駿河路晩秋

連休の二日間、長男夫婦に誘われて駿河路をドライブしてきた。お誘いの口実は「臨時急行「御殿場線80周年371号」の切符が取れたから、浜松から沼津まで一緒に鉄道旅をしないかというものである。「371号列車」とは、御殿場線と小田急線の直通特急『あさぎり』用として1991年に登場した特急形電車のことであり、数年前に小田急新宿から小田原まで長男に誘われて乗車したことがある。

列車旅だけのことであれば家人は難色を示したであろうが、長男夫婦には孫娘という大きな連れが存在するので、《茫猿には断りも無く》家人は二つ返事で「行きましょう」というのである。 当初の予定は新幹線岐阜羽島駅から浜松駅へ向かい東京からやってくる孫娘たちと合流し、一泊の後、翌早朝に浜松から沼津間を臨時急行371号に乗車しようというものだった。

そこで、茫猿は考えたのである。二歳になる可愛い盛りの孫娘には列車旅の連続は飽きるだろう。ベビーカーなどの荷物も多かろう。浜松駅で昼に合流したあとのその日の行程、翌朝十時に沼津駅に着いたあとの行程をどうするかと考えるのである。タクシーやバス、遠州鉄道、天竜浜名湖線、伊豆箱根鉄道などなど車以外での移動手段も選択肢は多い。しかし、子連れ移動の自由さと便利さを考えれば車に如かずであろう。レンタカーという手段もあるが、チャイルドシート装備という制約もついてまわる。

そこで、「よし、車を持ち込もう」と考えたのである。茫猿の居所する鄙里から沼津まで片道三百キロ、約4時間の距離である。往きは鄙里から浜松まで約150km、翌日浜松から沼津まで約150kmと二分されるから容易いことである。問題は帰路である。沼津から三百キロをどうするかと考えないでもなかったが、そこは暇な老夫婦のこと、ゆっくりノンビリと帰ってくれば良かろうと旅立ったのである。

浜松駅で待ち合わせた孫娘は新幹線のなかで散々予習していたのであろう。会うなり「ジージー」、「バーバー」と指差し連呼してくれるから、家人などついぞ見たことも無い笑顔、笑顔である。茫猿が「ババア」などと言おうものなら、「アンタにだけは言われたくない。」と返ってくるだろうに、孫には自分から「バアバよ」なのである。

浜松だから「ウナギだろう」という長男にしたがい、絶滅が危惧される「日本ウナギ:長期間養殖」を謳い文句とする店を訪ねて昼食とした。癖もなく柔らかいウナギだが、焼き方が関東風であり、皮の焦げ具合やパリパリ感が乏しくて名古屋焼きになじんだ茫猿の口には今イチである。 長男はマブシ定食を注文していたけれど、あのウナギでは「櫃まぶし」の食感は味わえなかっただろうと思っている。

昼食ののち、孫を楽しませるにはフラワーパークフルーツパークと考えていたが、孫は象さんやキリンさんが好きだというから、孫に曵かれて動物園である。 七十歳以上は無料優待の園内は秋の日ざしが陰るとやや肌寒かったが、駆け回る孫を追いかけて過ごせば寒さを感じる暇もなかった。 日暮れて宿に着いた一行は、娯座候なる個室居酒屋で「生シラス、金目鯛」などの地魚を楽しむのである。 孫のお気に入りは「生シラス丼」と「金目の煮付け」だった。

さて、翌朝というよりもホロ酔いの醒めた早朝のこと、沼津駅に朝九時半に到着する孫娘一行を出迎えるために、まだ暗い浜松を発って茫猿独り沼津へ向かうのである。高速道路はトラックの後を追いながら八十キロ安定走行、沼津ICまえの愛鷹SAでしばしの仮眠をとり、沼津駅にて無事に孫と合流するのである。IMG_0604

昨日は動物園だったから今日は水族館へと、孫に曵かれて三津シーパラダイスへ向かう。イルカショー、養殖鯛の餌やり、クラゲ展示などを数十年ぶりに楽しむのである。三津浜シーパラダイス園内から色づき始めた淡島ごしに富士を眺めるが、風がないから富士はやや靄っている。そのぶん、園内は幼児に優しい小春日和である。IMG_0617

孫が見入っていたシーパラダイスのイルカショーIMG_0650ところが孫の機嫌はしだいに悪くなる。孫は急に「ゴハン、ゴハン」と叫び出すのである。考えてみれば、朝早く起こされたうえに朝食抜き、スナック菓子程度は与えられたようだが、運動量に比べればエネルギー摂取量が乏しいから、空腹ゆえの不機嫌なのである。気づけば時刻はもう十二時を回っていたのです。

そうと判れば一直線に昼食場所へと向かうのであるが、三津浜から沼津港方面へ向かう道路は結構な渋滞である。行き交うナンバーを見れば、湘南、練馬、千葉、さいたまと関東一円から集まっている。富士山というご当地ナンバーもみかける。

海苔が大好きでイクラの軍艦巻きが大好物という孫娘のために、手近なロードサイド回転寿司店を選んだのですが、これが大正解でした。チェーン店ほどは大きくなく三十人も入れば満席の店で、空腹でおとなしい幼児と、席が空くまで二十分も待ったでしょうか。たしか「すし之助」というお店でしたが、地魚が売りであり、ヤガラ、金目鯛、おなが鯛、アカイカなどが美味でした。もちろん駿河湾のアジは言うことなしでした。すし飯はほの温かく鮨ネタもほどほどの大きさで納得する旨さでした。《ヤガラをいただいたのは、小今回で三度目?だったか、いつ食しても旨い魚です。》

家人たちはこぼれ生シラスから始め、茫猿は地魚三点盛り《ヤガラ、オナガ鯛、沼津アジ》、そして孫は「こぼれイクラ」という軍艦巻きからこぼれているイクラを一粒ずつ拾いながら口に運び、海苔巻きを頬張るうちにご機嫌がもどったのです。IMG_0653納得し満腹した四人プラスお嬢様の一行は、解散にはまだ早いのでもう少し姫と遊べる場所をと探すその時、茫猿は閃いたのです。三津シーパラダイスからすし之助へ向かう道路414号線沿いで見かけた「沼津御用邸記念公園」という小さな案内看板を思い出したのです。 海沿いに松林があるだろうから、そこでしばらく遊べるだろうと考えたのですが、ここで望外至福のひとときをいただきました。《この話は続きます

 

 

 

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