不動産インデックス

 不動産投資インデックスや国土庁が企画しています「賃料インデックス」が話題となっています。鑑定協会としても資料委員会所管事業として「不動産インデックス作成事業」が今期の主要課題として取り上げられています。膨大なデータを駆使して全国的且つ統一的な不動産インデックスを作成するには、中立第三者機関として鑑定協会が最も相応しいものといえましょう。
 別の観点からは公益法人である鑑定協会には、「不動産インデックス」を作成し社会に公表する責務があると思います。今何を始めるべきかについて私なりの考えをまとめてみました。いささか、泥縄的でありますから間違いや勘違いが多いと存じますが、皆様の検証と吟味をお願いします。


 不動産インデックスと云う場合に、不動産投資インデックスを指して云う場合が多いものである。しかし、広義に不動産インデックスを云うときには、不動産価格インデックス、家賃インデックス、地代インデックス、建築費インデックス等々多くの不動産関連指標が挙げられる。
 代表的な地価インデックスは、地価公示価格であり、地価調査価格であり、相続税路線価であり、日本不動産研究所・市街地価格推移指数である。代表的な賃料インデックスは、消費者物価の家賃統計であり日本不動産研究所・全国賃料統計がある。代表的な建築費インデックスは、新築着工統計や建設物価指数等がある。
 今、改めて不動産インデックスが問われているのは、後述の経済戦略会議答申を初めとして、社会全般より鑑定評価における収益価格の在り方が問い直され、収益価格をより精緻にして信頼性を高めようとするときに、還元利回りや投資利回りの判定根拠を明らかにしてゆくために、必要不可欠なデータとしての不動産インデックス就中不動産投資インデックスが求められているのである。
 不動産投資インデックスを作成するに必要な基礎データとしては、一般的には地価データ、建築費データそして賃料データが必要となる。では、これらの基礎データは得られないのであろうか。否、既に我々不動産鑑定士の手中にあるのである。つまり、前述のように地価データとしては地価公示を始めとする公的評価の基礎データ及び結果データ、建築費データとしては公表されているものが多くあるし、我々の手許にも賃貸事例及び間接法・直接法収益価格データの一部として存在する。賃料データについても地価公示発足以来の間接法事例が多数蓄積されているのである。ただ、これらのデータが統一的・総括的・網羅的にファイル化されていないだけのことである。勿論、集計分析ツールを確立することも必要である。
 とはいっても、ことはそう簡単ではない。少なくとも過去10年できれば20年間の蓄積データが、紙の資料として適切に保存されているかどうかが先ず問題である。次いで、保存されていたとして、それらの膨大なデータを有効にデータベース化することが大変な作業として存在する。同時にここで作成しようとする不動産インデックス或いは不動産投資インデックスは今後10年20年の使用に耐えうるフレーム設計が求められる。どのような設計をすれば、一番使い勝手がよいのか。得てして、データ収集と入力が容易であることと、データの信頼性や有用性は相反する場合が多い。まさに費用対効果の見極めが問題となるのであろう。
 不動産インデックスを作成し公表することに、どんな社会的経済的意味があるのだろうか。一つは不動産の専門家集団として収益価格を試算するときに採用する利回りや賃料推移予測の判定資料を他者に依存する危うさである。同時に、還元利回りであれ期待利回りであれ、地域的格差、用途的格差、時系列的推移並びに将来予測を明らかにすることが求められるものであり、その判断根拠をも明らかにすることが要請されるものである。
 一つは、データを公表し多くの不動産投資家や宅建業者や金融機関の便益に供することにより、間接的ではあるが鑑定家集団への認知度をより高めることにあり同時に信頼性が高いデータに基づく鑑定評価の信頼度をさらに強固にすることにある。又、内部的には、ともすれば恣意的に扱われかねない価格試算の基礎データについて、一定の範囲や判断資料を提示することにより、価格の第三者的な検証・判定材料を与えることにある。
とまあ、此処まで書いてきて悩んだ。インデックス事業は鑑定協会単独事業が好ましいのだろうか。鑑定協会がデータを提供して、不動産研究所などに委託する方が佳いものが出来るのでなかろうか。その前に鑑定協会が提供できるデータはあるのだろうか。各位は如何に。
【追伸】「不動産鑑定評価に関する基本的考察」を復刻しようと云う提案には多くの方々の共鳴を頂きました。櫛田先生が初代理事長をつとめられました(財)日本不動産研究所では、住宅新報社と協議されて近く重版発行される予定がおありと伺いました。鑑定協会においても重版を後押しされるべく、皆様のご要望を鑑定協会宛にお寄せ頂ければ重版に向けての大いな力となることと存じます。
※※※※※ 引用参考資料 ※※※※※
【インデックス・index】
索引。見出し。指数。指標。
パースによる記号の3区分の1。樹木はそれ自身記号ではないが、風の方向を指示する記号的機能を示す。このように形式(枝の方向)と内容(風向き)とが本質的隣接性をもつ記号をいう。指標。→イコン→シンボル。情報検索で、目的の情報を探すための手掛りとなる文字・記号。
インデックス‐ファンド【index fund】東証株価指数や日経平均株価などの株価指数に連動して運用成績があがるように設計された株式投資信託。【以上、広辞苑より】
【不動産投資インデックスの理論と有効活用法】
鑑定のひろば120~122号・・横田雅之氏筆(99~00期、本会資料委員)
【経済戦略会議答申に盛り込まれた各種提言に対する政府の検討結果】
平成11年6月4日経済戦略会議の答申(234項目)に対する各省庁の検討状況については、下記の分類に基づいて整理した。
A:実現する方向で検討するもの
B:内容について、よく検討した上で結論を出すもの
C:実現のためには、乗り越える問題が多いと考えているもの
項目111 ノンリコースローンの普及・・B・・
また、民間企業の有する情報の開示等は民間企業の判断で行うべき問題であるが、
そのための環境整備として不動産インデックスのあり方について、建設省に置か
れた「不動産の証券化等の活用による都市開発事業推進委員会」において検討中。
【不動産投資インデックスの開発・実用化】
http://www.reinet.or.jp/
(財)日本不動産研究所
D.不動産証券化に係る当研究所支援業務
<目次>
A 不動産証券化・不動産投資支援業務について
B 「不動産証券化」当研究所支援業務
 1 SPCを活用した証券化
 2 「不動産の証券化」に関する当研究所業務のご案内
(5)不動産投資インデックスの開発・実用化
 不動産投資市場に必要な情報を提供する公益事業として、本格的な不動産投資インデックスの開発・実用化に着手しました。なお、このプロジェクトに関しては、イギリスの最大のインデックス会社であるIPD社(Investment PropertyDatebank社)との技術提携により進めることを検討しております。
日不研に関しては、不動産調査月報9月号に「不動産投資家調査(第一回)の結果概要」と題する記事が掲載されています。
【不動産投資インデックスとは】
http://www.stbri.co.jp/cafe/no24-1/24-1-1.html  住友信託銀行
「不動産投資の意思決定のための資料」
 有価証券投資にあたっては、日経平均株価や東証株価指数等が個別銘柄への投資に際しての判断材料として利用可能です。一方、収益用不動産投資については債券・株式投資に比べ、投資判断に利用可能な市場データは極めて限られており、特に長期間にわたる収益の推移および指数化した収益率指標は皆無であったといえます。
 しかしバブル崩壊後、地価に対する見方が変化するにつれ、不動産投資の視点も従来のキャピタルゲイン中心の考え方だけではなく、インカムゲインも含めた総合的な評価が重要となってきました。そこで投資意思決定に資するデータとして、個別物件の総合的利回りを評価するための標準的指標が必要となるわけです。
 オフィスビル等の収益用不動産に投資した場合に得られる収益は、テナント賃料収入から経費を除いた各期の純収益(インカムゲイン)と不動産価値の増加(キャピタルゲイン)からなります。不動産インデックスは過去における実績に基づいてこれら各々の収益性を総合化・指数化し、投資価値の時系列的な変化を示すものです。
【不動産投資インデックスとは?】
http://www.ikoma-cbrichardellis.co.jp/mtb/2-1.html
生駒シービー・リチャードエリス(株)
生駒データサービスシステムと三菱信託銀行は不動産業界、金融業界で培ってきたノウハウを結集し、MTB-IKOMA不動産投資インデックスを開発いたしました。ニュースリリース(全文掲載)もあわせてご覧下さい。
不動産投資インデックスとは、標準的な不動産投資収益率を指標化したデータです。株式投資の世界ではTOPIX、日経平均などがインデックスとして広く認知されていますが、その不動産版と考えていただければ良いでしょう。
MTB-IKOMA不動産投資インデックスとは?
地価公示法に基づいて設定される標準地(商業地)に容積率限度いっぱいの建物(オフィスビル)を想定し、当該土地建物の収益率を算出するという方法でインデックスを作成しています。
MTB-IKOMA不動産投資インデックスの特徴は?
・成約事例12,000件をベースに作成
・重回帰分析による賃料モデル式を開発
・インデックス対象ゾーンは全国73か所
・ビル規模別のインデックス算出が可能
・四半期毎のデータ更新
・長期に渡るデータの整備
MTB-IKOMA不動産投資インデックスの主要データ
(丸の内、千代田区、主要 3区、東京圏)
・総合収益率
・ 単年度インカム収益率
・単年度キャピタル収益率
・不動産投資指数
・ 投資時期別 5年保有収益率
・ 投資時期別現時点収益率

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