旧盆が過ぎてもまだまだ寝苦しい熱帯夜が続いているなか、昨夜半に近しい大事な人の訃報を受け取りました。先月来、病状は悪化しており、延命装置を付けるか付けないかについて近親者で決めておくようにと主治医から告知されたと聞いていたことから、心の準備はできていたものの、深夜に響く電話着信音は眠気を吹き飛ばすに十分なものでした。
手短な伝言を受け終わり電話を切ったあと、享年64歳の縁者を思いながら眠られぬままに付けたテレビには数年前に亡くなった懐かしい顔がありました。
それは地元CBCテレビが開局50年記念番組で再放送しているCBCアーカイブ特集の第四夜で、屈託のない笑顔で人気者だった双子の姉妹”きんさん・ぎんさん”とその家族を描いたドキュメンタリー番組「えんがわ」でした。
きんさんぎんさんの双子の妹、”蟹江ぎん”さんが暮らしている四女の家に集う”ぎんさん”の四人の娘達の他愛のない縁側話を描く番組です。娘さんと云っても当時106歳のぎんさんの娘達ですから、一番若い四女が75歳、長女は収録時確か84歳だったと思います。戦争や伊勢湾台風や不景気や夫や子供に先立たれた話、老々介護などが淡々と語られてゆくのです。
四人の婆さま達の話を聞くでなし、聞かぬでなし、同じ縁側の少し離れた場所に泰然と座している大婆さま”蟹江ぎん”さんの表情がとても穏やかで味わい深いものでした。四人の娘さん達の会話の中で特に印象に残った話があります。
誰かが「この歳になれば死ぬのはオソガナイ(怖くない)、でも事故だけは嫌だ。事故は相手サンに迷惑をかける。」と云い、皆が相づちを打つのです。
日頃、我が老親も似たようなことを云っていますから、「アア、この年代の人達は介護などで誰かの世話になることをおそれていると同じくらいに、交通事故などに遭遇して加害者をつくることも避けたいと考えておられるのだ。」と改めて思いました。
この話には、彼女たちの見事なオチもついていました。
「長患いしないのなら、どんな死に方でもいい。風呂場でも便所でもいい。」、「風呂でもいいけど、ガス風呂はアカン、茹だってしまう。」(姉妹で爆笑)
蟹江ぎん
かにえ ぎん、双子の妹。2001年2月28日に死去。享年108。妹ではあるが先に出生したのはぎんさんの方である。
成田きん
なりた きん、双子の姉。2000年1月23日に死去。享年107。
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死に方でもう一つ。逆しまごとはとてもイカン、親が子の弔いを務めるのはとても辛いことです。逆縁はイカン。