資料委報告その他

去る4月6日開催の第4回資料委員会の報告を致します。
今回の資料委員会は委員会内に設置されている3小委員会の経過報告が
主な議題でした。
1.土地政審対応小委員会(福原孝信小委員長)
土地政策審議会が取りまとめた「土地情報の開示・提供の仕組みの整備」
において、実売価格の提供仕組みの検討や成約賃料に関するデータの鑑
定評価への活用の仕組みの検討が明記されたことを受けて、これへの対
応について検討が開始されました。
※取引情報の開示は、鑑定士にとっては双刃の剣となりかねません。保
護される個人情報である取引結果が公開されることは、一般論としては
望ましいことですが、取引情報を収集することを端緒として鑑定評価を
成り立たせている者にとっては基盤が公開・共通化されることとなりま
す。直ちに全面公開に向かうとは考えられませんが、評価基礎資料が公
開されれば、評価の課程をより精密化高度化することが求められること
となりましょう。そうでなくとも公的評価全般が評価書を含めて公開の
方向に向かっていることでもあります。
又、「守秘義務を持つから」という理由で、取引業界から鑑定業界への
取引情報の開示を依頼することも、何か虫がよい頼みであり、簡単なこ
ととは思いません。
2.地価公示事例資料の保管方法検討小委員会(熊倉隆治小委員長)
地価公示事例は各地域会或いは単位会で保管されていますが、保管方法
が統一されておらず、古い資料は散逸の危険にさらされています。過去
においてはマイクロフィルム化が多くの地域会で実施されましたが、マ
イクロフィルムリーダーが製造中止になるなど環境が変化しており、最
近ではマイクロフィルム化も行われず、紙での保存が行われていますが、
早急に新しい保管方法の検討が求められています。
※この件に関しては、東京会のカンテイネットを始めとして、幾つかの
単位会ではCD-ROM化も進められていることから、会員共通共有の
財産として公示実施当初からの事例を永久保存する方向での手法と体制
整備が求められていると思います。およそ1975年頃からの全国に亘
る取引及び賃貸事例を保有しているのは鑑定業界のみであり、将来にお
ける貴重な資料として適切な保管方法が早く確立したいものです。
3.パートナーシップ規程検討小委員会(増井聡彦小委員長)
パートナーシップ制度を充実し、規程化の方向を検討する小委員会です。
鑑定士間のパートナーシップに加えて異業種間パートナーシップも検討
し、規程化の目標や共同鑑定についても検討を始めています。
※パートナーシップ制度は、パートナーの需要者(依頼者)が都市圏に
多く、パートナーの供給者(受託者)が地方圏に多いという、制度発足
当初からの片務的性格は今も解消されておらず、制度の発達を阻害して
いるのも、この片務的な状況が大きく影響していると思います。
インターネットの普及や各単位会での資料閲覧制度の充実を考えれば、
抜本的検討の時期にきているのではないでしょうか。
【トピックス】
判例タイムズ、3月15日号~4月15日号に御注目下さい。
名古屋地方裁判所評価人会が、改訂した競売不動産評価基準及び評価書
の名古屋フォームを開示しています。
第一部 競売不動産評価基準制定にあたって(武藤正行氏)
第二部 競売不動産評価基準(名古屋地裁評価人会)
第三部 競売不動産の収益価格と利回りインデックス(小川隆文氏他)
第四部 評価書の定型書式(名古屋フォーム・名地裁評価人会)
第五部 望ましい評価と評価書を求めて(名地裁判事・原道子氏)
※大変な労作であると同時に、詳細なマニュアルを含むものでもありま
す。競売評価に携わる方は勿論、不良債権担保不動産評価に携わる方も
御一読をお勧めします。
既に、競売評価書は各地裁窓口で公開されており、評価情報の公開とい
う意味では、先鞭を付けていることでもありますから、評価書書式の統
一や評価基準の精密化も避けて通れない課題だと思います。
尚、評価書式については、ほぼ同様の内容を持ちながら書式スタイルで
はB4縦とB4横の違いがあります岐阜地裁評価書書式(EXCEL版)
を、「鄙からの発信」ダウンロードコーナーに掲載しております。

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