賀茂川の床と貴船の床

 京都の夏の風物詩、賀茂川の床は7月に近くなるとTVニュースで紹介されることが多いから、皆さんもご存じでしょう。床はユカと読みます。京都市の町中を南北に流れる賀茂川、「稀代の大天狗」と源頼朝に呼称させたかの後白河法皇さえもが「賀茂の流れと賽の目と山法師は、意のままにならぬ」と嘆かれた、あの賀茂川です。加茂川とも鴨川とも書きます。


 この賀茂川の四条大橋を中心にして三条から五条にかけて、賀茂川の右岸側(西側)の河原に柱組を掛けて桟敷を張り出すのが賀茂の床です。川沿いのお茶屋さんや料理屋さん、最近ではレストランや喫茶店も床を懸けています。
 盆地である京都の夏は、大変蒸し暑いので、冷房のない昔は涼をとるために河原に桟敷を懸けたのが始まりと聞いています。当然に料金も高い贅沢遊びですから、四条大橋から一般人が眺めているのに見せびらかしたキライもあったのでしょう。浴衣姿の綺麗処を侍らして、美味しい料理を食べているのを見せつける優越感が、きっとあったのではないでしょうか。
 最近は、床も大衆化しており、料理屋さんやレストランでは通常料金よりやや高い程度で、ビールや料理が楽しめます。賀茂川の床のお薦めは、祇園祭の前です。八坂神社の祇園祭はほぼ七月一ヶ月に亙る祭りで17日前後の宵山と鉾巡幸がクライマックスですが、祭りの町衆はお囃子の練習を宵山の前に行います。コンチキチンで有名なお囃子の練習は、鉾町の集会所などで行うのが本来ですが、床の宣伝や客寄せをかねて床のあちこちでも行われます。床でお酒を飲みながら川風にのって流れてくる、お囃子のコンチキチンを聞くのも風情があるものです。
 夏の風物詩・床には、もう一つ有名な「貴船の床」があります。貴船とは賀茂川の上流部、鞍馬山に近い貴船神社付近の貴船川のことです。ここまで来ますと京都市街より標高も300mほど高くなる山間ですから、緑が多く少し涼しいうえに渓流をわたる風が冷気を運んできます。この当たりの川幅は数メートルしかありませんので、夏場は川沿いの十軒ほどの料理屋さんが川の上に桟敷を懸けて、桟敷で鮎・ハモ・鯉の洗いを中心とした料理を食べさせてくれます。清流の上でせせらぎの音と、川にさしかかる楓の緑を肴に呑む伏見の冷酒は格別です。(ここの料金もピンキリで、お値打ちなお昼の弁当は3000円位です。)
 賀茂川の床も貴船川の床も、蒸し暑い京都の夏ならではの涼の取り方であり、粋な遊びに思えますが、如何でしょうか。8月の夏休みには、鞍馬詣でや貴船詣でをかねて、賀茂川の床や貴船川の床をお楽しみ下さい。尚、貴船には叡山電車出町柳駅から、パノラマカーで大文字山や比叡山を眺めながら貴船口駅下車、舗装された山道を徒歩で約20分です。京都駅からタクシーを利用するよりは、風情のある旅が楽しめます。

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