時刻表の無い旅・天草編

時刻表のない旅も四日目、連夜の焼酎に些かの疲れを感じた茫猿は、海風に吹かれたいと思うのです。 訪ねる先を島原にするか天草にするかを迷っていました。帰りの常滑空港行きの便は10.16 18:35 熊本発が予約購入済みでしたから、四日目夕刻までのフリータイムをどう過ごすかだったわけです。
10.15の朝、熊本駅頭でこんなポスターを見かけました。A列車(ATrain)で行こうというのです。 日曜日のことですし、折しもねんりんぴっく2011熊本大会が開催中ですから、観光客も多いことから空席は無いだろうが?と思いつつ尋ねましたら、空席有りとのことで、小躍りしつつ入手したのです。 入手したチケットは 14:52三角発 15:31熊本着2号車13番D席、これで16日の午後の予定は決まりですが、午前中はどうするかが残されています。


10.16早朝、とはいっても連日の焼酎が効いてか、起床は珍しく七時過ぎ、朝食を済ませて熊本駅から三角線一両編成の普通列車に乗ったのは08:58でした。 三角駅着が09:47でした。

三角駅舎、港町に相応しい洒落たターミナル駅です。

三角駅舎の拡大図、駅舎の前は広場を挟んで、直ぐに三角港です。

港に停泊する連絡船スーパーイーグル号、イーグル号は三角港と天草棚底港を日に二往復する連絡船です。 船長さんに出航時間を尋ねると、「何処へ行くの?」と問われます。 海へ出たいだけで行く宛はありませんが、着いた港で食事が可能なこと、タクシーが呼べることを条件に乗せていって下さいと頼みますと、「それなら小屋河内だろう。」と、間もなく(10:15)に船は茫猿独りを乗せて三角港を離れてゆきます。

幾つかの橋をくぐり、幾つかの島をすぎて定期船貸し切りの船旅は、ほぼ90分に及びました。 手許に地図無く、時刻表無く、自分が今どこにいるのやら、何処へ向かうのやらも判らないままに、少し心細い船旅を味わっていました。振り返れば三角港が見えます。

青い空、白い雲、青い海、白い波、その空間を横切る橋、島に人影は見えず、茫猿とスーパーイーグルは天草上島を目指していたのでした。

三角港を出てから90分、船長さんが届けてくれた港は、小屋河内港、通称龍ヶ岳でした。

船長に依頼した条件に見合うべく、港近くには丼物食堂とタクシー営業所とコンビニが所在なさげにありました。 天草までやってきて親子丼を食う謂われはなかろうと、タクシー営業所に立ち寄り、14:52までに三角駅へ戻りたいこと、魚を食べたいことを伝えますと、営業している寿司屋を探してくれました。

この寿司屋さん、とても美味しかったです。朝獲り活け締めの魚はどれも旨かったです。 でも驚いたのは寿司に包丁が入っていたことです。以下、寿司屋の大将と茫猿の会話を再現してみます。
茫猿「刺身を適当に、それとビールを下さい。」
大将「刺身を食うと寿司が食えないよ。」
茫猿「判りました、寿司を適当に下さい。」
付け台に並んだ2カンの握りを前に、箸を使うか指でツマムかを迷っていると。
大将「切ったるけん!」  茫猿「・・・・・・・?」
大将「切ったるけん!」  おもむろに刺身をつまめば、切ってあります。
大将「シャリも切ったるけん。」 それがこの写真です。
大将「うちの寿司はネタが新しいケン、口の中でモゴモゴするケン、切ったるトヨ。」
普通の寿司屋より、ネタはやや大振り、でもシャリの大きさは普通です。 岐阜あたりの寿司屋ではモゴモゴするわけはないのですが、コリコリ、プルプルですからシマアジやカンパチは、歯の丈夫な茫猿でも、やっぱりモゴモゴします。 1カンの寿司に包丁が入っているなど初めての経験でした。 この寿司屋さんサカナは旨い、旨いのが当たり前、でももっと旨かったのが御飯です。
御飯の旨さをほめると、無愛想な大将がニッコリ笑って、「そうだろう うちのシャリは人吉から仕入れているから。」と、言います。 「盆地の米は旨いんだよ。」 そうです。岐阜でも山がの米は旨いものです。
包丁が入っている握り寿司については、「うちのは1カンで二度美味しいンダヨ。」と宣います。 写真は、2カンの寿司を切り口で二つに分けて撮影しました。 付け台に出された時は、切り口は見えません。

切り目のある寿司に大満足した茫猿は、送ってくれたタクシーを呼び戻して、陸路を三角駅に向かうのですが、時間に多少は余裕があるからと、ドライバー氏は見晴らしの良い千巌山公園に案内してくれました。 見晴台から眺める天草・松島の島々です。 冬になれば、遠くに島原・雲仙岳も見えるとのことでしたが、靄が邪魔して雲仙岳は見えませんでした。

天草五橋のうち、天門橋、この橋を渡れば九州本土の三角駅です。

三角駅に到着して、まだ腹は減っていませんが、これからの旅程を考えて、弁当をと思ったのですが、全て売り切れ。 販売員の彼は弁当の写真と笑顔で埋め合わせをしてくれました。

さて、本日のハイライト、A-trainが入線するホーム表示です。

A-trainが入線してきます。

A-trainの呼び物、車内バーです。

茫猿がオーダーした天草夏柑入りのハイボールを作ってもらっています。 バーがあるとはいっても40分ほどの旅ですから、お代わりをするほどの余裕はありません。 このバーが新幹線にあったらなァと思います。 せめて昔のビュッフェを復活してほしいものです。
総じてJR九州は乗降客誘致にとても努力していると思いますが、地の利に恵まれたJR東海は合理性ばかり追求していて、旅の楽しさを置き忘れていると思います。 もちろん、このことはJR東海のせいばかりではなくて、速さばかりを要求する乗客にゆとりが無くなっているせいであることは言うまでもありません。

A-trainで熊本駅に戻り、熊本からは豊肥線で肥後大津駅へゆき、空港シャトルで熊本空港へ向かうのですが、大津駅で「ASO Boy」にも出会えました。

熊本空港で搭乗待ちのあいだに、いただいた九州最後の晩餐です。 キビナゴフライ、カンパチの刺身(コメントしたら可哀想)、馬肉の唐揚げ、そして焼酎。

定番の蓋、大津の蓋です。

幾つかの幸運にも恵まれた、とても佳い旅をさせて頂きました。熊本会の皆様をはじめ旅を伴にした方々、快いもてなしをしていただいた方々に感謝します。 来週末には仙台で開催される鑑定シンポジウムにて、また地理情報・MapClient のプレゼンをさせて頂く予定です。
東北連合会並びに宮城会の皆様、宜しくお願いします。 それに加えて、その後に何処を廻ってこようかと、今の茫猿は次の旅に胸躍らせているのです。 旅は出会いですから、新しい佳き出会いが待っていることでしょう。

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