朝まで不生テレビ

昨夜と云うより今朝方のことである。3.11震災特集ルポルタージュ番組を見ていた。チャンネルを切り替える際の番組表示で朝生テレビが眼にとまった。中途半端な議論、やたらと声高な出演者や他者の話をさえぎる無作法な出演者が嫌になって久しく見たことは無いけれど、出演パネラーの何人かが興味を引いたから、しばらく見ていた。

3月11日(金)深夜:朝まで生テレビ“日本の原発”を徹底討論
司会:田原 総一朗
(パネリスト)
山本一太(自民党・参議院議員)
福山哲郎(民主党・参議院議員)
飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
池田信夫(アゴラ研究所所長)
嘉田由紀子(前滋賀県知事、びわこ成蹊スポーツ大学学長)
小林よしのり(漫画家)
桜井勝延(福島・南相馬市長)
澤田哲生(東京工業大学原子炉工学研究所助教)
田坂広志(多摩大学大学院教授、元内閣官房参与)
西本由美子(NPOハッピーロードネット理事長、福島県在住)
三浦瑠麗(国際政治学者、東京大学政策ビジョン研究センター講師)
吉野実(テレビ朝日報道局原発担当)

『高浜原発の再稼動停止仮処分について』
大津地裁・仮処分決定は、高浜原発の近隣自治体が定めた事故時の避難計画に触れ、「国主導の具体的な計画の策定が早急に必要」と指摘している。この避難計画も視野に入れた幅広い規制基準が望まれ、それを策定すべき信義則上の義務が国には発生しているとも述べている。

避難計画の是非などについて、原発再稼動推進派《自民党、他》と慎重派及び否定派の議論が全く噛み合ない。推進派は原子力規制委員会は世界最高度の規制基準を定めているのであり、それに適合するから再稼動するのだと主張する。避難計画は地元自治体の所掌事項であるという。

否定派は重大事故の再発が完全には否定できない以上、住民の安全を守る避難計画は必須であり、それは20km圏域にとどまらず30km圏域も含めて策定すべきであると主張し、立地自治体以外では30km圏域であっても避難計画が策定されていないと主張する。同時に地震や津波と同時に発生する危険性がある重大事故時においては、自治体の枠を超えた国の主導と関与が必要だという。

議論が噛み合ない原因は3.11原発事故に匹敵する重大事故が発生した時に、机上の空論的避難計画は画餅になるだろうという認識が共有されていないことにある。地震や津波は道路を寸断し、瓦礫の山が避難経路を遮断するであろう。圏域外から避難区域に救援に入る民間のバスなどの避難手段は閉ざされるだろう。自家用車は避難区域内の車だけに限らず、屋内避難区域の住民も自主避難を始めるだろう。

道路は大渋滞を招くだろうし、燃料切れで路上停車する車も少なくないだろう。既存の道路を用いた避難などと云うもの自体が画餅なのである。海上から空路《大型ヘリコプター》からの警察・消防そして海上保安庁及び自衛隊の救援が不可欠であろう。しかるに、未だ画餅すら描かれていないのであり、計画策定のロードマップすら見えないのである。

原発事故の避難計画と云うものは、既存の道路や鉄道は使えなくなると云う前提に立つことが必須なのであり、避難先すなわち受け入れ自治体の支援協力が不可欠である。また避難者は30km圏域に止まらず、40km、50km圏域にも及ぶことが推定される。3.11原発事故の発生時には西風が吹いていて放射能汚染粉塵は太平洋に流れたが、風向きが南東風に変わって30km圏外の飯舘村が汚染されたのである。

《北よりの風が吹いていて、利根川や東京の水源地が汚染されていたらと云う想像が必要なのであり、それは想定外事項であってはならないのである。琵琶湖の汚染を危惧する滋賀県民の懸念はもっともなことである。原発を再稼動させる以上は、ここでも避難計画に「想定外事項」は許されないのである。

次の噛み合ない論点は「リスク・ゼロ」である。原子力規制委員会に限らず科学者は「原発にリスクゼロ」は無いという。そして事故の発生は確率であるという。重大事故を引き起こす地震や津波は千年万年に一度のことであり、事故確率的に云えば、自動車や飛行機の方が発生確率ははるかに高いのだと云う。だから安全性は担保されていると云う議論建ては杜撰に過ぎるだろう。

交通事故や飛行機事故と原発事故を対比することが、そもそも筋違いなのである。交通事故の発生確率は確かに高いであろうが、同時に被害者は限定されるし、事故の後遺症も限定的である。しかしながら原発事故は数十万人ときに百万人単位の住民に大きな被害をもたらすものである。残留放射能の影響は百年千年のちまで被害を及ぼすのである。

もしも交通事故と原発事故を確率論的に比較しようとするのであれば、このような数式が用意されなければならない。そうでなければ論理的な比較とはならない。
それぞれの事故確率=発生頻度×人的影響範囲×残存後遺症期間
※発生頻度:大規模地震・津波の発生確率
※人的影響範囲:30〜50km圏域内の居住者等
※残存後遺症期間:放射能の残留期間

それにしても、田原総一朗氏の司会は相変わらずだった。議論を中途で打ち切るし、発言の途中でさえぎるし、傍若無人さは加齢とともに激しくなったように見えた。多分、彼に云わせれば、「議論を打ち切ったり、発言を中断させないと、一方に不満がたまり、ひいては出演者が集まらなくなる。番組の構成上やむをえないこと」と語るのであろう。

《閑話休題》お口直しに、我が鄙里の花をひとつ。いずれも藪椿である。藪椿であるが、いわゆる椿色、ピンク色、そして白の藪椿である。いずれも実生であるが、椿色、白色の藪椿は5mちかい樹高である。ピンク色だけは2m程度である。20160312yabutubakiこの花の名前は知らない。雑草の花である。枯れ草のうえに最初に芽吹いて、径1cmにも満たない小さな花を咲かせている。仏の座と並ぶ野花の春の使者である。《名前を図鑑で調べてみたら、調べない方が佳かったみたいだ。その名はオオイヌノフグリとある。漢字で書けば大犬の睾丸である。》20160312nobana

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