またしても羊頭狗肉選挙?

七月の参議院選挙が近づいている。2014年暮に行われた衆議院選挙から約1年半、この間の安倍内閣事績を問う国政選挙である。過去の国政選挙前後の「鄙からの発信」アーカイブを読み直している。今回の選挙も、またしても争点隠しの目眩し選挙なのだと思わされている。

今回の参議院選挙を考える前に、第二次安倍内閣が成立した2012年師走選挙から最近までの国政選挙を振り返ってみる。

【過去三度の国政選挙推移】
第46回衆議院選挙《2012/12/16》は、 民主党野田総理による消費税増税法案話し合い解散による総選挙であった。野田・民主党は大敗し、237議席から57議席に転落した。安倍・自民党は118議席から294議席へと大躍進した。また日本維新の会は54議席を獲得して第三党の位置を占めるようになった。自民党一強・野党多弱時代の始まりでもあった。

第23回参議院選挙《2013/07/21》は、安倍自民党と海江田民主党とのあいだで争われた参議院選挙。与党(自民党・公明党)は76議席を獲得。非改選の59議席と合わせて過半数を上回る135議席となり、衆参両院で多数派が異なるねじれ国会は解消された。民主党は一人区で全敗した。

第47回衆議院選挙《2014/12/14》は、前回選挙後に5%から8%に引き上げられた消費税率の10%への再引き上げを先延ばしすることについて、国民の信を問うと云う安倍総理による解散総選挙である。安倍・自民党は295議席から291議席へと現状維持、海江田・民主党は62議席から73議席へと増えた。橋下・維新の党も第三党の位置を引き続き占めている。

振り返って、2012衆議院選挙は、民主党の自滅選挙とも云えるものだった。鳩山総理の「普天間基地は最低でも県外移転」発言がよってたかって叩かれ、政権かなめの小沢幹事長は陸山会事件《国策捜査とも噂された》によって失脚し、菅総理は福島原発事故処理の不手際を指摘され、野田総理はあいまいさを指摘された上での自滅選挙だった。民主党は政権を獲得することはできても、政権を維持するための経験が無く内部抗争に明け暮れた上での自壊でもあった。

2013年参議院選挙で安倍・自民党はアベノミク三本の矢を前面に打ち出して、景気回復と社会保障政策充実を大きな公約として掲げていた。2014 年衆議院選挙は消費税引き上げ延期、アベノミクスの成果を問う選挙だった。

【鄙からの発信が語ってきたこと】
このあいだに「鄙からの発信」アーカイブはなにを語ってきたのか、検索し部分引用して振り返って見るのである。

「羊頭狗肉 投稿日2013年11月07日」
安倍・自民党は「国家安全保障会議:NSC設置」、「特定秘密保護法制定」、「集団安全保障問題に係わる解釈改憲」などの国のあり方の根幹にかかわる問題についてを争点として選挙を闘ったのではない。総選挙でも参議院選挙でも安倍総理や自民党は景気回復と社会保障改善充実を大きな公約として選挙に臨んだのであり、なし崩しの解釈改憲を掲げて選挙を戦ったわけでもない。 その意味において麻生副総理が2013年07月29日に語った《開き直りにも聞こえる》ナチス関連発言は意味深長なのである。

「僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツのヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って出てきたんですよ。 ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。 ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。」

「詐術・日本統治行為 投稿日: 2014年12月12日」
アベノミクスオンリーという争点隠し目くらまし選挙が行われている。この数日はノーベル賞関連で報道番組は埋め尽くされている。ノーベル賞授賞は喜ばしいことだし報道に値するものであるが、選挙終盤なのに晩餐会メニューやダンスを踊るか否かに集中する報道姿勢は、日本マスコミの劣化を象徴しているように思われてならない。

沖縄の基地問題と福島原発問題は表裏の関係にある。日米地位協定と日米原子力協定の同一性、相似性はもっと問題にされてよかろうし、特定秘密保護法の危うさや解釈改憲に突っ走る安倍内閣の危険性も指摘されなければならない。しかし、マスコミは自民党三百議席を予想するだけであり、ノーベル賞お祭り騒ぎに明け暮れている。

「戦い済んで雪の朝 投稿日: 2014年12月18日」
歳末狂騒曲となった総選挙も予想に近い結果をもたらして数日前に終わった。小選挙区の結果は自民大勝であるが、よくよく数字を眺めてみれば、自民党の師走解散・総選挙戦術が戦術としてのみ優れていたのであり、国民のバランス感覚というものは結構確かなものであるということもできる。

各党の比例区獲得票数をみると、自民党は1765万票(前回比+6%)、民主党は977万票(前回比+1.6%)、維新の党は838万票(前回比−32%)、公明党は731万票(前回比+2.8%)、共産党は606万票(前回比+65%)である。

維新は前回の風部分《無党派層》が消え、民主党も前々回の風《2984万票獲得》には遠く及ばなかった。 この結果はこうも読めるのである。つまり、民主と維新を合わせれば自民党を上回り、公明と共産も拮抗するのである。 自民公明が共闘する小選挙区で自民党を倒すためには相当の秘策が求められるけれど、比例区の各党獲得票数をみれば不可能な数字でもないということである。

「2015年の安倍総理 投稿日: 2014年12月28日」
選挙前から予想されていたことであるけれど、第三次安倍内閣発足後の記者会見《12/24》で安倍総理は、アベノミクスという羊皮を脱ぎ捨てたように思える。正確にいえばアベノミクスは耳ざわりのよい羊皮などではなくて、金融の超緩和政策による円安誘導と公共事業の大盤振る舞いというイリュージョンに過ぎないのである。何度も言うけれど、円安を歓迎するというのは、日本が値下がりすることを喜ぶということなのである。 過剰な円高を是正するということとは、似ているようで真逆なのである。

来年の通常国会に、安倍総理は安全保障法制についてどのような法案を提出するのであろうか、戦後レジュームからの脱却を政治テーマとする安倍総理が、憲法改正問題についてどのような政治行動を行おうとするのであろうか。 総理は自民党選挙公約に明記してあるといい、その公約のもとで自民党安倍内閣は信任を得たというのである。

【さて、七月の参議院選挙】
以上が「鄙からの発信」が眺めてきた、そして記事にしてきた2012年12月から2014年12月までの経緯である。今回の参議院選挙は2014年衆議院選挙とあまりにも酷似しているのである。安倍総理は「柳の木の下の二匹目のドジョウ」を狙っているのであろう。安倍政権の振付師と目される内閣官房長官・菅義偉そして世耕弘成官房副長官の辣腕を思うのである。

消費税の10%引き上げを再延期すると安倍総理は云う。引き上げができる経済環境にはないと云うのであるが、それはそのままアベノミクス政策が失敗したと云うべきことであるのにも関わらず、伊勢志摩サミットやオバマ大統領の広島訪問を隠れ蓑として政策失敗を覆い隠しているのである。

さらに、マスゾエ祭りの空騒ぎによって《舛添都知事の政治資金不透明費消の道義的責任追求》甘利口利き問題を消し去り、消費税引上げ延期と云う口当たりのよさでアベノミクス失政もうやむやにしている。そして安倍総理の本音であろう「憲法改正発議」を隠しての《彼は歴代自民党の公約であり、今回も掲示していると言うが、》、”隠して”が事実と異なると云うのであれば、”眼に留まらぬようにして”、あるいは”目立たぬようにして”、選挙戦を闘うのである。 《祭り:iNetの空騒ぎ》

選挙戦が終わり、改憲勢力が《自民党、公明党、維新の党、その他》発議に必要な三分の二を衆参両院で得た瞬間に、羊皮を脱ぎ捨てて改憲を発議することであろう。今回の参議院選挙は”消費税率引上げ延期”でも”オバマ大統領広島訪問”でも”アベノミクス成果謳い揚げ”でも無いのである。隠された争点、目眩しされた争点である「安倍自民党による改憲発議の是非」なのである。安倍自民党が目指す改憲とは「自民党改憲草案」に示されているのである。

改めて麻生副総理が2013年07月29日に語った《開き直りにも聞こえる》ナチス関連発言を再掲しておく。彼が言いたいことを茫猿が忖度すれば「今ある結果というものは、国民が選挙で選んだ結果なのです。為政者が騙した訳でも国民が騙された訳でもない。国民が目を開き、耳を澄ませていれば、見えていたことであり聞こえていたことである。」

麻生氏は”憲法の運営は、議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったりに懸かっている”と述べるが、それはそのままに、国民の行動が問われ、見識が問われ、矜持が問われているのである。

「僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツのヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。 ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。 ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

そして、ワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。」 《出典多数》

《今日の鄙里では》
梅雨入りの鄙里では、雨が上がれば畑を見廻り、伸びている草取りをしなければならない。でも、雨が上がったからと云って直ぐに畑へは出られない。ぬかっている畑が乾くまでは、こうして駄文を書き連ねているのである。先ほど畑を見廻ってきた。今夏のブラックベリーは期待できる。もう少しすれば実は紅くなり、そして黒くなって《正確には黒紫色》収穫である。枝もたわわという表現がピッタリである。孫がやって来たら、指先も口元も紫に染め上げてやろう。20160614blukbery

ブルーベリーもトマトも順調に生育している。七年目のファーマーは着実に腕を上げてきていると自賛しているのである。20160614bluebery20160614tomato

久々に「鄙からの発信」へ硬派記事をアップした。言わでもがなと思えば些か疲れる。でも、疾しき沈黙には陥りたくないから、発信するのである。

 

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