NHKに見た希望(外国人労働者問題)

9月17日の夜更け、うたた寝をしながら付け流していたテレビから流れて来た二つの番組にNHKの良心を垣間見る思いがした。NHK未だ生きている、日本社会の抱えている矛盾を明らかにしようと迄しなくとも、少なくとも避けようとはしていない。

《番組が意図したものでなくとも、編集で発言をカットしなかったという意味で良心を見た思いがしたのである。日本社会の矛盾を明らかにしようとする積極的な意図は無かったとしても、政治報道番組で安倍総理や菅官房長官の記者会見を適当に編集して”ヨイショ”するような愚かなことはしなかったという、消極的な意味で。》

クローズアップ現代 《 2019.9.17   22:00~22:30
巨匠二人の対談を独占取材する番組である。「ローチ監督は憧れ以上の存在」と言う是枝監督とその憧れのローチ監督の対談である。 貧困化が進み家族関係が崩壊する社会への憤り、弱者の視点で世の中を見る、搾取しているのは誰?と観る者に問いかける。

・映画監督…是枝裕和:カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『万引き家族』
・映画監督…ケン・ローチについてはこちら

第76回ベネチア国際映画祭のオープニングを飾ったのが、是枝裕和監督の最新作「真実」である。フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーブの他、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークら、スターを起用した異邦人・是枝監督初の外国映画として反響を得た。

海外の辛口批評家たちがしばしば口にすることは、「監督が勝手のわからない異国の地で撮った作品は、あまり成功しない」というものだ。文化の違いゆえに、よほど気をつけなければ不自然でいびつなものになってしまうからである。是枝監督は「クールビューティ」のイメージが強いドヌーブを「エゴイストなのに憎めない、まさに女王のような存在」として描く(映画評より引用)。この秋(10/11)より公開というから見ずばなるまい。

ここまでは惹句、茫猿が”ハッとしたのは”この部分である。番組の中でケン・ローチ監督が述べていたと記憶するが、「宅配の便利さは、外国人労働者の安い労賃とガソリンの垂れ流しの上で成り立っている。いつまでも続けられる訳が無い。」。ハッとした、日本でも同じことが言えるだろう。

アマゾン、楽天、クロネコ・ヤマト、飛脚のサガワ、どれもこれも労働集約型の事業であるが故に、低賃金・長時間労働で労働者を収奪しなければ基本的に成り立たない。フランスやドイツが移民労働者の収奪の上で成り立っているのだとすれば、日本も同じ轍を踏みつつあるのだろう。今は見えない「集配センター」で外国人労働者が働いているとしても、近い将来は運転現場に国際免許を持つ外国人労働者が進出してくるのかもしれない。

続いてプロフェッショナル「仕事の流儀」(2019.9.17 22:30~23:20

「番組内容」 介護やコンビニなど外国人労働者は今やなくてはならない存在。だが、目を背けたくなるような問題が多発している。支援活動を行う鳥井一平に密着する。鳥井一平(66)は外国人労働者を支援するNPOの代表。長年の実績が評価され、アメリカ政府から日本人として初めて「ヒーロー賞」を贈られた。

鳥井に密着して見えてきたのは、私たちが目を背けてきた「不都合な真実」。移民社会に舵を切ったとされる日本で、私たちは“彼ら”とどう向き合っていけばいいのか。誰もが無関係ではないこの問題を考える。《番宣より引用》

一次二次産業どころか三次四次産業でも人手不足が蔓延し、拡大を続ける日本語も不十分な外国人労働者たち、難民でも移民でもなく五年未満の単身短期滞在を基本とする”見せ掛け”の技能研修をうたい文句とし、”単純3K”労働に従事させる外国人労働者のことである。

番組がテーマとする「ヒーロー賞」受賞の鳥井一平が主宰する NPO「 移住者と連帯するネットワーク(移住連)」とはこちら

ハッとさせられる。先の番組で便利な「宅配便」に潜むというよりも、見ないようにしてきた”外国人労働者問題”、続くこの番組では正面から取り上げている。事実上の移民でありながら”短期滞在労働者”と扱い、日本社会は見ないふりを続けている外国人労働者(時に多くの日本人は外人労働者とも言う)に関わる様々な問題。

知らなかったというより知らされていなかった鳥井一平さんのヒーロー賞授賞(アメリカ国務省から「人身売買と闘うヒーロー」として表彰される)、米国発の日本へのジョークに思えるが、2013年6月19日に起きた事実である。日本における外国人労働者問題が米国から見れば人身売買として捉えられている。

ヒーロー賞を鳥井氏に授与するということが、米国国務省から日本政府宛に発しられた”大いなる皮肉”でなくてなんであろう。事もあろうに「日本国内で人身売買と闘うヒーロー」として表彰されるなんて、人権問題の摘発以外の何ものでもない。独裁国家や低開発国ならいざ知らず、”世界に冠たる先進国・日本”に人身売買問題が存在すると米国国務省は言うのである。

外国人研修・技能実習制度がどうして人身売買といわれるのか、たとえ賃金が支払われていても、「労働者の基本的権利」が守られていない、この制度のもとに外国人労働者があることが人身売買だと鳥井氏は話す。

「外国人研修・技能実習制度」が一次〜三次の3K職場における人手不足を補う救世主だけであるならヒーロー賞の対象にはならない。そこに低賃金、賃金不払い、なかにはパスポート預かりや労災不適用などなどの不当な扱いが蔓延している。オーバーステイ労働者の不法滞在収容問題も人権問題であろう。

日本人雇用主の多くは善良な中小零細事業者であるのだろうが、労働者の母国と日本との間に介在している「現地求人派遣」業者、日本国内に存在する労働者を雇用主に派遣する介在事業者の存在が問題を劣悪な労働人権問題にしている。

現地求人派遣事業者は旅費渡航諸費用を貸し付けて労働者を縛り、それを受けた国内派遣事業者(時に公の仮面を被っている)は様々な問題には目をつぶり人手不足を解消する特効薬として外国人労働者を技能研修生として派遣する。

外国人技能実習生は「Migrant」なのであり、移民もしくは短期移住労働者なのである。技能研修とか実習などという美名が起きている問題を見えなくしているのであり、ここでも「言霊の国・日本」の言い換えすり換えのマジックがある。

スーパーに溢れている「とても安い野菜や果物」の多くが「外国人技能実習生という短期労働者」の存在なくしては有り得ない事実に私たちは早く気づくべきなのである。

大都会のコンビニや宅配集配センターでは「外国人技能実習生」や「日本語・語学留学生」の存在なしに営業が成り立たなくなっている。地方の大型集約産地では「外国人技能実習生」なしには野菜の栽培も収穫も出荷も成り立たなくなっている。そこに見えるのは労働集約型産業における低賃金労働者の存在であり、彼らなくしては便利な宅配も安価な野菜も有り得ないという現実である。

人身売買問題は悪質業者だけを責めればよい問題ではない。悪質業者の跋扈を許している日本の制度の存在が問題の根底にある。政府は”制度は悪くない、制度を悪用する業者が問題だ”と言うのであろうが、それは言い逃れであり、問題のすり替えでもある。外国人技能実習生で人手不足を補おうという”政府や政治の換骨奪胎精神”が背景に存在する。そしてそれらの矛盾を見ようとしない、見えないフリをする多くの日本人が存在する。

鳥井さんは、「労使対等が担保された多民族共生社会を共につくっていこう」と話す。

開花が遅れていた曼珠沙華が彼岸過ぎの今朝、咲き始めた。今朝は台風17号が通り過ぎて「暑さ寒さも彼岸迄」を実感する涼しさである。日の出も遅くなったし、随分と南から昇るようになった。銀杏は落果し無花果は盛りを過ぎたが、柿が色づき始めた。里芋を掘り上げ薩摩芋を抜きあげる時期も間近だ。

月刊日本記事より抜粋引用
現在、日本で働く外国人労働者が増加している。特にアジアの途上国から多額の借金をして日本に出稼ぎに来る技能実習生と留学生が急増している。だが、夢見た日本で待っているのは「奴隷労働」である。 (東京福祉大学留学生失踪事件

そもそも技能実習制度の仕組みは人身売買的である。実習生は「送り出し機関(本国)→監理団体(日本)→受け入れ企業(日本)」というルートで送り出される仕組みになっているが、実際には現地のブローカーから送り出し機関に送られる場合も少なくない。

日本の技能実習制度において「人身取引犯罪」が行われている可能性があるが、いずれにせよ実習の現場では「奴隷的状態」「強制労働の状態」「搾取的な低賃金労働」「虐待的環境」が蔓延しており、そこから逃げ出した実習生が「人身取引の被害者」になった実例もある。技能実習制度の実態は「犯罪的」どころか「犯罪」そのものではないか。

しかも、そもそも技能実習制度は国の制度ではないか。国際貢献を目的とする国の技能実習制度が「人身売買制度」「奴隷労働制度」になっているとは笑えない冗談である。国の制度管理はどうなっているのか。

 技能実習の現場では過去3年で1万3390件の労基法違反があり、少なくとも数万人の実習生が労基法違反の状態で働かされていたということである。しかし、労基法違反の件数に対して送検の件数が少なすぎる。これでは労基法違反を抑止するどころか助長するだけではないか。

日本政府は強制労働をさせた日本企業を罰せず、強制労働から逃げ出した実習生を逮捕・強制送還しているということである。つまり、技能実習制度では日本人の加害者が罰せられず、外国人の被害者が罰せられているのだ。日本は政府と企業が一体になって、アジアの若者たちを文字通り使い捨てているのである。

技能実習制度は必ず将来に禍根を残す。現在、日本は戦時中に朝鮮人に強制労働をさせた「徴用工問題」に直面しているが、技能実習制度は「現代の徴用工問題」であると言っても過言ではない。

 ある支援者は「いま日本は国策として『親日』のアジア人を『反日』に変えて送り返しているのです」と嘆いていた。「反日」という俗語は使いたくないが、現状では将来的にアジアの国々が「反日」に一変するのは必至である。このままでは、21世紀の日本は「アジアの孤児」になるしかない。 《月刊日本

 

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