法務局の電算化がもたらすモノ

【茫猿遠吠・・法務局の電算化がもたらすモノ・・02.07.30】
 暑中お見舞い申し上げます。
7月に台風が3個も4個も上陸するなど例年にないことであり、連日35度を超
える猛暑の中、読者諸兄姉の皆様はもう夏休みモードでしょうか。


 茫猿も酷暑のせいか利きの悪いクーラーに耐えて暑さをしのいでいますが、事
務所・熱車・現場・熱路・冷車・事務所と一日に何度も冷気と熱気の間を往復す
るうちにどうやら自律神経失調症にとりつかれたようです。
 暑いときは仕事はほどほどにして、川涼み、夕涼み、或いは暑気払いなどと、
優雅に過ごしたいものと、想いはすれどままならずというのが現実です。
でも月が替われば秋の気配は間近であろうと、深くなった緑、濃くなった木影、
少し高くなった空を眺めて、後一息と心に鞭を入れています。
 さて、標題の件ですが、数年前より各地の法務局で登記業務及び不動産登記簿
の電算化が進んでいるのはご承知の通りです。
それに伴って総務省の外郭団体である(財)資産評価システム研究センターの資料
閲覧室に「登記情報の自治体への通知に関する調査研究」という報告が同センター
Web Siteに掲載されているのはご存じでしょうか。
 現在は、法務局より市町村へ所有権移転等の異動通知は文書にて行われていま
すが、それを電算化するための調査研究報告です。その一部を引用いたします。
http://www.recpas.or.jp/jigyo/report_web/html_0014/hon014_000.htm
『引用開始』「登記事務の電算処理化の進展」 「」内は茫猿付記。
 現行登記情報通知制度の運用実態を踏まえて、市町村が必要としている正確な
登記情報を迅速に入手する上での検討課題及びその解決方策について検討してき
たところである。
 これらの検討課題は、それぞれ内容を異にすることから、その解決方策を検討
する場合には、これを分類整理して、検討するのが実際的であり、このことから、
検討課題を便宜次の三種に区分して検討していくこととした。
1.電子化未了登記所からの登記情報通知に係る検討課題  
2.電子化終了登記所からの登記情報通知に係る検討課題  
3.電子登記情報提供制度に運用開始など最近の状況変化を踏まえた検討課題
「電子化された磁気媒体による通知の実施」
 市町村が電子化された磁気媒体による通知の実施を強く望んでいるのは、大多
数の市町村が課税事務の電算処理を行っていることから、これによって登記所か
らの不動産異動登記一覧表を電子情報として入力する手数がなくなり、また、入
力の際に生ずるミスを防止できるなどメリットが大きいからである。
 以上のことから、とりあえず、電子化終了登記所から市町村への登記情報の通
知を電子化された磁気媒体による通知とすること早期の実施を目指して法務省・
総務省間で協議に着手すべきであると考えられる。
「電子ネットワークシステムを通じた行政情報の交換」
 登記所における登記事務処理については、近年における登記事務処理量の増大
に対処するための登記事務処理の電算化やこれに伴う登記情報の電子化の進捗、
さらには最近におけるIT社会に対応したインターネットによる電子登記情報提
供システムの運用開始などの新しい状況が生じている。
 登記情報通知制度は、法律に基づいて運用されている国・地方公共団体におけ
る行政情報交換制度であり、最近におけるこうした状況に対応した望ましい制度
を構築しなければならないと考えられる。
「課税事務と登記情報」
 これまでの調査研究や本年度に実施した全地方公共団体を対象にしたアンケー
ト調査結果によれば、大多数の市町村は、固定資産税の課税事務 を電算処理して
おり、このことから、個別の物件の固定資産税の課税事務を処理する上で必要と
なる情報の多くのものを電子情報として管理し活用している状況にあり、登記情
報についても課税事務を効率的に行ううえでは、多くの市町村では電子情報に変
換して管理し活用している。
 しかしながら、登記情報については、現在のところは、これを電子情報として
入手する方途がないため、一旦文書による情報として入手したものを各市町村が
電子情報に変換して管理し活用している状況にあり、これを 当初から電子情報と
して入手することを強く望んでいる。
 したがって、登記情報を電子情報として入手できる可能性のあるものについて
は、幅広く調査検討の対象として検討していくべきであり、この場合、総合行政
情報ネットワークや霞ヶ関WANを活用した登記情報通知システムは、その有力
な候補であるといえる。               『引用終了』
 長い引用を致しましたが、要するに所管課窓口にて異動通知書や登記済通知書
を閲覧できなくなる時期が近いであろうと云うことです。
不動産に関わる所有権移転情報は優れて個人情報ですが、同時に不動産取引情報
を得るためのスタートラインでもあります。
いわゆる公的評価と称される地価公示や地価調査等の精度向上の観点からは鮮度
が新しく、豊富な取引事例が必須なのは今も変わりはなかろうと考えます。
 昨今では、収益価格が重視されていますが、収益価格に偏重することの問題点
は云うまでもなく、収益価格がなじまない不動産評価には取引事例がその基礎資
料として今も大変有効です。
 取引事例収集の基礎資料として必要条件である「所有権移転情報」が従前のよ
うには入手できなくなる事態に、鑑定協会や鑑定士は備えなければならないので
はないでしょうか。同時に従来のように文書閲覧により入手していた「所有権移
転情報」を電子化情報として入手できる或いは提供されるであろう事態も予想し
なければならないでしょう。提供を受けた電子化情報のフォーマット対応やコー
ド変換の問題は避けて通れないことと予想します。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
 鑑定協会(単位士協会も含めて)の七不思議の一つと考えるのですが、情報資料
即ち取引情報、賃貸情報、建設建築情報が鑑定評価の生命線であるにもかかわら
ず、各種の情報を一元的に収集管理する組織を持たない、あるいは持とうとしな
いことである。
 鑑定協会及び各士協会に資料委員会は存在するようだが、多くの資料委員会は
収集整理加工された紙・事例資料の管理閲覧業務のみに関わっているようである。
いわば倉庫業務に汲々としており、土地情報仕入れ業務には関与していないのが
実態でなかろうか。兵站・補給線の維持・確保に意を用いない戦略・戦術が成功
したためしはないのに、何故かなおざりにされているのは不思議である。
・・・・・・追伸です・・・・・・・・・
 次の数件も多くの問題点を含んでいることであり、申し述べたいことがありま
すが、もう少し涼しくなって熱中症が癒えてからに致します。
・業者団体化している公益法人(業益法人)の是正問題と中間法人。
・地価公示「鑑定評価格」と固定資産評価「標準宅地価格」の齟齬。
・鑑定事務所のネットワークと云うところの、系列化進行。
・ジャッジメント(正常価格)とコンサルティング(特定価格)混同のもたらすモノ。
・・・・・・・本日これまで・・・・・・・

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