不動産鑑定の近未来_3

 [塾・鄙からの発信]と[鑑定評価の近未来]を結びつけようとすれば、牽強付会の誹りを免れることは難しかろうと思われる。それでも開塾の本旨とか根底は其処にもあるのです。


『鑑定業界の変革期』
 もう何度も何度もこのサイトで記事にしてきたことであるが、昨07年から今08年にかけては鑑定業界にとって大きな変革の時期であると考える。一つは取引価格情報開示制度による悉皆取引事例調査実施(いわゆる新スキーム)、一つは業界ネットワークの構築(REA-NET)、そして08/12に予定されている「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の施行である。
 他にも、02/07の鑑定評価基準改定とか、07/04施行のADR促進法とか、鑑定業界に関わる大きな出来事は挙げられるだろうが、鑑定評価の資料基盤に関わり、その扱いが将来の鑑定評価の在り様や鑑定業界の社会的存在を左右すると考えるのが「取引事例悉皆調査」の実施であろうと考える。
 そして、それらの資料を安全に有効に活用するために、社会に的確な情報発信するために必要なものが業界のデジタル化促進であり、安全で高速で簡便なネットワーク構築であろうと考える。
 さらに、この新スキームデータとREA-NETを有効に活用してゆく上で士業併存組織である現行の鑑定協会及び士協会(名称は士協会であるがその実態は業協会であろう)は、幾つかの場面で隔靴掻痒であったり、見当違いであったりするのである。そのような状況に風穴を開ける可能性が考えられるのが一般社団法人等法の施行でなかろうかと考える。
『塾・鄙からの発信』
 塾・鄙からの発信はそれらに直接的に対応しようと意図するものでは毛頭ございません。また分派党派形成を意図するものでもございません。純粋に40年に近い茫猿の鑑定人生の経験を語る場であり、斯界の諸先達の講義を伺う場でありたいと考えるものです。茫猿の意図するところは塾という場を用意することにより、自ら、そして互いに学び合う場が作られればよいとを考えるのである。何よりも、世代を超えて経験の多寡を超えて、幾つかのことがらを論じてほしいと願うのであり、でき得れば世慣れた議論などではなく、青い書生論を展開して欲しいと願うのである。
 今こそ、様々な問題について書生論的議論が求められていると考えるのである。REA-NETの運用方針は、士協会自治に委ねられるものであるが、運用に一定の秩序は求められるにしても、自由で多面的な利用価値を阻害するものであってはならないと考える。それにしても、REA-NETにしてもADR問題にしても、業者的感覚が優先する方向は決して好ましくないと考えるのである。
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が施行される本年末には新らたな社団法人組織の設立も可能となるのである。別派、分派等というものではなくて、現行組織が士業併存であることに帰因して機能が十全に働いていない部分があるとすれば、それらを補完する柔軟なNPO的組織として新設一般社団法人は機能し得るのではなかろうかと考えるのである。
 [塾・鄙からの発信]スタート前から、このようなことを記事にすればあらぬ誤解を招きかねないが、新社団法人問題に関して初めて記事にするわけではないし、鑑定士たる者この種の問題に関しても正しい理解を得ておく必要があると考える。REA-NETに関して云えば、事務所内LANに始まり広域WANなど業界ネットワーク構築は鑑定士にとって今や避けて通れない鑑定評価を支えるIT技術と云ってよいであろう。この新しい組織論と組織を有効に稼働させるIT技術が機能的であってこそ、悉皆調査で得られる様々で大量のデータを適切にかつ的確に共同利活用できるものであると云える。
 塾は、墓地評価とか堤外地評価と云った評価論的問題や、数値比準表利用などというデジタル技術論的問題の他にも、鑑定評価に関わる包括的基盤的問題を広汎に論じ得る場でありたいと考えるので、いわば何でもありなのである。
『堀川氏の問題点指摘』 
 折りしも、Evalution No.28号で堀川裕巳氏が「鑑定業界と相互不信社会」と題して、取引事例収集の方法と法的根拠、個人情報保護法等、新スキームに関する問題点を鋭く指摘されている。指摘される問題点は目新しいものではなく、新スキームの検討段階、試行段階から指摘され話題になってきたものである。
 鑑定業法を鑑定士法に改定することは言うは易く行うは難しであり、当面実現の可能性は殆どない状況にある。並行して鑑定協会を鑑定士協会へ組織変更することも、その実現性は殆どないといってよいであろう。云ってみれば内部変革が至難であるならば、外部に対応組織や対応する実態を構築しようと云うのが鄙の堂守の考え方である。その過程や結果に於いて法改正が実現したり、協会改編が実現すればそれはそれでとても良いことなのである。
 取引事例等収集に関わる法的裏付けを求めることは重要であるが、そのことに拘泥するばかりでは前進はない。現状をより強固にする、社会的存在感、事業の意義を確かなものにしてゆく努力が必要であろうと考えるのであり、業益を視野の中央におくのではなく、社会的利益:公益あるいは社会のニーズを中央に据えることにより、迂遠に見えても着実な一歩を進めてゆこうと考えるのである。
 我々は保護や支えや法的裏付けを求めるばかりでなく、自ら社会のニーズに応え情報を開示し、いわば[攻めのマーケティング]を展開する時期にあると云えはしないだろうか。ささやかな私塾がその小さな灯になればよかれと願うのである。

『私事ですが』
 開塾に合わせてという訳ではなく、であるから開塾というのが妥当であろうが、本日、【不動産鑑定士:森島事務所】の業登録申請を岐阜県知事宛に提出しました。(正確には2008/02/29提出です)
1974/04開設以来、34年間続けてきましたた法人岐阜事務所は07年度末に終止符をうち、08/04よりは第二の鑑定士人生に入る予定です。

 塾については肩肘張らずに柔軟な姿勢で対応してゆこうと考えています。一応は月に一回程度の開催で、一年間の継続を目標にしようと考えています。何よりも聴講生が集まる間は続けるけれど、聴講生が一人も集まらなくなったときが閉鎖の時と考えています。そこがそれ私塾の適当なところであり柔軟なところなのだと思っています。
 既に、四月開催日は4/18(金)と定めて、会場も予約支払い済みです。講義内容は未定ですが、取り敢えず茫猿が座を勤める予定です。五月開催は、近畿在住の利回りや統計解析のプロフェッショナル鑑定士に講義を依頼して内諾を得ております。開催日は地価調査日程との関係で未定ですが、5月の金曜日を予定しています。いずれの開催も当月開催が終わり次第に次回開催の詳細をこのサイトで詳細を記事にします。

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