このブログの読者の多くは「2ちゃんねる」をご存じでしょうが、常時アクセスする方は少なかろうと思います。まして2ちゃんねる掲示板に書き込む方は殆どいないだろうと思います。
ちなみに「2ちゃんねる」と「2チャンネル」は違います。「2チャンネル」はリアルでありTVチャンネルのことですが、「2ちゃんねる」はバーチャルであり、iNet上での巨大掲示板ことです。
2ちゃんねる掲示板はマンモス掲示板ですが、この管理人(事実上のオーナー)は西村博之氏といい、管理責任に絡む多数の民事訴訟と多額の賠償債務を抱えていることでも著名である。その西村氏が扶桑社から新書を刊行した。扶桑社とはかの有名な歴史教科書出版社でもある。
「2ちゃんねるは なぜつぶれないのか?:巨大掲示板管理人のインターネット裏入門」という長い書名の本である。帯には「もうこれ以上、インターネットは社会を変えない。」とある。 初版刊行は2007/07/01であり、既に半年近くが経過した。実は最近に所用で帰省した次男が、「親父さんよ、梅田さんのWeb.2.0論を読んでいるなら、こちらも読まないと片手落ちだよ。」と、手渡してくれた本である。
「竿だけ屋はなぜつぶれないのか?」という、馬鹿々々しい本で懲りてたし、その二番煎じと思って読もうとしなかったのだが、次男が薦めてくれるし、彼の読み終えた中古本だから、ざっと目を通してみた。
目次を拾うと、1.0_2ちゃんねるが潰れない理由 2.0_ITのうそ 3.0_明るい未来への誤解を解く 4.0_佐々木俊尚との対談 5.0_間違いだらけの法律 6.0_メディアと2ちゃんねる 7.0_小飼弾との対談 という構成である。
Googleの辛口評、Yahooへの辛口評、Web2.0論への懐疑評 などなど、面白いし、ものごとの違う局面からの見方を教えてくれる。iNetに新技術などないし、将来性や発展性などないという彼の意見には頷かせるものもある。 その点に関して、対談者の佐々木俊尚氏はこう語る。
西村さんの言っていることは、身も蓋もなさすぎてついていけないですけど、梅田さんの論もあまりに牧歌的すぎるんじゃないかと思う。言っていることは素晴らしいし、誰にも否定はできないんだけど、本当にそんなふうに動くのかと感じてしまう。
今のインターネット上は、戦前の新聞と同じで、ある種の集合知でもありつつ、集合愚でもあるわけです。インターネット上でのアジテーターの発言にみんなが突っ走っていってしまうと、サイバーカスケード(iNetにおける集団分極化現象)のような状態が起きてしまう。そういったファシズムにも似たものが出現した状況のなかで、それを止める能力があるのかどうかということになる。
メディアと2ちゃんねるについて、ひろゆき氏はこうも言う。
今まで新聞やテレビが伝える情報は正しいという価値観がありました。それが「あるある大事典」などのヤラセ問題や虚偽報道が相次ぎ、結果、対処の方法がわからなくなった人たちが、さらに信用できない情報の場所(2ちゃんねるなどのiNet情報)へと移動してしまった。宗教に騙されたから悪徳商法にいくのに似ています。
ひろゆき氏は、こう結ぶのである。
2ちゃんねるは、全員が匿名言論でものを言い、ヒエラルキー構造が作られない完全フラットな場所なのです。
堀江貴文氏やライブドアやマイクロソフトへの好意的評価など、ものごとの多面性を知る上で、面白い本であるが、鵜呑みは当然ながら危険である。でも彼の本を読んでいると頷いている自分がいるのだな。Google評やYahoo評、Microsoft評なんかは、佐々木氏が喝破するように、身も蓋もないけれど判るのだな。正月の暇つぶしにはお薦めであるが、ものごとを生真面目に考える方には怒り出しそうだから薦められない。 でも、そんな人ほど脳味噌を柔らかくするために読んで欲しいのだが、読まないだろうな。
関連の記事
- 祭の2ちゃんねる : 2007年1月21日
- 懐かしの鉄道風景 : 2006年4月8日
- 響ちゃんと歩こう : 2006年6月2日
- 4/1は何の日 : 2005年4月1日
- 火遊びカトちゃん : 2000年11月21日
- 鉄ちゃんとしては!!! : 2008年12月29日
- 街で見かけた瓦版 : 2006年10月2日
- 伊予路の秋に友を偲ぶ : 2005年10月26日
- 胃大な鑑定士!!(伊東真理子氏) : 2007年1月18日
- ありがとう : 2005年2月15日