加賀秋日和

彼岸花が咲きやすいように、良く見えるようにと土手の草刈りを終えた先日のこと、所用で久しぶりに帰省した次男に誘われて金沢を訪れた。金沢郊外・金石港で寿司を食べ金沢21世紀美術館を訪ねようというわけである。

《金石港の寿司》
十年も前に訪ねた記憶を頼りに、古くからの町筋に探し当てた店構えは変わりなかった。でも、楽しみにしてきた寿司はイマイチだった。地物十貫握りが何か物足りない、エッジが効いていない感じなのである。初めて訪ねた次男はともかく、同行した家人も首を傾げていた。

「北陸新幹線効果を期待していたけれど、期待ほどではなかった。駅周辺などに集客されて逆効果気味です。」と語る、大将の話が全てを物語っているのかもしれない。《何よりも、九月始めの金石港に旬といえるほどの魚は少ないのが一番の理由かもしれない。 もう一つ、十年一昔ということであれば、往時の名残りを垣間見ただけで良しとすべきなのかも。十年もすれば店も主人も客も変わる。》

金沢21世紀美術館
次男が暮らす瀬戸内の島に所在する美術館と設計者を同じくすることから、一度は訪ねておきたいとやってきたものである。美術を語る感性を持ち合わせていない茫猿だから、展示内容についてはサイトに譲るが、なかで興味を引いたものを幾つか。先ずは屋外の恒久展示コレクション・ラッピング ニュジーランドからやってきたという幼女が楽しく遊んでいた。「May I take a picture?」と話しかけたら、父親は快く承知してくれたのだが、肝心の彼女はカメラ目線をくれない。地下駐車場から美術館フロアに向かうエレベーターというかリフト。B1と1Fのみを結んでいるガラス箱を、持ち上げ持ち下ろす円筒が見える。

美術館を出てから、町歩きか東へ向かうかと思案した次男は、空模様も下り坂なことから越前蕎麦に永平寺と目標を定めて西へ車を向ける。

永平寺
九月始めの平日で、閉門時間(pm.5:00)も近かったから、境内も七堂伽藍も静かなものであり、山門、仏殿、法堂(はっとう)、祖師道元を祀る承陽殿のいずれもが人影まばらだった。何度か訪れている永平寺であるが、法堂や承陽殿まで奥深く巡ったのは初めてである。永平寺境内入り口の龍門。山門より中雀門、仏殿を臨む。
色づき始めた法堂前の山楓。 《けんぞう蕎麦、久しぶりに納得の蕎麦》
越前蕎麦を武生あたりで食べようかと話していたら、次男がスマホで探した蕎麦屋がこちらである。永平寺からの帰り道、北陸自動車道に入るまでの農家集落の中に目指す「けんぞう蕎麦」は、何の変哲も無い仕舞屋として佇んでいた。家人などは「大丈夫かしら?」と言ったくらいである。

メニューは越前定番の”おろし蕎麦”、”けんぞう蕎麦”、”五合蕎麦・10合蕎麦”の三種類だけである。”おろし蕎麦”は大根おろしと”そばつゆ”のぶっかけ蕎麦である。一般的な越前蕎麦であるが、大根は青首大根のおろしだそうである。”けんぞう蕎麦”というのは、辛味大根の絞り汁と蕎麦つゆが出されるから、好みで辛味を調節する。爽快なほどに見事な辛さである。

判らなかったのが”五合蕎麦・十合蕎麦”である。じっくりと店員さんの説明を伺えば良かったのだが、夕刻近く閉店時間も迫っていたから慌ただしく注文し食したのが拙かった。五合とは2〜3人分、十合とは4〜5人分の蕎麦の量を云い、おろし蕎麦とけんぞう蕎麦の両方を楽しめるメニューなのである。

パンフレット写真を見れば、ざるに盛られた蕎麦に加えて、青首大根おろし、辛味大根絞り汁、削りカツオ、刻みネギ、蕎麦つゆなどが盛られている。好みで辛味調節してお食べあれということである。なるべく早い時期に、できれば紅葉の頃にでも、けんぞうの五合蕎麦を食べに来たいものである。食べ終わって、店の外に出たら営業看板は”閉店”に変わっていた。《永平寺町松岡春日3-26、月曜休み》

讃岐のうどん屋さんの多くは写真のような設えである。安くて旨いうどんを提供するためには店の構えや”設え”などに構ってはいられない。清潔であればいいだろうと考えているのであろう。この店の構えもいささか雑然としているけれど、十割という蕎麦は美味かった。

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