コロナ禍を転じれば -2-

 新型コロナ感染症が禍(わざわい)であることは云うまでもない。禍福吉兆は糾える(あざなえる)縄の如しと云う。コロナの禍を転じて福と為す施策は無いだろうかと考えるのである。 With CORONA とか After CORONA とかよく言われるが、そんな簡単にWith&Afterを考えて良いものだろうか、考えられるものだろうかと思う。

 新型コロナ感染症が、首都圏或いは近畿圏など都市圏域への移動や都市圏域間の移動を自粛、職場についてテレワークの推奨、三密(密閉空間、密集区間、密接接近)を避けようなどなどと三月以来の大騒ぎである。

 しかし、未だに理解できていないのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が何なのかである。新型のインフルエンザではないのか、昨年まで秋から冬に流行したインフルエンザとどう違うのか、そういえば今年はインフルエンザの話を聞かない。

 感染すれば異常に死亡率が高いとも聞こえてこないし、異常に感染力が強いとも思えない。何がどう違うのかを、テレビも新聞もネットも分かるように説明してくれない。WHOの解説は公開されているけれど、致死率の違いはまだ確定的では無いしワクチンが存在しないのは人類が直面して一年未満だから当然であろう。

雨の今朝、西江川沿いに咲く紫陽花

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)WHO公式情報特設ページ

 厚生労働省が公表した2018年人口動態統計月報年計(概数)によると、日本人の3大死因は悪性新生物(腫瘍)・心血管疾患・老衰である。2018年の死亡数は前年比2万2085人増の136万2482人。

 死亡数を死亡順位別にみると、第1位は悪性新生物の37万3547人(人口10万対死亡率300.7)、第2位は心疾患(高血圧性を除く)の20万8210人(同167.6)、第3位は老衰の10万9606人(同88.2)、第4位は脳血管疾患の10万8165人(同87.1)、第5位は肺炎の9万4654人(同76.2)である。全死亡者に占める構成割合は、悪性新生物27.4%、心疾患15.3%、老衰8.0%、脳血管疾患7.9%、肺炎6.9%などとなっている。

以下、6位が不慮の事故で41,213人(同33.2)、7位が誤嚥性肺炎で38,462人(同31.0)中略、10位が自殺で20,032人(16.1)である。 

 2018年の年間死者数は1,362,482人であるから、一日当たりでは3,732人である。NHKが集計する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者累計数は20,534人、累計死者数990人である。(2020/01/18以降 07/06現在)

 死亡者数統計は年間数値であり、COVID-19はほぼ半年間の数値であるから単純比較はできないが、半年間のCOVID感染者数は年間自殺者数に匹敵し、累計COVID死者数は一日当たりの死者数にも及ばない。

梅雨空の下、木槿が咲く

 誤解無きように申し添えるけれど、筆者茫猿は死者を軽んじているのでは無い。数字となった死者は声無き無名数であるが、一つ一つの死の背後には本人を含めて家族親族の悲しみが存在する。そのことを忘れているわけでも軽んじているものでもない。筆者自身も昨日、肺炎を死因とする叔母の葬儀を終えたばかりである。ただ一人残されていた父の姉妹を見送った今、累計死者数の一人という感覚は無い。

 ただ、76歳で糖尿・高血圧・脳梗塞という持病らしきものを抱えている割には、インフルエンザにも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にも恐怖感を感じないのである。どうしてそんなに大騒ぎをするのか未だに理解できないのである。

 NHK、タモリ×山中伸弥の「人体」シリーズによれば、人体の免疫機能が暴走して血栓を作り、感染者の容態を急変させる可能性が有ると云う。まだデータ量が少ないが、感染者の1割くらいが重症化し、そのうち肺炎を悪化させる死者が7割、血栓による死者が3割と云われる。

 不可解なことが多いにしてもCOVID-19は世界的蔓延をしており、全世界では感染者数1200万人 死者数52万人と統計は伝えている。日本ではクルーズ船での感染蔓延が最初で、次いで夜の街歓楽施設がクラスター感染源であると標的になっている。一つだけはっきりしていること、確かに理解できていることがある。今度の大騒ぎは社会的弱者、肉体的弱者に厳しいということである。

 補償なき自粛騒ぎが蔓延して、真っ先に切り捨てられているのは、非正規雇用者であり、就職氷河期世代であり、母子家庭及び父子家庭世帯であり高齢者世帯であろう。肉体的弱者にとても厳しい風が当たっているだろうことは容易に想像できる。早い話が、今は「止揚学園」を訪問することも自粛しなければならない。

 そのような意味では、この騒ぎが早く収束して社会的弱者世帯に明るい兆しがさしてくることを期待したい。こんな時に以下の映画が存在することを心強く思うのである。

万引き家族
万引き家族(まんびきかぞく、英題:Shoplifters)は、2018年6月8日公開の日本映画。是枝裕和監督。 実際にあった、親の死亡届を出さずに年金を不正に貰い続けていたある家族の事件をもとに、構想10年近くをかけて作った。

『「インビジブル ピープル」と審査員長のケイト・ブランシェットは授賞式の冒頭で口にした。その存在に光を当てることが今回の映画祭の大きなテーマだった、と。隣に座った通訳を介して日本語に翻訳してもらいながらだったので内容は大まかにしか把握できなかったが、その「invisible」という言葉だけはずっと頭に残った。確かに『万引き家族』で僕が描こうとしたのも普段私たちが生活していると、見えないか、見ないふりをするような「家族」の姿だ。その生活と感情のディティールを可視化しようとする試みが今回の僕の脚本の、そして演出の柱だったとケイトさんの言葉に触れて改めて思い出した。そして、そのスタンスは14年前の『誰も知らない』とも通底している——と、自分では今回の作品を分析していた。なので名前を呼ばれて壇上に向かいながら、このスピーチでは「invisible」なものについて触れようと考えていた。』

パラサイト 半地下の家族
第72回カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞!世界がその才能を絶賛する若き巨匠ポン・ジュノ監督×名優ソン・ガンホ。“ネタバレ厳禁!”100%予測できない展開に全ての感情が揺さぶられる、超一級エンターテインメント作品!

『今日の社会には、目に見えない階級やカーストがある。私たちはそれを隠し、過去の遺物として表面的には馬鹿にしていますが、現実には越えられない階級の一線が存在します。「パラサイト 半地下の家族」では、ますます二極化の進む今日の社会の中で、 2つの階級がぶつかり合う時に生じる亀裂を描いているのです。』(ポン・ジュノ)

家族を想うとき
『わたしは、ダニエル・ブレイク』ケン・ローチ監督最新作。第72回カンヌ国際映画祭 … 国際映画祭Perlak部門出品。第44回トロント国際映画祭出品。

『新自由主義経済が持ち込まれてから、労働者を守る仕組みが崩壊した。”個人事業主”、”フランチャイズ”という誘い文句で、労働者は「働いただけ儲けは全て自分のものとなる」という幻想を植え付けられる。その挙句働くことを止められなくなり、家庭や健康といった個人的な基礎が侵されて行く。仕事は家族を守るためのものなのに、現代では家族との時間を奪っているなんてバカげている。』(ケン・ローチ)

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