制度改革対応方針-2

 公益法人制度改革への対応に関しては、基本方針以上に慌てる必要はないのである。何となれば、公益法人制度改革三法は06.06に公布されているが関連政省令等が未制定であり、詳細の方向性が未だ見えないのである。また新制度の施行予定時期は2008年12月頃であり、その後も5年間の移行猶予期間が設けられていることから、日程的には今しばらく余裕があるのである。


 制度改革で最も重要というか肝心なことと思われるのが、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」第二条別表に記載される公益該当事業に協会が実施する事業が該当するか否かである。

「公益目的事業とは」 公益法人認定法第2条
 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。

「公益法人認定法第二条・別表」
十六 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
十七 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
十八 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
十九 地域社会の健全な発展を目的とする事業
二十 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
二十一国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
二十二一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
二十三前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

【公益法人改革についてはこちら】

「公益法人制度改革の日程(予定)」
2006/06:公益法人制度改革3法公布
2007/04:公益認定等委員会発足
2007/08:政令府令案の制定
2007/08:運用方針、認定ガイドラインの制定
2007/12:公益法人税制の内容公表
2008/12:改革3法施行、現存社団法人の移行開始
2013/11:現存公益法人の移行期間満了

 端的に云えば、『地価公示受託事業』、『地価調査受託事業』、『固定資産評価受託事業』、『相続税土地評価受託事業』が、「公益に関する事業として政令で定めるもの」として認定されるか否かなのである。
実も蓋もない云い方をすれば、鑑定協会(全国会、もしくは連合会)にとっては、『地価公示受託事業』及び『相続税土地評価受託事業』が、各都道府県士協会にとっては、『地価調査受託事業』並びに『固定資産評価受託事業』が公益事業として認定されるか否かがその帰趨を定めると云ってもよいのである。ところが、この辺りが我々鑑定士側の希望的・楽観的観測を除けば、その姿が未だ見えてこないのである。
 公益社団法人という名前が与えられたからと云って、社会的信用力が増すなどと寝言を言ってても始まらないのである。また公益事業は名前で行うものではないし、鑑定士に志さえあれば公益事業は継続拡大してゆくものであろうと考える。何よりも公益事業の維持拡大は組織並びに組織構成員のプレゼンスの充実を考えれば不可欠なのである。このことは新スキームの充実継続拡大を考えるときにその公益的側面の充実が不可欠であることは直ちに理解できるであろうし、地価公示や地価調査の充実や安定的継続を考える時にその公益的側面のさらなる充実が不可欠であることも理解できるであろう。
 そういった現下のさまざまな背景を考え合わせると、今最も重要なのは全国の単位会が自らのあり方を自らが問い直すと云うことではなかろうか。自ら、即ち各単位会たる士協会が、地域社会でどのような地位を得ようと考えるのかである。まさに自主、自存(自尊)、自律の心構えで自らがいかに在りたいと考えるかなのである。
(a)(社)○○不動産鑑定士協会という名称に、組織の実態をいかに重ね合わせるか、士業併存のままでよいのか、糺し得るところから正すことはできないか。
(b)新スキーム施行に並行して、資料共同利活用の有効な方策は何か、安全迅速な利活用実施のための方策は何か。
(c)自らが構成し参加する連合体として、鑑定協会全国会の望ましいあり方は何か。
 士業が併存し業益・私益を優先する実態を覆い隠す方便として「公益社団法人」の名称を獲得して、見せかけの信用や信頼を得たとしても、それは所詮付け焼き刃であり世間を惑わす仮面に過ぎないことを、不動産鑑定士であるならば今一度思い知っておくべきであろう。
 これら各士協会自らが直面する課題に、自ら処方箋を求めてゆくという姿勢こそが今問われていると考えるのであるが、如何だろうか。卑俗的ではあるが、しかし士協会自らの今後を持するためには、『地価調査受託事業』並びに『固定資産評価受託事業』を自らが係わる公益事業として真正面から取り上げてゆく覚悟の有りや無しやが問われているとも云えるのである。

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