軒端の秋

「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」という古今集の歌がございますが、この夏から秋にかけては異常気象とされる集中豪雨が多く、各地では土砂崩れなど甚大な被害をもたらしています。 当地でも夏らしい空も秋らしい晴れも二日と続かない、秋の長雨のような日々です。 昼中の暑熱が、軒端を過ぎてゆくささやかな風にほぐされてゆく、そんな初秋の風情は何処へ消えたのかと訝しいこの頃です。 そんな昨朝、懐かしい方から嬉しいコメントをいただきました。

夏を越され、少し、お元気になられたご様子、安心しました。「茫猿・残日録」のアップが少ないと、隠れファンとしましては、大変寂しいものです。阿修羅像に再再会され、初秋の奈良、飛鳥の里の紀行文楽しみにしております。 時々は、辛口の茫猿遠吠もお忘れなきようにお願いします。《F田》

F田大兄  コメントありがとうございます。年初以来私的にも様々なことがあり、三月に2500 号を記録して以後、「鄙からの発信」をどう維持してゆくか揺れておりました。このまま消えてゆくのも悪くはないと考えることもしばしばでした。 そんななかでも検索エンジン経由の新規の方は別として、bookmarks利用などで日々一定数の方々が継続して訪れていただいているのをGoogle Analyticsなどで確認させていただいておりました。

また、大兄のようにコメントを頂く方、お電話を頂く方、お会いした機会にご心配いただく方など、少なくない方々に見守っていただいていることを知るたびに、日々の由無し事を綴ることもまだまだ捨てたものではないとも勇気づけられております。「鄙からの発信」の方向付けなどと気張らなくとも、肩肘張らずに続けてゆけば自ずと一つの方向が見えて来るのであろうと考えるようにもなっております。 既に旬の過ぎ去ったサイトではござますが、新たな旬を見出だすことができれば望外とも考えています。

コメントで触れていただいております「阿修羅像」に再々度出会おうという小さな旅は、天極堂の吉野葛切りを食すという楽しみに惹かされた家人の理解も得られ、着々と進めております。 六十歳以上限定の早期予約割引という特典を見つけた某著名ホテルの予約も済ませました。今は限られた旅程のなかで、如何に効果的に社寺旧跡を巡ろうかと考えを巡らせているところです。かねて憧れている奈良倭地鶏にも出会いたいと欲張ってもおります。

さて「時々は、辛口の茫猿遠吠も」とのコメントを頂いておりますが、日々新たに生じます様々な世事に茫猿が遠吠えするのはともかくとして、かつて茫猿がおりました不動産鑑定評価の世界については、今や遠慮すべきだろうと考えております。 それは、現役を離れてすでに五年近くが経ち、斯界の現状、特にその背景についての情報が乏しくなっており、特に取材もしておりませんことから、的外れの遠吠えをしかねないと危惧する気持ちが大きいのです。まさに浦島は消え去るべきであろうと考えるのです。稀にはFacebookなどの業界人コメントにフォローコメントをしておりますものの、明後日向きのコメントにならねば良いがと自戒しております。

とは申しながら、取引情報悉皆調査の行く末、効果的なネットワークの形成と維持発展、地理情報利用の充実などに関心が無いわけではありません。関心はあれども、情報が乏しくなっているというのが実情です。 協会より昨日公告された取引事例資料作成における公図利用の留意事項なども、ゼンリンマップのより効果的な利用《地理情報併用》と組み合わせた飛躍が伴っておればよいなと願っているところです。

断片的に得られる情報を通じて思えることは、地価公示など公的土地評価についての斯界の底流に流れる考え方があまり変わっていないなと思えることです。 業益の観点から眺めることはやむを得ないことでありましょうが、制度インフラの趣旨は取り巻く環境の変化に伴い創設当時とは変わってゆくものであり、その社会的需要の変化に斯界としていかに応えてゆくかが問われていることでありましょう。 いわば、社会のニーズに的確に応えられない制度インフラは消え去るに如かずなのであり、業益を盾に抗ってもむなしいだけでしょう。 であればこそ、社会のニーズを的確に汲み取って、自らが変わってゆくことを畏れてはならないのであり、常にゼロベースからの再構築を意識していることがとても大切であろうと思われます。中古住宅市場の活性化問題への対処についても同様であろうと思われますが、それもこれも茫猿の世迷いごとなのでしょう。

何はともあれ、温かいフォローコメントありがとうございました。 これからもお時間が許せば「鄙からの発信」にお立ち寄りいただければ、有り難く嬉しく存じます。 Twitterなどでかいま見させていただいております大兄の益々のご活躍を祈念申し上げて、お礼に代えさせていただきます。

追伸 ネットワークを考える上で、とても示唆に富む記事がアップされました。 内田樹氏による「ネット時代の共生の作法」です。一読されることをお薦めします。 この記事で膝を打った一節は、こんなものです。
・エビデンスがないときにでもその人のもたらす情報の真偽を判定できる能力
・自分がその真偽を知らないことについても真偽の判定ができる
・情報のクオリティを判定できる能力
・情報についての情報というメタ情報
・潜在的に所有している情報=いつでもアクセス可能な情報の多寡
・誰とネットワークを結ぶか

iNetに溢れているジャンク情報から、如何にして身を守るかについて、最も簡単な方法は、常にカウンターパート的情報に接し読み比べることだと思っています。

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軒端の秋 への1件のフィードバック

  1. 福田勝法 のコメント:

     茫猿様 心温まる返歌、有難うございます。添付された記事の感想の前に、近況ご報告です。やっと、我がS県でも、DI調査を始めました(本年9月1日時点での集計予定です)。大兄にお会いするたびにお勧め頂き、ズーッと気にしておりましたが、上記でご指摘のとおり、様々な情報の取得、その発信の重要性を益々痛感した次第です。全国で18県目だそうです。来年2月にDIサミットも開催されます。
     さて、「社会のニーズに的確に応えられない制度インフラは消え去るに如かず」のご指摘、全く同感です。「自らが変わってゆくことを畏れてはならない」。そして、内田樹氏の「マンガ界の集合知」:マンガを描く技術はすべて「パブリックドメイン」、集団として生き延びることを最優先に考え 、「運命共同体」のパフォーマンスを高めることを優先、「囲い込み」をしなかったことのみごとな成果だと思うんです。”我が業界にとって、なんと耳の痛いこと。社会的需要の変化に対応できる「3S」に磨きをかけなくてはと思っております。” 

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