事例管理と鑑定評価

新スキーム改善問題について、新スキームという名称に速やかに決別すべきと総会並びに『鄙からの発信』で提案したのは2009.06.20のことであり、既に二年半も前のことです。「間違いだらけのREA-NET」と題する記事を掲載したのは2008年8月のことです。
2011年度末が近くなり、新スキーム改善問題に相応の結論を出すべき時が迫ってきました。 ネガテイブリストの解消に留まって、中途半端な改善策に留まれば、次年度以降にさらなる改善を求められることになるでしょう。 今こそ抜本的施策を採用して将来展望を拓くべきであろうと考えます。
痛みを伴わない改革などは有り得ないと自覚すべきであり、痛みを乗り越えた後に何を得ようとするのかが肝要なことでしょう。 安全性担保や透明性確保などは当面する改革目標ではあるが、戦術目標に過ぎないのである。 改革の先に不動産取引悉皆調査制度を確立し、調査から得られる資料の利活用安定性をデイファクトスタンダードとして高めること、並びにそれらに伴う鑑定評価の将来展望を戦略目標と位置付けるべきである。 以下、テーマ毎に述べてみます。


一.閲覧業務の安全性担保について
a.トレーサビリテイ確保の為に、閲覧業務デジタル化の完全実施を図る。
この件は、資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程第4条の「努力目標規程」を、実施期日を特定した「達成目標規程」へと改訂すればよいのであり、不動産取引価格情報提供制度に係る情報の取扱基準を全面実施すればこと足りるのである。
b.閲覧システムの基本仕様はRea Netが有する機能を充足すれば十分であろう。 ここで云う機能とはRea Jirei に関わることのみでなく、Rea Info、Rea Data、Rea Mapを含めてのイントラネットワークに関わることである。
c.事例資料の使廻しを排除する為に、公的評価利用(公示・調査・相評・固評)後のデータ消去義務化も並行して図るべきである。
二.閲覧業務の透明性確保について
d.閲覧機会及び閲覧料について、士協会内外格差並びに鑑定協会内外格差の解消を図る。
三.閲覧料及び資料作成実費等について
e.閲覧料の統一と作成実費補填額の支払いを実現する。
f.閲覧料請求と納付事務のデジタル化処理を図る。
g.公的評価利用については、一括ダウンロード及び閲覧料割引等の特例を検討する。
四.各項目についての詳細
1.b項に関連して、アクセス管理
閲覧システムのアクセス管理は会員管理と一体化したオープンソース接続認証システムを採用すれば十分と考える。 同時に、Rea NetのうちRea Data、Rea Info、Rea Map 等機能をリンクすれば、鑑定協会の情報交換、共有を目的とするイントラネット・グループウエアが完成できます。 なお、Rea Netに採用するJarea認証の更新は現在年一回ですが、安全性の観点からは三年に一回程度で十分と考えます。
2.f項に関連して、閲覧料決済システム
閲覧料はカード決済又は口座引落をシステム化すべきであり、閲覧料の全国一元管理を行うべきと考える。 仮に士協会窓口閲覧を認める場合も、会員のIDとPWを要求することにより決済システムの利用は可能と考える。 鑑定協会は既にカード決済システムを稼働させているし、 士協会に閲覧料徴収を委託することは、士協会内部だけならともかく全国の外部閲覧者の閲覧料徴収は事務的な煩瑣を招くだけである。 さらに付け加えれば、士協会外部会員について士協会窓口閲覧に制約することは独禁法に規定する差別的行為禁止に抵触する可能性がある。
3.g項に関連して、閲覧料と公的評価
全国一律の閲覧料を設定する場合にも、相評と固評については公的評価特例を設けられるべきと考える。 公的評価に関わる資料利用について、相評、固評については士協会会長の責任による一括ダウンロード、利用者への配布を認めるべきと考える。  割引料率は25%~50%とし、士協会会長へ請求すればよいであろう。
当然のことながら目的外利用は禁止し、目的外利用が判明したら特例は適用されず、一般鑑定閲覧に移行されるものである。 一括ダウンロードを行わない士協会は、一般鑑定利用と全く同様に閲覧供用し、かつ同額の閲覧料を支払うこととすればよい。
4.e項に関連して、閲覧料と実費主義
閲覧料の一括管理を行うことにより、閲覧料を資料作成件数に応じた傾斜配分が可能となります。 閲覧料は閲覧の都度、納付される。 納付額を四半期毎に集計して、システム維持費を控除した後に、新スキーム事例作成件数に応じて士協会あるいは作成者へ配分する。
閲覧料の積算は、システム維持費(閲覧1件あたり200~300円)と事例作成実費補填額(事例1件あたり、3000円程度?)を基礎として、次のようになると考えます。閲覧料は低額な方が好ましいという意見も存在しますが、作成者(調査担当者)と利用者の衡平を図るためには相当額が望ましいと考える。 同時に鑑定評価や価格調査の低廉額受注がこれ以上蔓延しないためにも、社会通念上からして妥当な額を授受すべきであろうと考える。
5.閲覧料見込額の試算(一般鑑定評価利用についてのみの概算額)
・事業実績による平年度鑑定評価受託件数  約20万件
・1件あたりの事例件数  5件 事例総計 5事例×20万件×歩掛率(0.5)=50万件
・公的評価を除く閲覧収入  50万件×(閲覧料)2000円=10億円
・年間のシステム維持費等  約5億円?
当該額にはアンケート郵送費、システム維持費、システム改良費そして調査研究等投資経費が含まれる。 残余の額は作成実費補填額として配布されるものである。
五.事例カード二枚目等と士協会アドバンテージ
二枚目は基本的に閲覧システムの管轄外とする。 二枚目の管理は士協会に委ねることとして、閲覧記録その他を閲覧システムに準じて管理保存する。 この際にアナログ管理も是とする規程であればよいと考える。 例えば、「デジタル管理を行うよう努める。」などといった書き方であり、公的評価の範疇とする相評及び固評に於ける二枚目の取扱は特例を認める。他にも次項に述べる将来構想が地域毎に実現してゆけば有効な士協会アドバンテージとなるであろう。 鑑定協会のみならず士協会にも新スキーム改善を契機とする将来構想実現に邁進して頂きたいと願うのである。
六.将来構想
閲覧料の一元管理は、システム維持費を捻出するだけに留まらず、鑑定評価と悉皆調査の将来構想として結びつけて考えるべきである。 つまり、将来構想を実現する投資を行う戦略構想でありたいと考えます。
・地理情報を活用して、事例散布状況のメッシュ分析を開始する。
・Web市場における売り希望情報をネット集計して、売却物件の市場滞留性調査を行う。
・新スキームデータを活用して地価動向分析研究を開始する。
・区分所有事例を手始めにヘドニックアプローチ等研究調査を開始する。
・収益物件事例の利回り調査を制度化する。
等々の様々な鑑定評価の将来に資する調査研究費を捻出することが可能であるし、そのような料金体系を提示して理解を求めるべきと考える。
今や、他者が作成した鮮度が劣る資料(いわゆる四次、五次データ)に過度に依存する旧来型の鑑定評価から決別すべき時なのである。 そして鮮度の新しい三次データ等を基礎として、自らが個々の資料の詳細を調査し、一次データ及び三次データさらには多くのWeb市場データ等を母集団とした地理情報的解析や時系列分析結果を背景とする、本来あるべき姿の鑑定評価に転換してゆく得難い機会としたいものである。
鮮度の落ちた過去データの囲い込みにこだわっているあいだは、鑑定評価の未来はないし、エリアに密着し精通する地元鑑定士の優位性も発揮できないと知るべきであろうと考えるのだが、一向に気付いて頂けないのが残念なことである。

昨夜は等高線間隔が狭くて東海沖に寒冷前線があったから、今朝は雪だろうと思っていたら案の定、この冬最大の積雪(20cm?)になりました。
今朝の朝日新聞は、大手銀行等の国債の有力な買い手が、いよいよ「急落シナリオ」を想定した日本国債の価格急落に備えた「危機管理計画」を作り始めたという記事を一面トップに掲載している。 千四百億兆円ともいわれる日本国民が保有する金融資産残高と国や地方自治体等の債務残高が近づきつつあることを考量すれば、国債急落シナリオも想定内のこととなりつつあるのであろう。 鑑定評価もまだまだ余力があるうちに将来展望を真剣に考えなければならない時期に至っているといえるのであろう。

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