茫猿の総会質問(公開)

【茫猿遠吠・・総会質問通告(公開)・・04.06.08】
 不動産の鑑定評価に関する法律について、現行の士業併存法でよしとする平成15年度事業報告案が総会にて賛成多数により可決される可能性は、多数集められたであろう委任状の存在を考えるまでもなく高かろうと考えます。
 しかし、今秋にも国会上程が予想されるADR基本法に端を発する不動産鑑定法改正に関する問題は、今後の不動産鑑定士のスタンスとプレゼンスに関わる大きな転換点であると認識します。


 この歴史的転換点を無為に見過ごすことは、茫猿自身にとって大きな禍根を残すものと考えます。質問を行っても、正面からの回答は得られず何処かの総理答弁のようにはぐらかされたり、曖昧答弁に終始するかもしれません。
 所詮、蟷螂の斧、ゴマメの歯ぎしりに終わる可能性が高いでしょう。
それでも茫猿自身が後悔しないために、皆さんの注意を喚起するために、総会に出席して質問を行い、自身の意見を表明しようと考えます。同時に、そのことこそが未だ見ぬ将来の不動産鑑定士達への、茫猿自身の無作為や不作為の罪に対する証しになろうと考えます。
(注)1.文中の隣接法律専門職者について
総合法律支援法第三条(公布:平成16年6月2日 法律第74号)
 隣接法律専門職者団体(隣接法律専門職者が法律により設立を義務付けられている法人及びその法人が法律により設立を義務付けられている法人をいう。)
 http://www.ron.gr.jp/law/law/sogohori.htm#1-sousoku
(注)2.司法制度改革推進本部 ADR検討会 資料20-1検討状況整理案
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai20/20siryou1.pdf
 ADR検討会全議事録並びに資料等
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/03adr.html
 鑑定協会のH15.9.29開催ADR検討会における意見表明(H15.9.24付・資料22-7) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai22/22siryou7.pdf
『 第40回(社)日本不動産鑑定協会総会質問通告 (全文公開) 』
(社)日本不動産鑑定協会 会長 横須賀 博 様
2004年6月8日           
(社)岐阜県不動産鑑定士協会・会員 森島信夫
 ADR問題への対応に端を発して、不動産の鑑定評価に関する法律の在り方が大きく問われている今こそ、法の全面改正を目指してゆくこと、或いは不動産鑑定士法設立を訴えて行くことは、不動産鑑定士並びに日本不動産鑑定協会にとって焦眉の急であろうと考えます。
 また、不動産鑑定士が隣接法律専門職者として、真正面からADRに関与することは、不動産鑑定士の立脚する社会的位置をより明確なものとし、その存在感をさらに高め拡大することになると考えます。
 私は、不動産鑑定士は、三つのSを磨くことが大事であろうと考えます。
一つは、不動産の専門家としての確固たるスピリットであり、一つは社会経済事象に対する鋭敏なセンサーであり、今ひとつは社会経済事象を的確に分析するセンスであると考えます。また、協会会長並びに役員諸兄にとって重要なことは、山積する政策課題に優先順位を与えることにあろうと考えます。
 その意味において、法並びに協会設立後40余年を経た今こそ、法制定や鑑定協会設立の経緯にとらわれることなく、「総合法律支援法第三条」や「ADR検討会資料20-1、論点35、○内容(確認基準・確認取消等)」が示す、外形的基準を満たすべく務めることこそが、現下の最優先課題でなければならないと考えます。
 さらにこのことは、現に不動産鑑定士である我々だけの問題ではありません。今後に不動産鑑定士を目指すであろう後輩達のために、今こそ積年の弊を打破する時なのであり、現に不動産鑑定士である我々の果たさねばならない責務であろうと考えます。
質問事項.1
 以上、ADR問題に関して、鑑定協会を取り巻く昨今の状況を、会長は如何にお考えでしょうか、所信をお聞かせ下さい。
 続いて、企画委員会事業報告案の内、5.不動産鑑定法改正への対応について質問します。この問題はADRへの参画を前提に検討された事に関する報告ではあるが、ことは単にADRに参画する態様に止まらず、不動産鑑定士の社会的位置付け、並びに社会的認知度に大きく関わるものと考えます。
 そこで、以下の質問を致します。
質問事項.2
 報告案が「現行法が業者も対象に含めているのは、制定の経緯があってのものであって本質的には他の資格者法と違わない」とする事項について。
 この法制定の経緯とその所産は、今も好ましいとお考えなのでしょうか、それとも今や好ましくないものとお考えなのでしょうか、所信をお聞かせ下さい。
質問事項.3
 報告案が「質問事項.2に指す、本質的には他の資格者法と違わない」とする事項について、本質的とは、具体的に何を意味するのかお聞かせ下さい。
 私は弁護士法、公認会計士法、税理士法等他の資格者法と、不動産の鑑定評価に関する法律とは、第一条からして明らかに異なる法令の構成、士登録要件、士会構成要件等を示していると考えます。それでも本質的に違わないとは何を指して云われるのでしょうか、客観的・外形的判断基準を示した上で、具体的に所見をお聞かせ下さい。
質問事項.4
 報告案には「実質的に高度な倫理性を有する団体であるか否かが問題とされるという意見に集約されました。そしてADR機関の認定に当たっては、団体に関する法律の形態ではなく、実質的に高度な倫理性を有する団体であることを説明してゆけば足りる」とありますが、
 この見解は、我々鑑定協会の内部認識に過ぎません。また、「高度な倫理性を有する資格者で構成される団体」という表現ならまだしも、利益追求を目的とする営利法人を内在させておきながら「高度な倫理性を有する団体」という表現が社会に容認され得るものなのでしょうか。所見をお聞かせ下さい。
 さらに、ADR機関の事前確認或いは認証については、確認(認証)主体が判断を下すものであり、「説明云々」などという鑑定協会の希望的観測に左右されるものではありません。
 まさに外形的に判断が可能な客観的確認基準が求められているのであり、ADR検討会・論点に云う、確認後の対象業務の継続性を担保するためにも、加入脱退自由の社団法人や中間法人であってよいとは、とても理解できません。 これは、代理権についても同様であろうと考えますが、この件について、会長はいかなる見解をお持ちでしょうか、所見をお聞かせ下さい。
質問事項.5
 ADRの主宰・代理行為等に係わる弁護士法第72条の特例について。
現行の不動産の鑑定評価に関する法律において、個別業法の手当が現行の士業併存という法律構成のもとで可能であると、解される根拠を具体的にお聞かせ下さい。
質問事項.6
 「社会保険労務士について、依頼者の側に立った業務・・云々」は、不当な誹謗中傷ととられかねない文言であると考えます。
 社会保険労務士法を読むまでもなく、社会保険労務士は常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行い、もって、労働者等の福祉の向上に資するものであります。
 しかるに、「公正・中立ではないとの批判を受けているケースもあること等から」などと、他の資格者団体に関して品位に欠け誤解を招きかねない文言を、鑑定協会総会議案という、いわば鑑定協会最高位の公式文書に軽々に掲載するという、その行為自体が鑑定協会の高度な倫理性を疑わせるものではないでしょうか。 会長の所見をお聞かせ下さい。
 以上、様々な問題点や疑問点並びに対外的に批判を浴びかねない文言を含む文書であると同時に、H15.9.29開催のADR検討会において鑑定協会が表明した意見内容(H15.9.24付・資料22-7)と企画委員会報告案とは明らかな齟齬をきたしていると考えます。
 私は、「1.企画委員会 5.不動産鑑定法改正への対応について」は、定款第28条一項に規定する同意が得られれば事業報告案からの全文削除を求めて、質問を終わります。

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