晩秋の東信濃

 何かと気ぶせりなことが多い日頃から逃れて、晩秋というよりももう初冬の気配が濃い東信濃を訪ねてきました。
と、語れば、初冬の信濃路を歩く初老の旅人のように聞こえますが、いえいえ、此の春より東京に住まいを移した長男と、此の夏に長野に転勤した次男とが、すれ違いが多くなった家族の久方ぶりの団らんの場を持とうという誘いに乗っただけのことです。私的なあまりにも私的な話ですが、東信濃遊楽記としてお読み下さい。


「土曜日・昼食(のっけから、食い物の話で恐縮)」
 息子達は長野新幹線やしなの鉄道線で会合地上田に向かった訳ですが、我々は中央自動車道で岡谷JC及び更埴JC経由で上田に向かいました。
中央道SAでの昼食は南信地方で名高い「ソースカツ丼」です。
B級グルメのなかでは、上位にランクされる食べ物で、中央道の幾つかのPAやSAで提供されていますが、上位は矢張り駒ヶ根SAでしょう。
※駒ヶ根ソースカツ丼
http://www.komacci.or.jp/katsu/
「会堂の宿・別所温泉・柏屋本店」
 山あいに位置する別所温泉のそのまた奥、北向観音寺の直ぐ隣に所在するのが当夜の宿「柏屋本店」です。ごく近くに柏屋別荘という旅館があり紛らわしいことです。何代か前は同じ経営だったそうですが今は全く無関係と云うことで、ライバル関係にもあるようで、決して仲が良いようには見えませんでした。実は間違えて別荘の方へ案内を求めたら宿違いですと「本店」を案内してくれたのですが、少し不愛想な応対でした。
 柏屋本店は新館四季亭と合わせても客室数15室というこぢんまりした宿ですが、古い木造旅館を巧みに改造してあり、ゆったりとしたよい宿です。
お値段もそれなりのものですが、パフォーマンスはA級と申し上げておきましょう。料理も本館個室でゆっくりと美味しく頂けましたが、難を云えば鍋物がふぐ地理であったことです。信濃でふぐはないだろうというのが実感でして、それならば日本海の鱈ちりだろうと思ったことです。この辺りは好みの問題でしょうけど。
※別所温泉・柏屋本店
http://www.kashiwayahonten.com/index2.html
※別所温泉観光協会公式サイト
http://www.bessho-spa.jp/#
※別所温泉駅

※別所温泉駅、展示車輌

 別所温泉は山あいの静かな温泉場です。初冬のせいだけでなく喧噪感がなく木造旅館が多いのも好ましいものです。既に数館はRC造ですが、これ以上はRC造が増えないことを祈ります。温泉町の中央を流れる谷川のせせらぎも好ましいのですが、川の護岸をもっと水に親しみやすいものに変えたらなおのことよくなるのにと見ました。
 陽が高い内にチェックインして、北向観音、安楽寺、常楽寺の寺巡り、大湯・大師湯、石湯などの外湯巡り、別所温泉駅のローカルターミナルの雰囲気に浸り、保存展示される旧型丸窓電車を眺めるなど、翌朝も陽が高くなってからチェックアウトして、のんびりと肩の荷を下ろすに佳い温泉場です。
 他にも、「風の坂道」という名前もゆかしい喫茶店があります。温かい店内は禁煙ですが、テラスは晩秋の夕映えに照らされる佳い雰囲気です。(コーヒー・600円)
風の坂道のご近所に、蕎麦久という蕎麦専門店もあります。(蕎麦久は11:30~15:00営業でしたから、残念ながら食することは叶いませんでした。)
※風の坂道
http://www.kazeno-sakamichi.jp/

※北向観音(信濃善光寺に向かって北向きに本堂が位置するお寺)

※北向観音境内にある、懸け造りの薬師堂

※岳の幟、童画のように可愛いマンホール

岳の幟について
http://www.shinmai.co.jp/kanko/saijiki/00029.html
 風呂、風呂と湯漬け三昧の一夜明けて、翌朝は無言館に向かいました。
無言館について詳しくは、以下のサイト記事をご覧下さい。
 戦没画学生の絵は何を語るでもなく、まさに無言で見る者に迫ってきます。
鹿児島・知覧の特攻平和館で見た若鷲達の遺影が示す凛々しくも厳しい眼差しが語るものとも違いますし、沖縄ひめゆり平和祈念館にかかげられる少女達の清々しい面影が語るものとも違う感じを受けます。
※無言館
http://www.kk.iij4u.or.jp/~sjmatsu/mugonkan/mugonkan.html

 上田駅から山手に向かう駅前通の途中に「みすず飴(飴と称するが、フルーツゼリーである)」で有名な飯島商店の威厳のある建物に出会います。
この店で販売しているジャムやマーマレードは好ましい味です。
りんご、すもも、あんず、三宝柑、夏柑、ぶんご梅等々、幾つかを味見して、幾つかを買い求めましたが、ビスケットでも持ってたら佳かったと思わされたことです。この季節限定商品ですが「三宝柑福居袋:三宝柑を丸ごと使ったゼリー」に出会えたのも幸運でした。京都北野の老松が夏季限定で売り出す「夏柑塘」に匹敵するお味です。
※みすず飴
http://www.misuzuame.com/1.htm
※京都北野・老松、「夏柑塘」
http://www.oimatu.co.jp/sanjin.html
 みすず飴の次は池波正太郎記念館です。池波氏の遺品・遺稿、スケッチ、風間完氏の真田太平記の挿絵などを拝見しました。
※池波正太郎・真田太平記館
http://www.city.ueda.nagano.jp/shokoka/ikenami2/top.htm
 翌日の昼食は小布施の鼎屋さんで、十割蕎麦と天麩羅颪蕎麦です。
サクサクとした揚げたての天麩羅、辛さ納得のオロシ大根に合わせた十割蕎麦、しかも芥子茄子漬けで頂く地元銘酒一献。至福の昼飯でした。飲めぬ息子も飲める息子も満足したようです。
※小布施 十割蕎麦 鼎
http://www.shinmai.co.jp/soba/datafile/143.html
 旅の最後は、小布施堂で栗干菓子で薄茶を頂き、北斎館でくつろいで閉じました。小布施の町おこし成功の鍵は、北斎と酒蔵の遺産を正しく活用した今人達の知恵なのであろうと感じましたことです。
※小布施堂・桝一市村酒造場
http://www.obusedo.com/
※北斎館
http://www.book-navi.com/hokusai/
・・・・・・いつもの蛇足です・・・・・・
 信州は蕎麦の國である。おらが蕎麦という訳で、町々に名店が存在する。
今回の旅でも名だたる名店を知らなかった訳ではない。しかし、著名店は著名店である。間違いは無いかもしれないが、面白味に欠ける。
 自分の感覚を信じて、店構えから店内を想像して、訪れる。
間違うこともあるが、間違いを重ねると、当たる確率が高くなる。
店の構え、暖簾の在り様など、自ずと判るようになるのである。
 旅は季節はずれに限ると云ったのは、確か池波正太郎であったか。
晩秋、師走、厳冬、梅雨時 などなど 観光客が途絶え地元の人のみに為ったときに町は素顔を見せて持て成してくれるものである。
今回の東信濃も観光客がいない訳ではないが、流石に11月末である。
冬枯れに近い景色を尋ねてくる人は少なく、雑踏からはほど遠い別所温泉場であり、小布施であった。
 旅の醍醐味はなんといっても、朝寝、朝湯、朝酒である。
常よりも寝坊して散歩をし、朝湯に浸かり、朝飯では湯豆腐と鮎の干物を肴にビールを空ける。至福の一刻である。
 昼は天蕎麦台抜きで地元吟醸酒を空け、お八つ時には市村酒造の聞き酒コーナー(有料)でほろ酔いとなる。利き酒のアテに供されたのは「鞍かけ豆」という豆の煮浸しであった。微妙な美味としか云いようがない。 ヨキカナ、ヨキカナ。

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