ReaNet & NeoRea

Rea-Net の構築が順調に進めばそれで全て良しかと云えば、そうではない。先にも述べたようにRea-Net は優れ物ではあるが道具に過ぎないのであり、この優れ物をいかに運用してゆくかに鑑定評価の未来が懸かっているといっても大袈裟ではないのである。


どういうことかと云えば、Rea-NetはRea-Jirei、Rea-Info、そしてRea-Dataより構成されている。Rea-Infoは広汎な情報交換システムであり電子会議室、伝言板、メール、掲示板等の機能を兼ね備えた情報交換交流システムである。Rea-Dataはファイル交換システムである。地価公示や地価調査のデータ交換配布システムと考えれば宜しかろう。

いわばメール添付ファイルシステム+ファイルダウンロードシステムの高機能型と云っても差し支えなかろう。この両者は多数の士協会会員が自在に使いこなせばこなすほど、その機能を発揮してゆくであろう。当然ながら使いこなせなければ、宝の持ち腐れ、猫に小判、豚に真珠ということになるのであろう。

このあたりのことは、クドクドと能書きをたれているよりも、先ずは使い慣れることであろう。とにかく使うことである。差し当たっては地価公示や地価調査の分科会運営で使いこなせば(否応なしに使えば)、その後は鑑定協会や士協会の役員会や委員会でも次第に利用されるようになり定着してゆくであろう。

古人も言ったことであるが、「習うより慣れろ!!」である。そしてRea-Info及びRea-Dataの活用目標はナレッジマネージメントの浸透にある。すなわち、鑑定士個人の持つ知識や情報を士協会をはじめとする業界組織全体で共有し、有効に活用することで個々の会員能力の底上げを図ってゆくという考え方である。

このことは新スキーム情報について共同利活用を図るという方法論から自ずと導き出される思考スタイルである。つまり、鑑定士孤ならず智的協働者であるという哲学であり、協働により相乗効果を生み出そうという思考方法である。

そこで、次の問題はRea-Jirei システムの運用であろう。Rea-Jireiシステムは普通二つの機能を有するモノである。一つは五次データのオンライン閲覧機能である。ここで五次データとは地価公示・地価調査事例データ(四次データ)を閲覧用に形式変換したデータを指す。

五次データには取引事例(士協会によっては賃貸事例が含まれる場合もある。)の属性テキストデータとイメージデータが含まれる。イメージデータとは所在位置図及び地形図であり、いわゆる事例二枚目をスキャニングしてPDFやTIF化したデータのことである。このイメージデータを含めた五次データオンライン閲覧は既に少なからぬ士協会において実施されており、特に目新しいことはない。

問題は三次データのオンライン閲覧機能、即ち新スキーム調査結果の共同利活用機能の運用である。新スキームについては地価公示評価員にとって過重な負担であるという批判がついて回っているが、全国展開に際して不要不急な調査は回避されたことから、量的な負担や遠隔地調査の負担は軽減の方向で運用が行われている。

さらに毎月末毎にオンライン納付する調査結果が退蔵されることなく、直ちに士協会会員のオンライン共同利活用に供することができれば、それは地価公示の精緻化に寄与するだけでなく鑑定評価の精緻化にも大きく寄与するものとなるし、会員が抱く過重負担の思いも軽減させることとなるであろう。同時にRea-Jirei システムを効果的に運用するために、周辺環境を徐々に整えてゆくことが重要となるのである。

【REA-NETについて:07/09/18開催の第258回理事会で承認された資料ファイルを開く】

『三次データのアクセス権限』
Rea-Jireiシステムは三次データの即時的活用を実現するものであり、原則として毎月一回の三次データ更新が行われる予定なのである。ここまでは実現可能というよりも実現が約束されるモノであり、一部士協会においてはこの一部或いは全部が既に実現し稼働しているのである。

で、何が問題かと云えば、「Rea-Jireiシステム」へアクセスを認める各士協会会員の範囲であろう。課金システムとの併用により原則全会員にアクセスを認めるのか、それとも地価公示評価員に限定するのか、各士協会に於ける慎重な検討が求められる。

『三次データとMapシステム』
さて、三次(テキスト)データの共同利活用がほぼリアルタイム状況になれば、次なる課題が浮上してくるのである。それは位置図や地形図等イメージデータの効率的作成と効果的利用の方策である。つまり新スキーム事例の調査とは公示評価員(鑑定士)による現地実査が伴うものであり、調査時点で事例地のGIS情報(緯度経度情報、または住宅地図的位置情報)と地形図情報が入手できているか、または直ちに入手可能な状態に置かれるのである。

地図情報(GIS情報またはMAP情報)と法務局公図情報という形態の異なる二種類の情報を如何に有効に活用してゆくかが問われるのである。 即ち地図システムを利用したデジタル事例地位置図の作成であり、地形図のデジタル化なのである。デジタル事例地位置図については、既に開示されている地価公示等地図情報をイメージすればよいであろう。

『三次データ作成と携帯電話』
例えばであるが、事例地を実査する時に現地から携帯電話でRea-Netサーバに向けて地理情報を送信するという方法も検討できるであろう。Rea-Netサーバの特定アドレスへ向けて新スキーム事例のユニークナンバーを送信すればGIS情報(緯度経度情報)が取得できるようにシステム化すればこと足りるのである。ここで、ただ単に地理情報を送信するだけではもったいないのであり、折角だから携帯写メールを送信すれば現場写真も保存できて一石二鳥なのである。

現場写真の保存には他にも効用が認められる。それは地上建物について配分法を適用するに際してセカンド・オピニオンを求めることが容易となるのである。それい以外にも事例地写真は多くの方面で活用されるであろう。

地形図については、事例番号をファイルネームとする公図のスキャニング・PDF化データを、これも同じくRea-Netサーバへ送信すればこと足りるのである。
『新スキームにGISを利用する利点』

このイメージデータデジタル化システムが稼働する利点は三つあげられる。
一つは、公示評価員の負担軽減・省力化である。公示事例カード二枚目が自動的に作成でき、しかも最初からデジタル化できるのである。
利点二つ目は、三次データ作成時点で位置図・地形図が作成されるから、データ共同利活用の効果が倍増するのである。

さらに利点三つ目が挙げられるから、実態は倍増どころか倍々増であろう。位置図を地図システム利用で作成することから、評価対象地例えば地価公示地周辺の事例の存在確認が、デジタルマップ上で容易かつ迅速的確に行えるのである。

それ以外にも、全資料のデジタル化は保管を容易にし、管理や検索も便利になるであろう。さらに事例位置図作成のGIS化は次の段階として、事例属性データの多くについてGISによる自動取得も視野に入ってくるのである。例えば最寄り駅や主要商業施設についてその名称並びに距離条件の自動取得も検討できるであろう。

お判り頂けるだろうか、このようにして「地図や公図写しなどの紙資料を切ったり貼ったりする作業」、いわば究極のアナログ的作業を電子地図などを利用してデジタル化することにより、地価公示をはじめとする鑑定評価の作業環境から鋏と糊を追放することが可能なのである。

最近は不動産に関する様々な情報がデジタル化されて提供されているのであり、しかも無料で提供されている。地価公示地点MAP、固評標準地MAP、固評路線価MAP、相評路線価MAP、都市計画用途地域図、小学校校区図、下水配管図、鉄道路線図、バス路線図、等々である。数え上げればきりがないし日毎に増え続けているのである。

だから、鑑定評価サイドとしても、そういったデジタル化資料をどうしたら有効に利用できるかを考え続ける必要があるし、そこに新しいビジネスモデルを構築してみたり、社会に還元する公益的サービスモデルの実験を行ったりする必然性が存在すると考えるのである。そこでは地価公示を補強する速報値として、三次データを基礎とする地価INDEX発行も鑑定協会や士協会のニュービジネスとして存在し得るのではなかろうか。

『オンライン閲覧ライセンス開放』
Rea-Jireiシステムはオンラインシステムである。であることから自明なのであるが、所属士協会会員以外へのアクセス・ライセンス発行が可能なのである。Rea-Net接続会員は鑑定協会会員に限定されるが、鑑定協会会員であればいずれの士協会Rea-Jireiシステムへのアクセス・ライセンスを発行できるのである。

とはいうものの直ちに各士協会事務局での閲覧以外のオンライン・アクセスを認める方向に向かうとは思えないが、所属士協会会員以外へのアクセス権開放も将来の検討課題であろう。同時にこのアクセス・ライセンスは五次データのみならず三次データについても遠からず検討を求められるであろう。

もしかしたら、鑑定業界内では一笑に付される話かもしれないが、このアクセスライセンスの開放は何も鑑定士だけに留まらないかもしれない。形態は異なるし徐々に変化してゆくのであろうが、三次データそのものが本来的には社会的資産であり開放されるべき側面を有するという視点も忘れてはならないであろう。つまり、市民の理解と協力により収集された原初データであるし、鑑定士(地価公示評価員)の尽力により形成された三次データではあるが、地価公示のスキームによることからその過程には多くの公的資金が投入されているのである。

すなわち、鑑定士にとっては地価公示の評価書が情報開示されるものであるように、取引価格情報提供制度により収集された資料データというものについても「開示形態の如何」という前提は検討されるべきとしても、情報開示を前提に「スキーム:枠組み」を組み立ててゆくものであろう。

私は、「渋々、情報開示する」ことを選択するよりも、「積極的に情報開示する」ことを選択する時期が、多分そう遠くない未来に到来すると予想するのである。落ち着く結果がさらなる情報開示であるとするならば、自ら積極的に開示を準備することにより違った局面や新しいビジネスチャンスが得られると予想するのである。いささか時代がかった表現だが、「新スキーム悉皆調査とREA-NETが鑑定評価のニューフロンティアを開く」と云ったら大袈裟だろうか。

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