不動産鑑定:悉皆調査とREA-NET

鑑定評価はいま大きな変革期にあると云える。変革の一つは取引価格情報開示制度による不動産取引悉皆調査の開始(いわゆる新スキーム)であり、一つは業界ネットワーク(REA-NET)の運用開始である。「取引悉皆調査」の実施は鑑定評価の資料全般に関わり、その扱いが鑑定評価の在り様や鑑定業界の社会的存在を左右しかねないと云える。


そして、それらの資料を安全に有効に共同利活用するためにも、社会へ的確な情報発信をするためにも必要なものが業界のデジタル化促進であり、安全・高速・簡便なネットワーク構築であろうと考える。 表現を変えれば、国民共有の財産である不動産取引情報の効果的共有と的確な社会への情報発信(還元)が鑑定業界の今日的課題であると云えよう。
「悉皆調査データ(一次データ)から何が見えてくるか」
不動産の今日のあり様は昨日の展開であり、明日を反映するものであるという。地域の辿った過去の経緯を知ることから未来を見通すことも可能だと考える。 例えば調査対象市内の団地群について、取引件数の年次別集計、取引当事者の属性別集計(団地内、市内、県内、県外)等を表計算ソフトのクロス集計機能を利用して行うことには意味があると考える。 またそれらのデータをデジタルマップ上に展開すれば視覚的効果も高いと考える。同様なことは、複数のJR駅周辺地域の時系列的対比や取引当事者属性対比などでも可能であろう。
「REA-NET構築の意味するもの」
REA-NETの構築は、単にネットワークが形成されるだけには止まらない。安全・高速・簡便なネットワーク構築は、地価公示のデジタル化を促進し、分科会運営の効率化等を促すであろう。なによりも、GIS技術利用を伴う様々なデータのデジタル化は、社会に向かって不動産情報の効果的な発信を可能にするのである。
インターネットを駆使する社会が向かうのは、ネットにつながる人々の双方向的情報交換社会化(Web2化)であり、情報の普遍化・汎用化・低価格化(コモディテイ化)なのであろうとすれば、鑑定業界はその時流に棹さしてゆくべきであろうし、同時にブランド化や差別化といった方向性も模索すべきであろう。
「今後の事業課題」
不動産鑑定評価業とは不動産に関わる情報産業と位置付けられるであろう。情報産業として悉皆調査とREA-NETという二つの条件を前提にすれば、それらが相互に関連すると考えられる次のような事業課題が挙げられる。

(a)グーグルマップ等を利用した公示・調査要覧サイトの開設
この事業は鑑定協会が包括的に行ってもよいが、協会は基本ツールやフォーマットを提示することと、各士協会サイトをリンクするポータルサイト作成のみに止めて、各士協会毎のサイトはそれぞれの独自性や地域性に委ねた方がよろしかろうと考える。

(b)GISを利用した公示事例カード二枚目作成とデータ共用。
複数の単位会が試験施行することにより、よりよい手法やツールを模索すべきである。同時に、単に公示事例二枚目のデジタル化に止まってはならず、三次データの広汎な活用その他に資する手法でなければならない。

(c)悉皆調査結果一次・三次データのデジタルマップ上での把握。
斯界の内部利用に止まらず、情報開示につながるものでありたい。

(d)悉皆調査一次データの多面的分析による地価動向の把握。
前述のとおり、この分析により何が見えてくるかであり、それを社会に還元してゆくことが重要なのである。さらに以上をリンクさせて不動産センサスにつなげたいものである。

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