台抜き、私益業益公益、オジイサンスタイル

暑い々々といっていた夏も、お盆が過ぎてようように鎮まりつつあるようです。近づいている14号台風が行き過ぎれば、秋風が身近に感じられるようになるでしょう。 ところで、先号の夏休み三題では、少し他者に厳しい話を書いたように思います。茫猿の思い上がりとお受け止めの読者の方も少なくなかったのではと、頭(コウベ)を垂れています。


『私利私欲の抑制』
今週の日経ビジネスに丹羽宇一郎氏(伊藤忠商事社長)が、「リーダーは私利私欲を自制せよ」と題するコラムを書いておられます。昨今の米企業会計の不正疑惑から書き起こして、コーポレートガバナンスや制度改革に偏する論点の問題点を衝いているのです。
主旨は社外取締役や企業監査制度の充実は必要なことであるが、それで全てが解決するわけではないと説き、企業TOPの高い倫理観が求められると述べられています。(写真で拝見する丹羽氏のお顔は仁者の趣がみえます。)
茫猿の乏しい知識から考えても、米欧資本主義がピューリタンに源があり高い倫理観に支えられていた歴史を持っていること。日本資本主義(商人道)は儒教や武士道に裏打ちされた倫理観を持っていたこと。特に日本のそれは「三方佳しの商い哲学」に要約されるものであり、「売り手佳し、買い手佳し、そして世間佳し」の三方佳しを旨とする伝統的商人道があったと思います。
勿論、個人の倫理観のみに期待するのは荷が重すぎるでしょうし、性善説に傾き過ぎることでしょう。でも、Y印食品やNハムなどいずれの場合でも、企業への矮小偏狭な忠誠心が引き起こしたことであり、自己の業績とか出世意識が背景にあったことは否めないでしょうが、直接的私利私欲意識は乏しかっただろうと思います。やはり「寝ていないのだ」と記者会見を打ち切ったり、「知らなかった」と涙を流した経営者に本来の倫理観が乏しかったのではと感じます。
さてそこで丹羽氏も述べるのですが、「リーダーたる者は私利私欲を自制すべし。」となるのです。誰とても無欲では有り得ません。よく「無欲は大欲に似た
り」と云うではありませんか。自制する抑制するという意識を忘れないと云うことであり、それが最も困難なことであるからこそ、長く地位に止まらない(地位保全に汲々としない)と云うことではないでしょうか。高い倫理観を持って(維持するように努力して)、業務に全力投球するなどと云うことが長い期間続けられると考えること自体が驕りなのだと考えます。 簡単に云えば、会社人であっても社会人ではなかったというだけのことです。
『台抜き』
話変わって、台抜きのことです。
台抜きとは、薬物(ヤクモノ)蕎麦例えば天ぷらそばの蕎麦抜きのことを云います。池波正太郎氏の世界などではよく登場するモノです。
昼下がりや夕刻少し前、そば屋が混み合っていないときに、小揚がり座敷で台抜きの天蕎麦とお酒を頼み、酒が終わったらザルかモリを頼んで一餐にするという食事です。この場合にお酒の追加は行わないのが礼儀です。そば屋は居酒屋ではありませんから、薬物の天ぷらで食前酒的にお酒を頂き、ザルで締めるというのがマナーです。尚、台抜きから派生したのが「板わさ」です。
つい先日のこと某有名蕎麦店で季節限定の鱧(ハモ)蕎麦が品書きにありました。たまたま小揚がり座敷に席をとっていたことでもあり、鱧蕎麦の台抜きと蕎麦焼酎の湯割りを注文したのですが、店員さんは「ハァー・・・」と怪訝な顔です。 台抜きを説明して恥をかかせたり、厨房に注文を通してから「そんなのできません。」と断られるのも厭だったので、「イヤイヤ、宜しい。鱧蕎麦と湯割りをお願いします。」と直ぐに注文を替えたのです。
ところが、同伴者いわく、「そういう風に、手を振りながら早口でイヤイヤと
注文を直ぐに変更してしまうのは権高で横着だ。」と云うのです。店員さんが怪訝な顔をしたら、丁寧に台抜きの説明をし注文が受けてもらえないのなら快く別の注文をすれば佳いのですと云い、茫猿の態度は店員さんも相席者も不快にすると厳しく叱られました。
どうやら茫猿の悪い癖であるようでして、茫猿にすれば見切りが早いと云うことなのですが、歳相応にゆっくりと応対をする方が好ましく見えるようです。蛇足ですが、湯割りで頂いた鱧蕎麦は二日酔いの胃袋に心地よく納まりました。
湯割りのアテに出された蕎麦味噌も好ましいお味でした。
『後一題・オジイサン』
オジサンとかオバサンという単語は、もともとは敬称であったはずですが、この頃はオジンしてるとかオバンしてると云うように使われて、からかいの意味が濃くなっています。そこで、オジイサンするとかオバアサンする勧めを何処かで読みました。(掲載誌紙名は忘れました)
云ってみれば横丁のご隠居に通じる話でしょう。
それなりの経過年数を経ており、成功体験は乏しくとも失敗経験は豊富にあり、直接突き上げを喰らうオジサン達と異なって、距離をおく余裕もあり、少し冷たく、少し暖かく、「ヤッテミナハレ」と応援し、「これだけは気を付けなさいよ」とアドバイスもできるオジイサンになることの勧めです。
まだまだ先頭に立とうとする「オジサン」達ならば、今時の若い者はと云うところですが、気力はあるように思えても体力が続かない「オジイサン」を自覚すれば、サポーターとして結構好い存在感があるのではという話です。
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・・・・
8/15の日経朝刊は、お盆中にもかかわらず注目記事が多いことでした。
1面TOPでは、道路公団の六社再編案が掲載されています。
9面囲み記事では、ゴルフ場倒産件数が記事になっています。
10面では、イオンとヨーカ堂の出店戦略記事があり、11面では2003年オフィスビル問題が記事となっています。
・2003年のDCF収益価格は、どうなるのでしょうか。
13面では公認会計士協会会長が情報開示について語っています。
・鑑定士協会も対岸の火事ではないと思いますが。
極め付きは23面の「競争社会のモラル問う」と題する論考です。
ところで茫猿遠吠は、さきの「オジイサン」道の茫猿的スタイルです。只管打座と併せれば、もっと好ましいスタイルになるだろうと自讃しているからこそ老猿孤嘯でもある訳です。
どうでもよいことですが、
台抜きという用語が通用しなくなった昨今のお蕎麦屋さんですが、ザル蕎麦とモリ蕎麦の区別が、器(ウツワ)の違いや、きざみ海苔がかけてあるかないかだけになって随分久しいです。流派によって違うようですが、器もさることながら、そば粉が違ったり「そばつゆ」が違ったりするのが本来でして、海苔の有無だけで百円から弐百円も差があるのは解せないことです。
発信者 台風一過の秋風を待ち侘びる老猿孤嘯

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