【明日のために動く】

【明日のために動く】 新潟の畏友 不動産鑑定士 伊藤 正弘様
1. 情報開示の時代を迎えて
 鑑定士は今まで何故に重用されたか?
 一つは、一般の人々が取引価格等の情報を容易に入手できなかったからです。鑑定士に評価依頼をすれば、豊富とまではいかなくとも、不動産業者、銀行よりも確かな情報を得ることが出来たのです。
 その情報も公示制度に乗っかったお願いの産物ではありますが。情報(事例)の専門的な分析能力も多少買われたこともあるでしょう。
 次は用対連、国土法、競売、税制等の関連で、法的に根拠(正当性、責任回避)を求められているからです。大法人においても公の制度にならい、根拠を求めました。しかし、役所や大会社のベテラン精通 者にとっては情報としての価値は既に無かったのです。


 さて、土地政策審議会が考えているように取引価格等がブライバシーの問題がないとして、鑑定士の手の届かないところで公開されたらどうなるのでしょうか?
 我々の手を離れてアメリカのようにインターネットで取引事例、収益事例が、そして固評価格等が入手できるとなると鑑定士に頼る必要がなくなることは必然です。生の情報だけではだめだと主張なさる人もいましょう。生の情報の集積と分析が最も高い価値があることは誰しもが認めるところです。しかし、そうした仕事は資格が無くとも出来、優れた人達、組織は世の中にあるのですから、わざわざ鑑定士を介して情報を得る必要はありません。
 いや、専門的知識と能力を必要とする仕事があると主張するでしょう。確かにそうした分野は残るでしょうが、今までの社会のニーズは高度なところには少なく、大衆的なニーズが殆どでした。より高度なところはシンクタンクが担っていくでしょう。
 以上から、鑑定士は自ら豊富な情報を持つことが出来なければ一つ目の仕事は無くなっていくと思います。
 二つ目の仕事とて、社会に情報があり、正確性を担保するサービスが行われれば、必要性は低くなります。従って、我々は、情報を自らの手で入手し、開示する行動に出なければいけません。それには協会本部と国土交通 省(国土庁)が力を合わせて土地情報収集事業を起動させ、単位会で土地情報収集事業を受託し、分析した成果 を公開していくことです。
 そして、そうした生情報の分析成果と公的評価を一元化すること等によって地方と都会の従来の業務、また新たに生まれる業務のバックアップ体制が整うこととなります。
2. 地方も都会の鑑定士も栄える時代を目指して
 都会も地方も鑑定士が食える、生きがいを感じられるようにするためにはどうすれば良いのでしょうか?
 地方の鑑定士は競売や公的評価に安住しています。競売の最低売却価額制度の廃止、公的評価の見直しの音はもう足元に来ています。どういたしますか?
 都会の鑑定士はバブル清算の評価を「早く・安く・正確に」をモットーに宅急便のごとくに奔走し、清算後の開店休業を予期されていると思いますが、次の手はどういたしますか? 
 地方でも都会でも鑑定士という職業で明日の糧に憂えず、品位を高揚していく明日は望めないのでしょうか?
 「比準価格重視から収益価格重視への流れ」と「自己責任」。
 私はこの辺りにキーワードがあるのではないかと考えます。
 我々は長年,正常価格の呪縛から逃れられませんでした。バブル崩壊はそうした我々の目を覚ませてくれたのではないでしょうか?多種多様な価格があることを知らしめてくれたのです。当事者が同じでも当事者のその時の状況によって妥当な価格は変化するのだということ。正常価格、早期売却価格、下取り業者価格、デフォルト前価格、競売価格、デフォルト価格等であります。その他にも現況価格、利用目的別 の投資価格なども考えられます。
 それに公示価格、固評価格、相続税価格を加えれば、一般の人々にとってはどれを利用すればいいのかわからなくなってしまうのは自明です。社会に多種多様な価格があることを大々的にピーアールする必要があると考えます。
 そして、個人、法人、官公庁に対して時と状況と目的に応じた適正価格を提示し、かつ助言できるのは鑑定士のみが行えることを主張していかなければなりません。安易に、いたずらに公示価格、相続税価格に頼っていては過ちを犯し、損害を被ることになることを訴えていくことが必要です。
 企業、個人、官公庁が多種多様な価格がある中で、それぞれが自己責任を果 たすためにも鑑定士が必要なのだと、そこに新たなニーズが創出され、鑑定士の活動範囲が広がり、社会に大いに役立つことができると考えるのです。
-以上-
追伸 森島さんの会長選挙立候補準備の小文を読んで、煮えたぎる想いで賛意を表明するものです。
 私はこの業界に26年在籍しております。この間、確たる羅針盤なき業界のあり様に翻弄されて来ました。政治も行政も同じでした。日本を業界を国民のために変えていかなければなりません。それは、我々個々の責任でもあります。
 青年の頃の気概と志を想い出してください。長寿社会です。団塊の世代にも夢を語り、理想を目指す時間はまだ残されています。勇気を奮って立ち上る人と共に動きましょう!

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