価格情報提供制度の課題

【茫猿遠吠・取引価格情報提供制度創設の課題・04.11.10改訂】
一、序論
取引事例収集新スキーム案は、「取引価格情報提供制度創設」に関わる事案であり、鑑定評価の根幹に触れる問題でる。或いは鑑定評価に一大変革をもたらす問題でもあるとも云える。この認識の多寡について不動産鑑定士の判断は分かれるであろうが、重要な問題であるという認識に大差はないであろう。


それにしても、未だに多くの鑑定士に気付かれていないのではと懸念するのは、今回の事例収集新スキームは単に取引事例収集に止まらないという認識である。大袈裟に云えば(茫猿自身は決して大袈裟とは考えていない。)、鑑定業界を変える可能性や鑑定協会を変える可能性を潜めているのである。
即ち、事例収集新スキームがもたらすであろう「従来型事例収集スタイル」からの訣別、鑑定業界ネットワークの新規或いは再構築、そして士法制定にまでつながる可能性を秘めるものとして、個人情報保護安全管理問題が挙げられる。(個人情報保護法 2003.05.30公布、部分施行、2005.04.01全面施行)
新スキームを採用することなく、現状の事例収集を継続していたとしても、2005年4月以降には日本鑑定協会及び全国都道府県鑑定士協会は個人情報取扱事業者となるであろうことは自明といえる。少なくともその自覚が求められるであろうと予想される。既に取扱事業者である士協会も多数存在するであろうと考えられる。
また、新スキーム案に限らず、一次情報である土地取引異動情報は、紛れもなく個人情報であると考えます。取引価格情報は取引当事者情報を含まなければ、個人情報の範疇外かもしれません。
しかし、取引対象不動産の情報をキーとして取引当事者に到達できれば、「機微情報(センシティブ情報)」になる可能性は高いと考えます。
現時点で、その対策準備や如何と問われているのである。
法34条、法56条、法58条の規定を見るまでもなく、残すところ四~五ヶ月の間にそれらの準備を整えることができるか否かを考えれば、鑑定協会並びに士協会にとっては、現下の最優先課題であると云って過言ではなかろうと考える。
只今では、多くの鑑定士諸氏は事例収集スキームによる業務負担増と、その鑑定協会内(業界)内開示範囲にのみ関心が向いているようである。
しかし、今回のスキームは法務省から提供を受ける「行政情報であるところの個人情報」を事業のスタートとするものである。民間会社が自社の事業遂行過程で蓄積された個人情報を如何に管理するかという問題とは、スタートラインが大きく異なっているという点に留意すべきである。
ことの成否、業務実施に際しての諸問題に関わる影響は、国交省並びに法務省に及ぶものであるという認識の、有りや無しやが問われている。同時に、個人・法人の集合体である鑑定協会や士協会が単一企業以上に有効な対策を準備できるか否かが問われている。
更にいえば、実は最も大事な点が見過ごされているとも云えるのである。即ち、今回のスキームは地価公示の事例収集が目的ではなく「取引情報の開示」が目的なのである。「地価公示の事例」というのは、事業の一面にしか過ぎないことに、不動産鑑定士は深く留意すべきである。(後記、取引価格情報の開示についてを参照)
別の云い方をすれば、個人情報保護法に対処する方策(同、ガイドライン対応策)からスタートすれば、自ずと全体像が見えてくると云えるのである。
其処に見えてくる、新スキームの課題は次の四項目である。
課題1、個人情報保護法ガイドライン対策 『第一優先順位』
課題2、鑑定協会オンラインネットワークの構築 『第二優先順位』
課題3、新スキームに対応したデジタル化事例作成処理 『第三優先順位』
課題4、土地取引情報公開と鑑定士のレーゾンデートル 『包括的課題』
※取引価格情報の開示について 『所管:国交省 土地情報課』
取引価格情報の開示は、「規制改革・民間開放推進三カ年計画・04.03.19閣議決定」において、重点計画と定められた項目の一つである。
⑭不動産取引価格情報の開示[重点・住宅1(1)(国土交通省、法務省)]
正確な取引価格情報の提供は、市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るために早急に実現しなければならない重要な政策課題であり、このような制度を、個人情報等の保護に対する国民意識にも配慮しつつ構築し、さらに充実していくためには、幅広い国民の理解が得られるよう、実施上の課題も含めて、実績を通じて検証していく必要がある。このため、以下の施策を講ずる。
a 国土交通省は、法務省と連携し、現行制度の枠組みを活用して、取引当事者の協力により取引価格等の調査を行い、国民に提供するための仕組みを構築する。(平成16年度措置・国土交通省)
b 上記の仕組みに基づき、取引当事者の協力により取引価格情報の調査・提供を行う。(平成17年度措置・国土交通省)
c 価格情報の正確さが確保されること、個人情報保護の観点から情報提供方法に関する技術的側面が解決されること等を実績を通じて検証し、この結果等を踏まえ、取引価格情報提供制度の法制化を目標に安定的な制度の在り方について検討し、結論を得る。(平成18年度検討、結論・国土交通省)
上記閣議決定に至るまでの経緯については、平成15年7月30日・国土交通省土地・水資源局土地情報課発「不動産取引価格情報の提供制度の創設」に関する意見募集について以下が参考になります。
「扉を開けよう~不動産取引価格情報の提供制度の創設について~」
「土地情報ワーキンググループ(中間とりまとめ)今後の土地情報政策のあり方」
「土地情報ワーキンググループ 中間とりまとめ」(概要)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/03/030730_.html
意見募集の実施結果について(平成15年12月19日)
http://www.mlit.go.jp/pubcom/03/kekka/pubcomk030730_.html
土地情報WGの企画部会への報告
http://www.mlit.go.jp/pubcom/03/kekka/pubcomk030730/01.pdf
二、個人情報保護法ガイドライン 『課題1』
個人情報保護法ガイドラインについて、現時点では経済産業省が公表するガイドラインのみが提示されている。国交省は未提示であるが、基礎とする法律が同じであることを考えれば、大きな差異は多分生じないであろうし、前述の通りスタート地点が行政情報であることを考えれば、経済産業省ラインをミニマムラインと考えておけば大過ないであろう。
経産省ガイドラインは、解説なども含めればとても大部である。
ガイドラインの解説が本記事の目的ではないので、ガイドライン詳細は添付のURLから閲覧して頂きたい。
茫猿は、このガイドライン中、我々鑑定士が着目すべき点は四個所と考える。
『経産省ガイドライン 21頁以下 安全管理措置4項目』
※経済産業省個人情報保護法ガイドライン
http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i40615hj.pdf
※個人情報保護法
http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/houseika/hourituan/030307houan.html
1.組織的安全管理措置
組織的安全管理措置とは、安全管理について従業者(法第21条参照)の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規程や手順書(以下「規程等」という)を整備運用し、その実施状況を確認することをいう。組織的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)個人データの安全管理措置を講じるための組織体制の整備
(2)個人データの安全管理措置を定める規程等の整備と規程等に従った運用
(3)個人データ取扱台帳の整備
(4)個人データの安全管理措置の評価、見直し及び改善
(5)事故又は違反への対処
2.人的安全管理措置
人的安全管理措置とは、従業者に対する、業務上秘密と指定された個人データの非開示契約の締結や教育・訓練等を行うことをいう。人的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)雇用及び契約時における非開示契約の締結
(2)従業者に対する教育・訓練の実施
3.物理的安全管理措置
物理的安全管理措置とは、入退館(室)の管理、個人データの盗難の防止等の措置をいう。物理的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)入退館(室)管理の実施
(2)盗難等に対する対策
(3)機器・装置等の物理的な保護
4.技術的安全管理措置
技術的安全管理措置とは、個人データ及びそれを取り扱う情報システムへのアクセス制御、不正ソフトウェア対策、情報システムの監視等、個人データに対する技術的な安全管理措置をいう。技術的安全管理措置には、以下の事項が含まれる。
(1)個人データへのアクセスにおける識別と認証
(2)個人データへのアクセス制御
(3)個人データへのアクセス権限の管理
(4)個人データのアクセスの記録
(5)個人データを取り扱う情報システムに対する不正ソフトウェア対策
(6)個人データの移送・通信時の対策
(7)個人データを取り扱う情報システムの動作確認時の対策
(8)個人データを取り扱う情報システムの監視
(注)サーバーに直接接続する端末機では、FD、MO、CD-Rなどの利用が禁止されること。オンライン端末(クライアント機)では閲覧、ダウンロードのデータ量、回数が管理制限されることも忘れてはならないことである。
以上、四項目の内、常識的に理解できるのは、1~3であろう。
読めば理解できることであり、同時に充分に安全措置が図られてきたか否かの検証も容易であろう。専門家の指導を得て早急に対策を講じなければならないことでもある。
組織的問題は、規約規定等の整備に関わる事項であり、既にインターネット等で開示されつつある標準規約を用意すれば、各単位会はひな形に応じた整備を行えば足りるであろう。当然のことであるが規約等整備だけではなく、遵守姿勢(コンプライアンス・プログラム)が最も問われることは云うまでもない。
人的問題に関して云えば、「企業を含む協会会員構成でよいのか」という視点も等閑にはできないであろう。
保有情報の全てが漏洩しなくとも、或いは全てを閲覧できなくとも、一部事例の照会でも、目的外使用に当たれば問題を生じると考えるべきである。
記憶に新しいところであるが、社会保険庁で小泉総理の厚生年金加入記録を、多くの職員が閲覧照会してマスコミなどにリークしたと同じことが起きる可能性がある。 ある土地を誰が、どの企業が、買収したか売却したかという情報は、使い道如何では重要な情報になり得るものである。
さらに、個人情報保護に万全の対策をとっていると、社会に認知される客観的外形基準とは何か、それを充足するために何をすべきかという視点も忘れてはならない。具体的には鑑定評価部門と他事業部門との社内ネットワークの遮断であり、鑑定士協会につながるオンライン端末のガイドラインに即した管理が行われているか、行い得るかということである。
個人情報について、鑑定評価以外の目的外使用を許さない、もしくは目的外使用との誤解を招かない安全措置がとられているか否かということである。
物理的安全管理措置に関して云えば、(組織的、人的措置も同様であるが)どのような漏洩防止対策をとっているのかと、本人(個人情報により識別される特定の個人)から問われたときに今の状況では、答えようがありません。
特に、協会会員事務所での漏洩防止策はお寒い状況です。
(他所は知らず、岐阜においてのことです。)
各会員が利用するパソコンの第三者アクセス防止策、パスワード設定対策、従業員の訓練・教育、誓約書提出等対策、アクセス許可事務所監査対策等が未整備な状態で、外部から異議が申し立てられたら、対応できません。
安全対策のポイントは漏洩事故を起こさないことにありますが、
情報提供者本人から苦情申立が出た場合に、適切な対応ができない状況を放置することは許されません。(未対応で事故を起こせば管理者の未必の故意が問われる可能性があります。)
4番目の技術的安全管理措置は、理解が困難で難しそうであるが、その対策実施に関して、実は以外と簡単ともいえる。
つまり、この項で列挙される事項は、イントラネットやVPN及びデータ閲覧・入力システムを構築する際に、自動的または必然的に生じる問題であり、正しく構築すれば解決できる問題であると云えるものである。
IDとパスワード、指紋認証システム、アクセス・ログ管理、閲覧・ダウンロード制限等で大半が解決できるし、解決可能な事項ばかりといえる。
別の観点から云えば、「事例収集新スキーム」を検討する際に、
・アンケート照会票の書式、
・鑑定協会内における回収データの閲覧開示範囲、
・公示事例カードとその他取引事例カード(全数事例カード化)の作成書式
・或いは作成者、さらにはそれら資料の鑑定協会内閲覧範囲
といった問題に、議論が終始しているのが現状であるが、実はガイドラインに準拠した情報基盤(情報インフラ)整備を行うことが先決課題であり、今論じられているような事項は、その後に検討すればよいし、その後に検討した方が打開策が見つけ易いといえるのである。
このあたりは、別添のスキームフロー案を参照して頂きたい。
尚、ガイドライン関係で見逃せないのは、法23条1項関連で、同一事業者内で他部門(鑑定評価部門以外)へ個人データを提供することは、利用目的が逸脱すれば提供禁止対象となることである。
同時に、法施行時期との関係からは、2005年度地価調査に伴う事例収集作業及びその管理は個人情報保護法の規制下にあることに留意し無ければならない。表現を変えれば、事例収集新スキームを05年度当初から実行しようとしまいと、保護法ガイドラインに準拠した事例収集管理体制を確立しなければならないということなのである。
三、鑑定協会オンラインネットワーク構築 『課題2』
個人情報保護法ガイドラインを理解すればするほど、安全管理措置を実現するには、オンラインネットワークによる取引情報管理並びに事例作成に他ならないという結論に到達するのである。それは同時に個人情報保護法に関して、鑑定士のコンプライアンスも高めてくれる有効な対策であるとも云える。
鑑定協会ネットワークについて、本記事ではふれない。
過去に『鄙からの発信』に掲載した記事の参照をお願いするものである。
尚、鑑定協会と各都道府県士協会とのネットワーク構築は、士協会と会員のネットワーク構築に相似するものであり、その構築は士協会ネットに準拠すればよい。
茫猿の経験から振り返ってみても、各都道府県不動産鑑定士協会におけるネットワーク構築を先に進めようとすれば、会員の理解を得るのに時間を費やさざるを得ない。しかし、日本鑑定協会と都道府県士協会とのネットワーク構築にはさほどの時間は要しないであろう。鑑定協会が整備し各士協会がブロードバンドに加入し端末を備えれば済むことである。将来の利用効率を考えて、初期投資をどう図るかは各士協会の自己責任に任せればよいことである。
岐阜県士協会では、会員の情報基盤ネットワークであるWANを整備し運用を始めて十年近くになります。WANでは、グループウエアも利用しています。
そして、本年度よりはWANを進化させて、B.B-WANとして運用を開始しています。
※B.B-WAN ブロードバンド ワイドエリアネットワーク
【茫猿遠吠・・岐阜会のブロードバンド化・・04.04.21】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=1082479745
【茫猿遠吠・・ブロードバンド化-2・・04.04.25】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=1082913919
【茫猿遠吠・・ブロードバンド化開始・・04.08.04】
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=1091557408
【茫猿遠吠・・岐阜県士協会の現況・・01.09.30】 ※グループウエア
http://www.morishima.com/cgi-bin/np_boen/newspaper.cgi?action=view&code=1001706515
四、技術的な問題、或いは採用したい新技術 『課題3』
採用したい新技術としては、マップシステムについて簡単に行程を述べる。
なお、この行程は岐阜県士協会有志WGに於いて、既にプロトタイプのデモ検証などが始められているものである。岐阜会WGでは、地図情報システムの利用による、事例作成の効率化は是非とも導入したいと考えている。
そして、統一された電算処理基準による属性情報の取得(電算処理が原則)を行いたいと考えている。
行程は次のようになる。
・二次データ(回収データ)の士協会配布(オンライン配布)
・地図システムにより位置図作成、同時に属性要因取得
・事例作成担当評価員へ作成地点の割り当て
・現況調査、写真撮影、公図取得、建物調査 建物要約書取得。
・公図のデジタル化を行う。事務局もしくは会員が行う。
・地図システムで取得した属性要因を評価員が検証する。
・全ての属性情報をデジタル化した公示等事例カードの作成。
(注)地図システムによる位置図作成とは、ジオコードの利用による、所在地の座標軸情報(緯度、経度情報)の取得である。
※ジオコード
http://www.alpsmap.jp/software/geo/feature/
※GISマーケティングソリューション
http://www.jps-net.com/soft/808/
※住所ジオコード
テキストファイルやマイクロソフト Excelなどで作成された漢字住所リストを読みとり、緯度・経度情報を自動的に付加し、地図上に表示することを可能にするソフトウェア。
街区レベルのポイントは、国土交通省・街区レベル位置参照情報のダウンロードデータを利用しています。
ジオコード
都道府県や市区町村に対して付けられた行政コードや、国勢調査の調査区、郵便番号区、小学校の学区域、選挙の投票区などのように、地理的な情報を文字や数字のデータとして収集管理するために、対象地域を領域分割し、各領域に一定の規則に従って付けるコード番号体系。
※事例収集新スキームのフローチャート
掲載するフロー図は、茫猿の作成するものであるが、関係者や識者の意見を聞いて作成するものでもある。
※事例収集新スキームの全体フロー図・茫猿試案
http://www.morishima.com/cgi-bin/k_data/pdf/bin/bin040915105823004.pdf
※同、士協会内フロー図・茫猿試案
http://www.morishima.com/cgi-bin/k_data/pdf/bin/bin040915105854004.pdf
五、鑑定士の見識と矜持 『課題4』
「問われる鑑定士の見識と矜持」という観点から、この「事例収集新スキーム」をどのように考えたらよいのであろうか。
今さら云うまでもないことであるが、鑑定評価にとって事例資料(取引・賃貸・建設等)は、評価の基礎を成すものであり、資料の質と量が鑑定評価の成否を決めると云っても過言ではなかろうし、鑑定評価の根幹を成すものと云ってよい。
『既に、本サイトで何度も述べたことであるが、地価公示や地価調査のさらなる精度向上という観点から、悉皆調査資料は大変に有用な資料であり、多面的に活用されるべきものである。つまり、法務省提供の土地取引情報の効果的な活用という側面も忘れてはならない。』
だから、鑑定士の「米櫃」ともいえる事例資料について、真摯に取り組むべきことは云うまでもない。同時に今回の問題は、「土地取引情報の開示、価格情報の開示を経て社会に貢献する。」という、「鑑定士の社会還元」という一面を有していることに留意しなければならない。
すなわち、土地価格情報の開示という社会還元を経て、鑑定士自身のレーゾンデートルが問われていると、考えるのである。
個人情報保護という側面と、一方ではより的確且つ豊富で利用価値の高い土地価格情報の開示が求められているのである。
茫猿が、オンラインシステムとマップシステムの採用を提言するのは、もとより鑑定士の負担を軽減し、より効率的に事例カードを作成するという目的があるのは当然である。と同時に、ことの一面であるそれら最新システムの駆使は、社会に還元する情報の質と量を拡充することにもつながるのである。
すなわち、五年後、十年後の不動産鑑定士の社会的位置、存在感というものに思いを馳せて、今回の問題に対処したいものである。
質・量ともに豊かな基礎データの取得、維持、管理加工が鑑定評価のフロンティアを開いてくれると、茫猿は信じるものでもある。
鑑定協会及び士協会内部において、開示の範囲や方法並びに対価などを論じるのは、事後の問題であるといえる。とは云っても、この問題が解決できないと、事例作成に尻込みしたり非協力的である会員が生じてくるのは避けられないであろう。とすれば、当面は「現行の地価公示事例開示体制の維持」、ついで「今後の開示範囲拡大を検討課題とする」でよいのでなかろうか。
単位士協会内で起こり得る問題は、事例カード作成者と利用者の人的乖離に関わる問題であろうが、これは基本的に対価をもって解決する問題ではなく、バーター処理が原則であろう。即ち、作成せざる者、利用すべからずである。
残余の問題は、鑑定士の良識に照らした、例外規定等をいかに設けるかであろうし、各士協会の良識ある判断に委ねる他はなかろう。

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