細については国交省サイトをご覧いただくとして、残日録の感想をいささか記しておく。
国交省サイトの概況によれば、全国平均では、住宅地、商業地ともに依然として下落しているものの、下落率の縮小傾向が継続しているとある。 三大都市圏平均では、住宅地が上昇に転換し、商業地は上昇率拡大。地方圏平均では、住宅地、商業地ともに下落率縮小とある。 上昇地点数の割合は全国的に増加。特に三大都市圏では約半数の地点で上昇。一方、地方圏は8割弱で下落とある。
地価動向のまだら模様は依然として継続しているが、なかで三大都市圏の商業地地価が上昇を続けている大きな要因は、JREIT市場が堅調であることや円安効果による輸出企業の業績良化などを背景とするものであろう。 地方圏地価も三大都市圏の堅調に影響されて下落幅が縮小する傾向にあるのだと思われる。
そんななかで胸が痛む思いがするのは、3.11震災地の地価上昇である。
宮城県石巻市の郊外部に位置する地点(石巻-19)は、石巻中心部の既存住宅地と比較して割安感があることから、被災住民の移転需要が強く、16.7%上昇(9.1%上昇)となり、住宅地で全国1位となった。
短期的には以上のような状況であるが、今後の推移については予断を許さないものと思われる。昨今の為替動向をみれば、安倍内閣や日銀の思惑を超える円安傾向がみられることから、今後の円安推移如何によれば景況にも大きく影響することであろう。景況が悪化すれば消費税率増税にも待ったがかかるだろうし、それは日本売りにもつながりかねず一層の円安が進むことにもなりかねない。 当然のことながら地価にも悪影響をもたらすであろう。
長期的に見れば、日本の人口動態は2040年頃まで減少が続くものと予測されていることから、幾つかの自治体消滅もささやかれるなかで地方圏を中心にして地価の下落傾向は避けられないものと思われる。
都市圏商業地住宅地の地価上昇は、別の問題も引き起こし始めている。それは土地価格が上昇し、震災復興景気のなかで建築費の高騰も招いていることから、分譲マンションの建設価格が高騰していることの影響である。 建設費高騰の結果として販売価格の総額水準維持を図るために、分譲業者はマンションの戸当たり面積の縮小や内装等の質低下を始めているという。
つまり、ストックの品質低下《国富の水準下落》が引き起こされているのである。 このことは分譲マンションのみに限らず分譲戸建て住宅にも及んでいることであろう。 そうでなくても日本の住宅事情は賃貸よりも分譲に傾斜しており、その分譲住宅も居住床面積が狭く、耐用年数がとても短いという質的マイナス要因を抱えているのである。百年住宅が叫ばれたのは、つい十年も前のことであるが、今また住宅の質の低下が懸念される状況にある。
人口減少と地価について、下記の論考と書籍が刊行されている。
「人口減少・高齢化は住宅価格の暴落をもたらすのか?
ー Aging and population decline and Asset Meltdown ー 」《2014.09.10:清水千弘》
「日本の地価が3分の1になる! 2020年 東京オリンピック後の危機」
《2014.09.17 光文社刊 三浦展/著 麗澤大学 清水千弘研究室/著》
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