エスタブリッシュメントのモラルハザード

エスタブリッシュメントのモラルハザードを訳せば「支配階級の倫理崩壊」と表してよいだろう。ここで云う日本の支配階級とは国政政治家、高級官僚、大企業役員つまり永田町(国会議事堂)、霞ヶ関(財務省等官庁街)、大手町(経団連)に巣喰う輩たちのことである。もう一つ汐留など(マスコミなどの代表として電通)を付け加えてもよかろう。

《エスタブリッシュメントのモラルハザード・その1》
 先ごろ、東京電力旧三役に関わる原発訴訟の判決があった。東京電力の旧経営陣3人が福島第一原発の事故を防げなかったとして検察審査会の議決によって強制的に起訴された裁判は、東京地裁にて3人に無罪の判決を言い渡すことで決着した。原発再稼働を押し進める安倍政権への忖度判決だとも世評される判決である。
NHK詳報「原発事故の真相」(2019.9.19)
福島原発刑事訴訟支援団|東京電力福島原発事故の真実と責任」

 判決は「長期評価の見解は、本件地震発生前の時点において、他の電力会社がこれをそのまま取り入れることもないなど、原子炉の安全対策を含む防災対策を考えるに当たり、取り入れるべき知見であるとの評価を一般に受けていたわけではなかった」と云う。

(しかしながら)国の研究開発法人である日本原子力研究開発機構は、東海再処理工場の津波想定で、長期評価の見解そのままを「採用する」(2008)としていた。日本原電は、「そのまま」ではなく日本海溝沿いの北部と南部で地震の規模を分けたものの、長期評価の見解にもとづく対策工事を実施した。

 土木学会津波評価部会も、2009年以降進めていた津波評価技術の改訂作業で、「日本海溝沿いのどこでも津波地震が起こりうる」という長期評価の考え方を取り入れようとしていた。

 政府の地震本部は2002年7月、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の”長期評価”」を公表した。福島県沖でもマグニチュード8.2前後の地震が起きる可能性があるとしていた。 この政府機関が地震に対する”長期評価”を信頼できないとする判決は原発再稼働に邁進する政権や東電経営陣に忖度する判決と評されても致し方なかろう。

『これを評して法曹界のモラルハザードと云う。自らの過ちを認めようとしない東電経営陣のモラルハザードは云うまでもない。』

《エスタブリッシュメントのモラルハザード・その2》
 今度は福島原発事故処理に追われる東電に代わり原発再稼働の旗振り役を務める関西電力経営陣に関わる不祥事が明るみに出た。 関西電力の歴代トップらが、原発が立地する福井県高浜町の元助役(故人)から計3億2千万円分もの金品を受け取っていた。

 関電の岩根茂樹社長は記者会見で、20人が2018年までの7年間に金品を受け取ったと認める一方、金品の趣旨などは明らかにしなかった。「不適切だが、違法ではない」とも云う。不適切な、心に疚しい金品を受取ったとしても、「返せばいいだろう」と開き直る人たちに、公的存在感の高い企業経営者の資質は認められるのだろうか。
関電役員らが多額の金品受け取る不祥事 
「原発マネー」癒着の構図 

「返却の機会をうかがいながら、一時的に個人の管理下で保管していた」と釈明する関電社長岩根茂樹氏であるが、彼の年齢は66才である。老醜老惨をさらけ出すことなく辞任を表明すればいいのにと思うが、八木会長はじめ20人余の役員が金品を受け取っていたとあれば、一人辞表を出して「ええカッコシー」となるわけにもゆかないのであろう。

《エスタブリッシュメントのモラルハザード・その3》
 永田町・安倍政権にまつわる象徴的な事件が最近発生した。あいちトリエンナーレ補助金不交付という事実上の検閲行為事件である。文化庁長官・金属工芸家・宮田亮平氏は何をしているのだろう。芸術家を自称するのであれば長官辞職で文科大臣に抗するのが筋というものであろう。文科大臣萩生田光一(安倍総理のお気に入り)は、記者会見で”トリエンナーレ”を”トリエンターレ”と呼んでいた。(2019.9.27)
「文化庁は文化を殺すな」

文化庁および文科省が補助金不交付とするこの事件は、
トリエンナーレ・表現の不自由展では、元慰安婦を象徴する少女像や昭和天皇の肖像を燃やすような映像の展示に批判や抗議が殺到した。テロ予告の犯罪行為などもあり、安全が確保できないとして開幕3日で中止に追い込まれた。

文科大臣萩生田氏は「県の申請書類の内容と実態に乖離(かいり)があったので交付を見送った」と説明する。その上で「今回のことが前例になり、大騒ぎをすれば補助金が交付されなくなるような仕組みにしようとは全く考えていない」と語ったと云うが、これを語るに落ちたと云うのである。

一旦は補助申請を認可していたものを、その後に河村名古屋市長や吉村大阪府知事を巻き込んで政治問題化し、挙句事後検閲にも等しい補助金不交付決定とするを評して”エスタブリッシュメントのモラルハザード”と云うべきであろう。

※河村名古屋市長いわく「私はトリエンナーレに賛同する立場で視察して、『これはひどい』と思った。昭和天皇の写真もそうだが、普通の神経をした人なら『これは美術なのか?』と思うでしょう。いわば、『日本の世論がハイジャックされたような展覧会だ』と思った。だから責任を果たすために、実行委員会会長である大村氏に中止を申し入れた」(2019.8.12)

※吉村大阪府知事は、昭和天皇の写真を燃やす映像や、日本人特攻隊員の日の丸寄せ書き書を使用し、「間抜けな日本人の墓」などと日本人に対するヘイト作品を実行委員会会長として容認した大村知事について、7日の記者会見で「反日プロパガンダ」「愛知県知事がこの表現行為をしていると取られても仕方ない」「このまま知事として認めるのか。知事として不適格と語った。(2019.8.9)

《エスタブリッシュメントのモラルハザード・その4》
文科省マターでもう一つ、大学入試・英語外部検定利用入試・問題がある。 同テーマで文部科学省・大学入試英語ポータルサイト 

文科大臣メッセージ(2019.11.01)
『令和2年度の大学入試における英語民間試験活用のための「大学入試英語成績提供システム」の導入を見送ることをお伝えします。
英語教育充実のために導入を予定してきた英語民間試験を、経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためには、更なる時間が必要だと判断するに至りました。』

要するに民間活力の活用をうたい、民間業者による英語を「書く」「話す」ための力を民間の資格・検定試験を活用することにより行おうという改革が頓挫したのである。民間業者による検定試験は機会均等条件に反し、居住地や貧富により受験格差が生まれてしまうという批判に抗しきれなかった。

何よりも急ピッチな改革の背後には、少子化により市場が縮小しつつあった教育産業に新たな需要をもたらすことがあった。年間受験者数約五十万人が検定を二度受ければ、百万人の市場が一挙に生まれる。準備受験を加えれば市場はさらに大きくなる。その背後に受験教育産業と文科省や政界の癒着があったとしても不思議ではない。というよりも、あったことであろう。

土木や通産行政が利権たり得なくなって久しい。新たに利権として浮上してきたのが情報関連分野であり教育関連分野である。消費税率引き上げに伴うカード決済導入騒ぎ、不動産取引関連情報の開示非開示問題、森友学園問題、加計学園問題などがそれらの垣間見えであろう。エスタブリッシュメントのモラルハザードは腐敗などというものではなく、今や腐臭を放つに至っている。

折しも、文科省次官経験者のベネッセ関連法人への天下りが明らかになった。

「衆院予算委員会は六日、安倍晋三首相と関係閣僚が出席して集中審議を行った。2020年度の大学入学共通テストへの導入が延期された英語民間検定試験に関し、実施団体の一つベネッセの関連法人に旧文部省、文部科学省から二人が再就職していたことが明らかになった。

 関連法人は、ベネッセと共同で英語検定試験を実施している一般財団法人・進学基準研究機構。法人はベネッセ東京本部と所在地が同じ。文科省の伯井美徳高等教育局長は予算委で、旧文部省の事務次官経験者が同法人に再就職し、十月一日まで理事長を務めていたことを明らかにした。」

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