終わりは始まり

【茫猿遠吠・・終わりは始まり・・04.10.20】
 事例収集新スキーム案件は一段落しました。
勿論のこと、まだまだ骨格が姿を現しただけであり、会員意志の結集、事業研修、ネットワーク構築事業や事業実施要綱の作成など、成さねばならない多くの案件が残されています。


 でも、茫猿としては、06/15鑑定協会総会、07/21虎ノ門パステラル会議などに端を発した一連の案件が一つの段階に達したという感慨を得ています。
思い返しますと、03/20/1999に会長選挙立候補挨拶を全国発信しました。
この時の公約はこのようなものでした。
1.対外活動の強化
2.コンピュータネットワークの整備充実
3.土地情報収集体制の充実(悉皆調査実施事業)
4.地図情報システムの導入
5.鑑定士協会連合会の在り方
 それから5年余を経て、その全てが実現に向かう訳ではありませんが、二番目と三番目は、大きく実現の方向に一歩踏み出しました。それに少しでも関われたという幸せを噛み締め、感慨深いものがあります。
 しかし、これで終わりではありません。いいえ、一つの終わりは次の始まりです。一番目の項目は鑑政連改革を通じて関われるでしょうし、四番目の項目はかねてから何度も記事にしているように、今回の事例収集新スキームの発展系として実現されねばならないと考えます。
 五番目の項目も士法検討活動を通じて、模索を続けねばならないと考えます。
 『鄙からの発信』05/15/1999記事 「終わりは始まり」を今改めて読み返しています。終わりは始まりであろうと、思いを新たにしています。
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=985098852
 さて、数ヶ月前にこのサイトで話題にしたADR問題並びにその他の懸案についての近況をお知らせします。
『ADR問題経緯』
04.10.12 司法改革推進本部にて隣接法律専門職種のヒアリング開催。
04.10.12 ADR関連基本法案について閣議決定、今国会上程。
04.10.13 自民党司法改革調査会に横須賀会長、清水副会長他出席
04.11.02 鑑定協会常務理事会にて、ADRセンター設立案上程予定
 早ければ、年内に法案成立、鑑定ADR機関設置と進められる状況です。
『士法検討委経緯』
 士法検討委員会は11/06に第二回委員会を開催し、年内答申を目指して答申草案造りに着手することとなりました。現行法支持委員、士法制定支持委員、折衷案というか漸進論支持委員、それぞれの溝は埋めがたいものがあり、多分各論並記答申となるでしょう。その後は会員各位が考えることです。
『鑑政連改革委経緯』
 鑑政連改革は、狭義的には会費納付率を向上させることにありますが、広義的には鑑政連の活動目標を明確に透明にすることにあろうと考えます。
ただ金を多く集めればよいというものではなく、同時にロビー活動の在り方そのものの透明化が問われていることは、日歯連問題を見ずとも自明のことでしょう。そのことは同時に、鑑政連が単なる献金団体から広義の政治団体へと脱皮して、広汎な政治活動を行うということに他ならないのではと考えます。
 つまり、鑑定評価広報の支援であり、業務基盤の拡充支援であると考えます。
それは別の観点からいえば、公益法人に業務推進拡充委員会なるものを存在させているヌエ的な体質から脱却して、業務拡充推進は鑑政連の活動に委ねると云った基本的方向転換を伴うべきものではないかと考えます。
『カウンセラー会の今後』
 カウンセラー会は、その発足動機にやや不純なものが介在しており、(財)不動産近代化センターが認証する「不動産コンサルティング技能者」に対抗して業益を確保しようと云う姿勢はともかくとしても、鑑定士制度の別に屋上屋を重ねるといった趣が内在していたことから、鑑定業界全体の支持は得られず、会員数は減少しつつあり、当初に拠出された基本財産も残り僅かと聞いています。
 同時に、今回の鑑定評価法改正により、第二条の二、2項に
「不動産鑑定士等は、不動産の鑑定評価を行うほか、不動産の客観的価値に作用する諸要因に関する調査若しくは分析を行い、又は不動産の利用、取引若しくは投資に関する相談に応じることを業とすることができる。」と加えられましたことから、カウンセラー制度の存在意義が低くなったことは否めないことであるし、カウンセラー会もその歴史的存在意義を全うしたと云えましょう。
※鑑定法改正について(国交省サイト)
http://tochi.mlit.go.jp/tocchi/20040602/20040602a.html
『事例収集提示新スキームの今後の課題』
1.内部調整システム
 今回のスキームは、あくまでも取引事例を収集し属性データを附加して国交省に提示するという事業である。その利用について大枠は示されているが、士協会内部でどのように取り扱うかは今後の課題である。
 既に述べてきたように、事例カードを作成する会員とそれを利用する会員は必ずしも利害が一致しない。この「作る人と使う人の利害調整システム」の確立は、士協会内部での閲覧システムの確立と併せて急務であると云える。
2.地図システムの採用
 地図システムが急速に進歩しているのは、最近のDVD利用「カーナビ」を見れば直ぐに理解できることである。この最新システムを事例作成或いは閲覧利用に際して採用しないという手はない。これも早ければ早いほど佳いのである。即ち、こういったシステムは鑑定評価に合わせたカスタマイズと実際利用に際してのチューニング(細部調整)が不可欠であることから、利用すればするほど効率化と精度向上が図れるからである。
3.収益を生むビジネスモデルの構築
 今回の新スキーム実施で、ただ単に取引事例が増えるだけでは、その意義が半減してしまうのである。これを基盤として収益を生むビジネスモデルの構築が待たれるのである。茫猿自身、現在では漠然としたモデル案しか用意できていないが、Web Site 利用を併用すれば必ず収益力の高いビジネスモデルが構築できると信じているのである。
「信じる者は救われる。 ~\(^_^)/~ 」
4.比準価格の手法変化
 当初からの読者は御理解頂けると思うが、デジタルデータの充実は、時点修正処理、数値化比準処理、統計解析処理手法等を駆使することにより、大量データを解析して地価推移率を試算したり、地価水準帯域を試算したりすることが可能となるものであり、それは比準価格の精度向上に大きく寄与すると考えるのである。
「いつの時代にもコロンブスの卵は存在する。 ~\(^_^)/~ 」
5.最後に、安易な判断は危険であり、終わりは始まりであること
 収集された取引事例の目的外使用について、安易な判断は危険である。
特に我田引水的な業界内判断が最も危険である。
「補償コンサルタント土地評価業務等の鑑定評価付随分野利用については構わないのでは」という主務官庁筋の見解があるやに側聞するが、保護法第15条や第23条の趣旨からして、即断は危険であろうと考える。
 問題は当事者が目的内利用と受けとめるか否かであり、最悪の場合は訴訟提起も予想しておく必要がある。その場合に、制度基盤が異なる鑑定業界全体の利益と補償コンサルタント業界の利益は必ずしも一致しないのではなかろうか。
 さらに、もっと留意されてよいであろう問題として、賃貸事例収集事業がある。個人情報保護法は成約賃料情報にも及ぶものであろうから、法施行後は仲介業者等から成約賃料情報が得難くなるであろうと予想できる。その対応策について無関心であってはならないのであり、取引事例収集スキームと並行して賃貸事例収集スキームについても検討を開始する必要があろう。この件に関してはINDEX作成事業に既に着手し、並行して収益INDEX基礎資料である賃貸事例収集システムを稼働させている幾つかの士協会事業が参考となるであろう。
(注)法人間賃貸借資料は保護法の対象とはならない。

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