利回り雑感

 不動産利回りについての関心が相変わらず高いようです。EREネットでも利回り論議が盛んで御同慶の至りです。昨日、本屋で「ジパン戦記3・地価は下がる、増田悦佐、大竹慎一共著、フォレスト出版」を見つけて大変面白くて、一気に読みました。経済合理性の超貫徹を標榜する点にはいささかついてゆけない、源氏部分に売上げの多くを依存する立場ではありますが。痛みを感じる期間は短い方がよく、ダラダラと長ければ全身を衰弱させてしまうという論旨は十分に頷けるものでした。


 その中で「日本の不動産の利回り」についての指摘は、ごもっともな点が多く、だからこそ収益価格(日本の不動産状況のなかでの)のある種の欺瞞性を感じている小生としては、大いに肯定できました。現在の賃貸収入が低位水準であるから賃料値上げの余地有りとして、物件価格をはじいたとしても、賃料値上げは大変困難であるのが普通であること。逆に賃料水準が高位であれば、テナントの交替、地価の下落、建物の劣化等の原因によって、近い将来の賃料水準の低下が予想され、同時に利回りの低下も予想される。(賃貸借が契約として整備されていない)
 5年から10年スパンでみれば、輸入米の関税化による米価の長期下落傾向と余剰農地の放出供給、余剰農地を保有する農家への迎合政策として調整区域のなし崩し的撤廃、少子化による住宅の余剰、そして何よりも可能性が高いのが国・地方自治体・公社公団の保有する債務の異常な増加による長期金利の上昇傾向が避けられないこと。これらが不動産と不動産利回りにどうのような影響をもたらすでしょうか。
 連帯保証人に遡及させず一族に債務を負担させないノンリコース債権が例外である日本、低家賃借家人を温存することにより社会福祉を老朽木賃家主に依存する日本、新築住宅の質的向上や公的賃貸住宅の充実に向かわない日本、20年程度で無価値になる住宅の建築に狂奔させて民を苦しめ企業に奉仕する日本。
 最後は毎度おきまりの愚痴になりました。不動産を財として扱いながら、財としての市場及び取引制度を等閑にしてきた日本は何処へ。今此処主義の破綻は近い。

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