鑑定基準改訂の動向

 旧聞に過ぎますが、鑑定協会基準検討特別委員会から2000年12月5日
付けにて、「不動産鑑定評価基準の見直しに関する意見の提出方につい
て」と題する文書が配布されました。
 国土庁(国土交通省)において鑑定評価基準の見直し検討作業が開始さ
れていることに伴って、鑑定協会としても意見を提出すべく、会員の意
見取り纏めを開始するとのことです。
 如何せん、12月8日に協会よりの通達文書を入手し、締め切りが翌
2001年1月12日ということです。地価公示の最盛繁忙期に意見を求める
と云われても、とても応じている余裕はございません。
「只管打座・年賀に代えて」にも書きましたが、準備・知識共に不足す
る茫猿にはゴマメの歯ぎしりも叶わない有り様です。
愚痴を並べ立てることはともかくとして、提示されている検討事項は
(1)価格概念の整理及び業務範囲
(2)収益還元法の適用手法の考え方
(3)試算価格の調整及び市場分析
(4)経済的・法的・物理的な物件精査業務(デユーデリジェンス)
等が中心課題とのことです。
(1)価格概念の整理及び業務範囲・・・については
 一昨年来の特定価格の大増発が背景にあるものでしょう。
旧来の鑑定評価概念を大きく超える「コンサルタント的」業務の特に都
市圏における増加が時代背景としてあり、それが特定価格の拡大につな
がったものと云えましょう。
 この件に関しては、不動産鑑定2001-1号の巻頭座談会記事に幾つかの
興味深い論述があります。正常価格と特定価格の整理、正常価格の概念
規定など、従来型のジャッジメント的不動産鑑定像からコンサルタント
的不動産鑑定像に大きく舵を切り替えつつあるのでしょうか。
 何時の時代にも、変えるべきもの或いは変わらねばならぬものと、変
えてはならぬものとがあると思います。
21世紀の不動産鑑定士がどちらの方向へ向かうのか。他人事でなく自
分自身の在り方も含めて考えてゆきたいと思います。
(2)収益還元法の適用手法の考え方
(3)試算価格の調整及び市場分析・・・について
 語るべきものの持ち合わせは少のうございます。ただ、不動産の専門
家として鑑定評価の依頼者のみならず社会への説明義務に如何に応えて
ゆくのか、ということが以前にも増して大きく問われているのだと考え
ます。同時に年来の持説ではありますが、基本的或いは基礎的な収益分
析データや市場分析データを充実させてゆく地道な努力が求められてい
るのではないでしょうか。
(4)経済的・法的・物理的な物件精査業務(デユーデリジェンス)につい
ても、特定価格の範疇拡大と業際分野の位置づけという観点から鑑定士
の在り方(限界も含めて)を考えてゆくことだと存じます。
・収益価格が特に要求される分野、コンサルタント的分野への対応。
・コンピューターやインターネットと鑑定評価の位置づけ。
・資料なかんずく取引事例や賃貸事例の収集整理の在り方
・固定資産税標準宅地評価に代表される多数画地処理と土地価格比準表
 の位置づけ
・地域要因と個別的要因のデジタル処理に対応した区分手法など。
 今は、きれいごと以上に、申し述べるものを持ち合わせていない茫猿
の無力さを思い知っておりますが、正当な意味で「依頼者・鑑定報酬支
払者の要望に応えてゆくこと、即ち、すぐれてコンサルタントまたはカ
ウンセラー的鑑定士像」と「依頼者の意志に関わらず経済価値(価額)
判定者の立場を貫こうとする鑑定士像」とが、矛盾しないような、自家
撞着を起こさないような改訂鑑定基準の誕生が待たれていると存じます。
追伸
 昨年秋に何かとお騒がせを致しました「公取委・岐阜士協会調査事件」
につきましては、昨年中には新たな進展はございませんでした。
 年が改まって、どのような結論が提示されるのか予断は許されません
が、初心に立ち返り、いずれ提示されるであろう結論を虚心に受けとめ
たいものと存じております。

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