再び・やましき沈黙

疚しくとも《やましくとも》沈黙を守っていればその方が無難であるし、責任を問われることもない、世慣れた処世と評されることでもある。 でも、自らの良心に照らして、やましき沈黙でありや否やという問いかけは常に必要なのであり、沈黙を守ることは”美”でも、”善”でもなく、ただの不作為という無責任なのだと、常に思い定めていたいのである。 こんな風に書いたのは2009/09「疚しき沈黙」だった。 今、ずいぶんと憂鬱なのである。 黙っていれば無難なのだと判っているのだが、黙っているのが疚しくてならない、だから憂鬱なのである。

疚しき沈黙:その1
ウクライナ問題がなにやら気になる。 クリミア半島へのロシア介入について、最初は大国ロシアの横暴さとか、旧ソ連の復活とか、帝政ロシア以来の南進政策なのかとか考えさせられた。 ソチ五輪のさなかに開催地の間近でよくやるなとも考えた。
しかしながら、時間の経過とともに事はそんなに単純ではないのではと思うようになった。旧ソ連解体以来のウクライナの混迷は、親露政権と反露政権の攻防の歴史であるが、それはまたロシアとヨーロッパ&アメリカの代理抗争の歴史でもあったのだと考える。

そうでなくともウクライナの地政学的位置は、ロシアの柔らかい下腹部であり、ロシアと西欧との緩衝地帯であり、ヨーロッパの穀倉地帯である。 原発事故のチェルノブイリはウクライナ国内にあり、ヤルタ会談が行われたのはクリミア半島のヤルタなのである。 正しい情報といってもどちらの側から見ても正しい情報というものや正確な情報などというものは、なかなかに得られないものだとも思わされる。 《ことは、そんなに単純ではないし、アメリカが常に正義というわけでもない。アフガンを巡るソ連とアメリカ:CIAとの攻防でもそうだった。》

疚しき沈黙:その2
先週以来、台湾が騒がしい。 台湾の馬英九総統が中国と結んだ「サービスと貿易協定」が問題となっているようだ。 単純に考えてみても、より深化した自由貿易協定《一体化の進んだサービス・貿易協定、TPP中華版》を締結すればどのような結果がもたらされるかは自明だろう。 13億の中国と23百万の台湾が、経済的に相互乗り入れをすれば、経済的かつ合法的な中国による台湾の吸収合併になりはしないかと懸念するのは当然のことだろう。

中華経済圏とか漢民族の版図というものを考えるとき、国内では少数民族の自治とか経済的共存とか優位性というものが問題となるのであろうし、国外というか圏域という視点からは香港での一国二制度、台湾との国共合作などが問題となるのであろう。ここでも正義がどちらに存在するのか、そもそも正義などと云うものが存在するのかが問われている。 《自国正義は自我と同義でも有ろう。》

さて、アメリカの仲介で日韓首脳会議に臨むというか、アメリカに助けられて《後押し、または諭されて》、韓国との関係改善に臨む安倍総理、北方領土との関係からロシアとの良好な関係を進めたい安倍総理は、この二つの錯綜するパズルをどのように解こうというのであろうか。

疚しき沈黙といえば、沖縄・竹富町教科書問題も見過ごせない。 日本中枢《霞ヶ関や永田町》と沖縄との事案は、常に「琉球処分」を思い起こさせる。

ずいぶんとマイナーな疚しき沈黙:その3
日鑑連の閲覧事業特別会計が大幅な黒字決算を計上する見込であり、予想を大きく上まわる剰余が予想されるという。 あくまで伝聞情報であり確認はとれていないが、閲覧事業は相当額の剰余を生み出しているという。 この事例資料閲覧事業で剰余を出すことが予想されなかったわけではない。 収支予算のうち、閲覧収入は手堅く保守的に計上し、評価員手当や士協会配付金支出は手堅い収入見込の範囲内で積算していたから、閲覧需要が回復すれば黒字計上は自明のこととも云える。

問題は、この剰余金の処理である。 剰余が出れば閲覧料の切り下げ要求をはじめ、評価員手当や士協会配付金の増額要求が噴出するのであろう。 しかしこの際に問われるのは、選択と集中であろう。 閲覧事業特別会計は取引情報に係わるものであるから、この特別会計のなかで閲覧システムの増強や整備に係わる事業、取引情報そのものの充実に関わる事業を強化すべきであろう。 その種の選択と集中を戦略的に行えるかが問われているのであろう。
※参考 「第二次新スキーム改善 §Ⅵ 《改善特別委宛の上申書》 2012.09.29」

もっとマイナーな疚しき沈黙:その4
年初以来の鑑定業界では鑑政連《不動産鑑定士政治連盟》と議連《不動産鑑定士制度推進議員連盟》設立が話題となっている。 議連を設立し政治活動を強化し、地価公示を増強し鑑定評価の社会的位置を高めようと云う話である。 日本不動産鑑定士政治連盟は、「議連を立ち上げて、国民経済や不動産市場の発展のため、鑑定評価制度の充実化、地価公示制度のインフラ機能確保などを進めていきたい。」と考えている。

しかし、足下の鑑政連では会費の納入率が低いままであり、盛り上がりに欠けることが悩みの種である。 号令一過、資金が集まり皆が同じ方向を向くという時代でもなかろうし、そうでなくとも俺がオレガ意識の強い鑑定士業界なのである。 鑑政連の組織強化には地方組織《地方鑑政連》の強化というか、都道府県単位の都道府県士協会と連繋する組織の確立が急務であろう。

その場合にも、地価公示のインフラ機能強化を前面に掲げるだけでは、東京都における鑑政連の機能強化はままならないであろう。 なぜなら、東京士協会における地価公示の占めるウエイトが低すぎることがある。 全国会員の半ば近くを占める東京会において、地価公示従事会員数は全体の三分の一未満なのであり、地価公示が求心力を高めるモノとはなっていない状況がある。

 

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