平澤春樹候補のご回答

<選管届出済>
2005.3.22
「鄙からの発信」からの公開質問状にお答え致します。
副会長候補者 平 澤  春 樹
一、優先課題
A.不動産鑑定業法から不動産鑑定士及び不動産鑑定法人が加盟する不動産鑑定士法への改正を行う。
B.(社)日本不動産鑑定協会の運営の効率化
C.不動産鑑定士ADRを充実させ、代理権の取得など業務拡大を目指す。
二、具体的施策及び概算予算
A.不動産鑑定士法への改正
 不動産鑑定士法への改正運動については、各地に仮称「不動産鑑定士法改正連絡協議会」を創設し、2年以内に方向性を見出す直接運動を展開します。
 士法への改正について基本的に反対という人はほとんどいませんが、ほとんどの人が「今更無理なのではないか」と諦めています。この様な事情から、士法改正については、現時点で協会の予算を使うことは適切でないと思いますので、全て、有志会員の会費及び資金カンパによってまかないます。(委員会費用、アンケート費用等は、別途予算化が必要。)
 現行法の不動産鑑定士補制度が廃止される平成18年3月頃を一つの目途とし、これに照準を合わせ、個別法の改正を必要とするADRの代理権の取得の運動とも連動させ、ADR法の実施運動を展開したいと思います。
 本年4月1日施行の「個人情報保護法のガイドライン遵守」にしても、いわゆる「新スキームによる取引事例収集」についても、国民社会的視点からは協会としてのコーポレートガバナンス、専門職業家としてのコンプライアンスの問題に行き着かざるを得ません。士法に変わったからといって明日からどうなるという問題ではありませんが、国民社会に対する外見上の情報発信と、協会内部におけるコンプライアンス及び構成員である個別鑑定士の倫理が同時に問われることとなります。(後述のとおり、個人情報保護法でも新スキームによる取引事例収集においても、失敗は許されません。)
 不動産鑑定士は、制度発足以来この問題を抱えてきましたが、40年間負け続けてきたために、負け組鑑定士は士法改正を諦めようとしています。短期決戦で集中的に取り組むことが必要です。40年間の社会情報の急激な変化によって、フローの風が吹いています。風が吹いているのに3年も5年も先に延ばすのは「やりたくない」と言っているのと同じことです。「やる気があれば必ずできます。」国交省に協力をお願いしながらも、議員立法も含め成立に全力を尽くします。
B.(社)日本不動産鑑定協会の運営の効率化
 鑑定協会の運営の効率化についても、基本的に反対の人はいないと思います。
協会の運営費のうち、事務局及び専務理事の人件費を除けば、役員会・委員会等のための交通旅費が相当額にのぼると推測されます。例えば、プロジェクト別に委員会を設置し、ワーキンググループを作り、テレビ会議やメールの交換によってたたき台を検討し、これを委員会で決定し、常務理事会、理事会の審議を2回に1回は書面審議にしただけでも、全体の交通旅費は半減します。
 過去の決算書の内訳を精査し、効率化についてのいくつかの提案をしたいと思います。
各理事、常務理事の発言内容及び審議内容を書面でアップデートに全会員を対象として発信することにより、会員判断の指標とする様な運営活動(内部広報活動の強化)をしたいと思います。
従ってこの件については、平成16年度より予算は削減方向となりますが、個人情報保護法及び新スキームによる取引事例収集の問題で、セキュリティ確立のための予算が緊急に必要になると思います。この部分では、増加せざるを得ません。
C.不動産鑑定士ADRを充実させ、代理権の取得など業務拡大を目指す。
 明治以来、各種隣接専門職等(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、弁理士等)が公式な形で一同に会することはありませんでしたが、先年8月、社会保険労務士、税理士、行政書士及び不動産鑑定士等を含む協議親睦団体である「士業団体交流会」が組織されました。一方で、ロースクール、裁判員、弁護士試験改革など、司法改革の推進によって歴史的な転換期を迎えています。
 各種隣接専門家集団は、自己の専門性を高めるための倫理高揚を図るとともに、各種隣接専門職種との協調、融合化を図りながらも、それぞれの政治団体を結成し、ADR代理権取得に向けて熾烈な競争を展開しています。
 ADRにおける代理権については、それぞれの個別法(不動産鑑定士の場合は不動産鑑定業法)の改正が必要とされています。
残念ながら、不動産鑑定士は制度発足から今日まで、上から(官から)仕事が降ってきたこともあってか、ADRに対する重要性の認識度は必ずしも高くありません。施行時点である平成19年6月頃までには、不動産業法の不動産鑑定士法への改正を図りながらADR代理権の取得の目途をたてたいと思います。
≪具体的な進め方≫
①家裁、地裁の調停人、借地非訟における鑑定委員、不動産カウンセラー、土地収用委員会などで培ってきた不動産価格や賃料を中心とする専門家の知見を結集し、
②ADR技法としてのメディエーショントレーニングを実施し、
③不動産鑑定協会としての機関ADRの実績を積み上げ、
④先行している司法書士、土地家屋調査士等と不動産相談型、任意型の合同ADRを立ち上げる。
⑤裁判所等の関係機関と協議し、借地非訟事件の前段階で不動産鑑定士機関ADRへ持ち込むバイパスができるよう制度要望し、
⑥土地収用における被収用者事前相談型のいわゆる行政型ADRへの可能性をも検討する。
⑦このためには、法律総合支援法による司法ネットにも積極的に参加し、国民的信頼を深める等の努力も必要と思います。
⑧ADRを充実させるとともに、業務拡充に結びつけてゆきたいと思います。
これらに要する概算予算は、進展状況にもよりますが、PRも含めて2年間で2,000万円位と試算されます。
三、個人情報保護法ガイドライン遵守について
 個人情報保護法は、選挙公約か否かに関わりなく、否が応でも4月1日から施行となっています。もちろんこの法律は不動産鑑定協会のみに実施されるものではありませんが、とりわけ、不動産の専門家集団として、失敗は許されません。当然、協会として対応をすべきと思います。
 個人情報保護法のガイドラインを遵守するためには二つの問題点があると思います。
一つは、コストパフォーマンスに留意しながらも、安全性の高いセキュリティを確保し、利用しやすいネットワークを構築することです。協会本部だけでなく、地方士協会も基本的には同様であり、本部にセキュリティがあっても士協会で漏洩してしまえば意味がありません。
二つ目は、コンプライアンスの問題です。どんなセキュリティ管理システムを構築したところで、これを利用し動かしているのは不動産鑑定士です。デベロッパーや不動産業者が混在して構成員となっている鑑定協会が内部でセキュリティ管理が確立していると言ってみたところで、一般国民からは「どこかに情報が抜けているのではないか」との疑念を持たれても不思議ではありません。ここでも、国民的に信頼できる不動産情報処理の専門家としての不動産鑑定士法への改正が、急務となるのです。もちろん、個々の不動産鑑定士が倫理をもってこれに臨むことは当然なことです。
四、いわゆる新スキームによる取引事例収集をして協会が行わなければならない最も重要な施策は何だとお考えでしょうか。
 いわゆる新スキームによる取引事例の収集は地価公示の枠組みの中で行われる制度設計となっていますが、昨年の通常国会に予定されていたのは、「取引事例価格情報の公開」という形で制度設計が行われたものです。従って、現在進行中のいわゆる「新スキームによる取引事例収集」は、地価公示法の枠組みの中で任意協力を求めながら国民的理解を得るための暫定的な制度設計という風に私は理解をしています。
 不動産価格情報の公開という観点からとらえた場合、不動産鑑定士としては、基本的な方向を協会として討議すべきであると思います。(このことは、「新スキームによる取引事例収集」にブレーキをかける意味ではなく、これはこれで、同時進行で進めれば良いと思います。)
①取引価格情報は、未来永劫属人的個人情報たり得るか。
②地価公示価格は、個人が希望すれば変更できるのか。地価調査基準地の宅地を選定するのに個人の同意が要るのか否か。
③格付機関が勝手に会社等を格付けしているのは表現の自由による意思表明であり、不動産鑑定士の鑑定価格も同様ではないのか。
④等々、検討すると結論的に私は取引価格情報が個人情報ではないという立場を鑑定協会としては取るべきであると思います。
国土交通省から言われたからやるのではなく、鑑定協会は鑑定協会としての到達目標を、第二ステージへの対応も含めて早急に検討しておくべきであると思います。
 規制緩和の中では、「郵政事業の民営化」すら国会討議に任されています。地価公示の民営化があってもおかしくはない時代です。不動産鑑定の専門家としてはどう考えてゆくかという論議が欠けたまま、新スキームだけが進んでいる印象を受けます。
 セキュリティ管理については、個人情報保護法ガイドラインは最低限確保できる様な本部・士会体制を緊急に作り上げるべきです。また、コンプライアンスについても、個人情報保護法と同様、不動産業者やデベロッパーが混在する鑑定協会に、任意協力により提供した取引価格情報が漏れるのではないかとの不安があってもおかしくはありません。この場合は、不動産鑑定士が前面に立っているのですから(地価公示は不動産鑑定士単位の発注となっている)、不動産鑑定士法へ改正することに何の障害にもならないのではないかと思います。
≪概算予算≫
どこまでを本会負担とするかにもよりますが、システム構築だけでも3~5千万円位はかかると思いますし、試行期間内にある三大都市圏でも2~3千万円はかかるのではないでしょうか。
五、鑑定協会の会員専用サイトに開示する制度創設に全面賛成します。
極めて効率的運営に資すると思います。
六、所信
今日まで、鑑定協会の会務運営は護送船団方式そのものであったと思います。各鑑定士は、平均的な能力を備えており、全てが一つのことに平均的水準で業務受託しているとの前提で全体が進まなければ全部進まないし、決定もできないという場面の連続であったと思います。
 文化は均等にはむしろ進化しないのであって、不均等発展の原則によるべきであると思います。先進的な部分が率先して業務開発し、自由に進めるような協会運営にしないと、若い芽が育たないと思います。社会的なニーズが多様化しているので、専門家も領域的には多様化して対応する必要があると思います。
時代のニーズに対応するためには、何よりもまず、協会役員の若手世代への世代交代が必要と思います。
以 上

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