基本姿勢は何処に

【茫猿遠吠・・立脚すべき基本姿勢・・04.10.05】
取引事例収集新スキームの試験運用実施予定日(2005.04.01)まで残すところ半年となった今も、斯界で語られることの多くは、取引事例の開示範囲であり、開示方法であり、作成者問題であり作成方法である。
それらは全て鑑定業界或いは鑑定協会マターであり、それ以前に実現或いは解決されなければならない問題の存在を、直視しようとする姿勢に欠けるようにみえる。


先ず第一に行うべきことは、「プライベートポリシー」を公表し、「コンプライアンスプログラム」を制定し実施することであろうと考える。
それらが実行されることにより、自ずとそれらの枠内において「事例収集新スキーム」が実施されてゆくものである。個人情報保護ガイドラインを遵守したスキームが実行されて行けばよいのであり、取引事例作成業務自体は鑑定士固有の業務であり、今さらに云うべきものは多くない。
しかしながら、取引事例作成業務の全面的デジタル化と協業化は、鑑定評価の資料という基盤(インフラ)を共有化、共通化するものである。
であるからこそ、取引事例作成業務の更なる効率化と精緻化を図ることにより、地価公示を始めとする鑑定評価の精度向上を目指すものでなければならない。
同時に、取引価格情報の開示により、市場の透明化、取引の円滑化・活性化等が図られるものでなければならない。
プライベート・ポリシーとコンプライアンス・プログラムについて、経済産業省ガイドラインは、以下のように述べている。
「経済産業省個人情報保護ガイドラインより」
Ⅴ.個人情報取扱事業者がその義務等を適切かつ有効に履行するために参考となる事項・規格
個人情報取扱事業者は、その事業規模及び活動に応じて、個人情報の保護のためのコンプライアンス・プログラムを策定し、実施し、維持し及び改善を行うことが望ましい。
また、個人情報取扱事業者は、以下の事項を参考として「個人情報保護に関する考え方や方針に関する宣言(いわゆる、プライバシーポリシー、プライバシーステートメント等)」を策定し、ホームページへの掲載等により公表することが望ましい。 「引用終わり」
プライバシーポリシーに関する私案は、本記事末尾に掲載するが、コンプライアンス・プログラムに即した事業遂行とは、組織的安全管理措置、人的安全管理措置、物理的安全管理措置、技術的安全管理措置を具体化すると同時に、それらについて不断の実施管理であり外部監査であり、改善なのである。
また、これらの問題を考える上で、その基本的姿勢として、不動産取引情報及び取引価格情報というものは、どこまで保護されるべき或いは守秘されるべき個人情報かということを考えるのも重要である。
このことに関連して、憲法十一条と十二条は以下のように規定する。
第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
また個人情報保護法は、その一条において以下のように規定する。
第一条  この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。
つまり不動産取引情報というものは、「規制改革・民間開放推進三カ年計画・04.03.19閣議決定」に述べるとおり、社会にとって有用なものであり広く開示されなければならないものである。
同時に個人情報等の保護に対する国民意識にも配慮しなければならないという、二面性を有している点に留意してゆくことが重要なのである。
・・・・・・補足です・・・・・・
一、プライバシーポリシー「セキュリテイ宣言(案)」
セキュリティは、情報ネットワーク社会の大前提である。
(社)G県不動産鑑定士協会は自らに課している厳しいセキュリティ管理が、県民の皆様のセキュリティ向上とベネフィットにつながるというビジョンのもと、それを実現するために「(社)G県不動産鑑定士協会プライベートポリシー」を公表致します。
「情報保護方針」
当士協会では以下のとおり〔情報保護方針〕を定め、個人情報の適切な保護に努めます。
1.情報の適切な生成、収集、利用及び提供を行います。
2.情報への不正アクセス、情報の紛失、破壊、改ざん及び漏えいなどを防ぎます。
3.情報に関する法令及びその他規範を遵守します。
4.情報保護に関する規程類を整備し、継続した改善を行っていきます。
5.当士協会は、この方針を文書化し本規程の全ての適用対象者に周知します。
「個人情報利用目的」
当士協会は、ご提供いただいた個人情報につきましては、下記の目的の範囲内で取り扱いさせていただきます。
・地価公示、地価調査を始めとする鑑定評価の基礎資料として利用することにより鑑定評価全般の精度を向上し、もって適正な地価の形成に資するよう務めます。
・不動産市場の推移動態分析資料として利用し、分析結果を開示することにより県民の皆様の便益向上に努めます。
・上記の他、鑑定評価の進歩向上並びに、不動産取引市場の透明化、取引の円滑化・活性化に資する利用を行います。
当士協会は、ご提供いただいた個人情報につきましては、上記利用目的を達成するため、業務委託先又は提携先に預託する場合がございます。
また、法令等に基づき、裁判所・警察機関などの公的機関から開示の要請があった場合には、当該公的機関に提供することがございます。
(社)G県不動産鑑定士協会は以上の方針を改定することがあります。その場合すべての改定はこのホームページで公表いたします。
二、コンプライアンスプログラムの外部監査について
情報セキュリティ監査制度の運用開始について
◆ 本件の概要:
昨年9月から情報セキュリティ監査研究会を開催し、最終的な報告書を確定。
来る4月1日から「情報セキュリティ監査制度」を運用開始。
◆ 担当: 経済産業省商務情報政策局 情報セキュリティ政策室
◆ 公表日: 平成15年03月26日(水)
◆ 発表資料名 : 1. 情報セキュリティ監査制度の運用開始について(PDF形式:782KB)
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003848/0/030326isecurity.pdf
情報セキュリテイ監査企業台帳
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/is-kansa/
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
茫猿が事例収集新スキームで、ここまでしつこくキャンペーンを張っている真意は何かといえば、取り敢えずは地価公示のさらなる精緻化にある。
近年、公示価格について兎角の世評が聞こえてくる。
的はずれもあるが、一面の真実をついている批評もある。
鑑定士のなかにも、地価公示はその役目を終わったという人もいる。
しかし考えてみれば、鑑定評価制度は地価公示制度と二人三脚で始まったものであり、公示制度が発展的解消や転換をするのであればともかく、不要論や無用論の果てに消滅するとあれば、鑑定士への信頼感とか存在意義というものは一体全体どうなるのであろうか。
また、ことは地価公示にとどまらず、地価調査や固定資産税標準宅地評価に及ぶことは必然の理であろう。昨今話題の競売評価やADRとて同様であろう。
収益価格重視時代であり、証券化ビジネスや時価会計に眼を奪われているが、鑑定士の基盤は依然として地価公示とその付随業務にあることを忘れてはならないと思うのである。同じく収益価格重視の風潮が蔓延するからこそ、取引事例と比準価格の存在意義が問われると考えるのである。
その文脈から、しばらく前に比準価格を偏重し収益価格を軽んじた轍を踏んではならないと考えるのである。

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