現代犯罪者心理

【只管打座・・現代犯罪者心理・・02.09.02】
 茫猿はかねてから、『鄙からの発信』誌上で宮崎学氏の Web Site 「ゾロメ・
ドット・コム」を、推奨してきました。推奨の理由は幾つかありますが、最大の
理由は、いわゆるマスコミや通俗派TVコメンテーターや一般常識人とは、異な
る視点から、社会問題や政治問題などを辛口に真っ向微塵に、時に斜めに切り下
ろす切り口の鋭さが好きだからです。
 彼の論旨の全てを賛成するわけではありませんし、彼のシンパでもありません。
しかし、彼の切り口は茫猿がモノを考えるときに大きな参考になるのです。
彼は、作家でありベストセラーも上梓していますが、決して現代社会の主流でも
メジャーでもないと思います。でもアウトローではなく、大きな負担を負いなが
ら己の信じる処を正々堂々と語る語り口が好きです。
 ZORRO-ME.COM URL  http://www.zorro-me.com/miyazaki/index.html
 9/1付のZORRO-ME.COM 記事「キツネ目事件調書・塩釜女子高校生殺人事件のア
ホカイナ」は、示唆に富む事件論評であると興味深く読みましたので、その一部
を引用して、読者にご案内します。
ZORRO-ME.COM 記事より部分引用
 今回の事件を見て俺は思ったのだが、最近のバカどもは、世の中に対して大き
な思い違いをしている。といっても、道義心に欠けていると言っているわけでは
ない。人間が生きていくうえで知っておくべき知恵が足りないのだ。
 まず、被害者と容疑者も出会い系サイトで知り合ったらしいが、連中は携帯メー
ルや電子メールは匿名性がある、だから多少ウソを言っても大丈夫、と思ってい
るようだが、それは大きな誤解だ。だれといつ連絡を取ったのか、そのデータは
電話会社やネットの接続業省にすべて残っている。むしろ、すべてのぞかれてい
ると言ってもいいくらいである。今や匿名性を守りたいと思うなら、手紙のほう
がマシなくらいなのだ。
(中略)
 要するに、最近は、売春から殺人までやってるのが、みんな素人ぱかりという
ことなのだ。かつて犯罪心理学では、殺人を犯す瞬間にはある種、今までの意識
からハードルをを一つ飛び越える必要があると言われてきたが、最近の犯罪疑者
は何も飛び越えていない。極端に言えば日常の中で人殺しを淡々とやりのけてい
る。これはかなりヤバいぞ。
 容疑者の男は被害者の携帯電話で被害者の友人や家族にもメールを送ることで
事件の発覚を遅らせようとしたり死体遺棄の際にコンクリートブロックを腹に巻
き付サているが、冷静だからできるのである。
(以上、引用終了)
 宮崎氏は、かねてより盗聴法に反対し個人情報保護に論陣を張っておられます。
権力と常に対峙することに、氏の人生を掛けているようにも見受けられます。
 そのことはさておいて、便利な道具に潜む罠について何の知識もなく、その便
利さだけを器用に使い廻す、若者を中心とする最近の風潮について、使い廻す果
ての愚かさ、便利さの陰を知らずに使い廻すことの危険さを、この稿では警鐘を
鳴らされているのだと考えます。
 ずいぶん前、モータリゼーションが始まった頃、「車は走る凶器とか、走る棺
桶とか」云われました。そのひそみに倣って云えば、「携帯電話は歩く凶器」と
でも云えましょうか。携帯やInet・Emailが直接凶器となる訳ではありませんが、
逆に車のように、その有する凶器性がなまじ見えないだけに、余計に危険性が高
いのかもしれません。
 携帯電話などは優しく便利な顔をしていますが、瞬時に日本中世界中を駆けめ
ぐる怖さ、匿名性の見かけの裏で全てをウオッチングされているであろう怖さ、
便利で簡単であるが故にそこに現れるバーチャル空間の怖さを感じます。
 Inet・ Emailにはまだデジタル・デバイドが多少は存在しますが、携帯メール
や携帯出会系サイトにはデバイドも存在しません。小学生から老人までが抵抗な
く利用できるほどに、ユーザーフレンドリーであり、利用環境が簡単に手に入り
ます。
そして、そのことが「アホカイナ」という愚かさを招いているとしたら、便利さ
の罪は大きいことだと感じます。
 引用文中で宮崎氏が指摘するように、犯罪者の日常性と犯罪時との間に不連続
な非日常性が存在せず、日常性の連続のなかで罪を犯してしまう現代社会の怖さ
というか不条理というか、この大きな罠に警鐘を鳴らしているのだと感じます。
 携帯電話が用意してくれる架空性とか匿名性というものは、一見しただけでは
そのように見えても、実は連続する日常のなかに潜む罠なのだと云えるのでしょ
う。
 この潜む罠の闇が、深くて暗いからこそ、「今や匿名性を守りたいと思うなら、
手紙のほうがマシなくらいなのだ。」と喝破する彼の警鐘は、ブラックジョーク
と聞き流せない思いがします。
・・・・・・・本稿終わり・・・・・・・

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