具申意見書、開示

先日の「鄙から遠望する明日」記事にて、一連のネットワーク構築関連記事は終わりとする予定だったのだが、やはり「上申書」を作って鑑定協会宛に発信することとした。意見を具申したところで何ほどの意味があろうやという視線は重々承知の上であるが、それでも「言うべきは申しておこう」が茫猿流である。


でも考えてみれば、CGMとかWeb2.0と云うものは、こういうことでなかろうか、関心を引こうが無視されようが、実名にて真正面から考えるところを述べ、それを開示して世評に委ねるのである。それが「茫猿が遠吠する」ことなのであり、その挙げ句に些かでも何かの役に立つことでもあるとすれば、茫猿にとっては「以って瞑すべし」なのである。
以下は(社)日本不動産鑑定協会宛に発信した上申書全文である。
【印刷用PDFファイルはこちら】
(社)日本不動産鑑定協会 会長 神戸冨吉 様
2007/11/08
(社)岐阜県不動産鑑定士協会会員 森島信夫

「士協会ネットワーク構築について」
先月末に岐阜県士協会にて、「REA-NETの今と展望」と題するフォーラムが開催されました。そこで提起された様々なご意見を踏まえて、ネットワーク構築に関する私見を具申致します。
一、目標を絞り込むことが重要である。(情報インフラ構築と安全管理)
ネットワーク構築は、構築自体が目的ではなく、構築後のネットワークを利用して何を行うかが肝要なのである。その観点からは、構築目的は「情報流通インフラストラクチャー構築」と単純化すべきである。
同時に地価公示評価員による事例作成・交換から、鑑定協会員による五次データ共同利活用に至る間の各種個人情報流通の安全管理を実現するのも主要な目標である。
オンラインによる個人情報流通の安全管理が実現すれば、他の目標は自ずと達成されるものである。さらに、事例閲覧サービス等に伴う諸問題は全てネットワーク構築後の各士協会所管事項であり、このことは、「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」に定められるものであることも周知すべきである。
二、REA-NETなるものの実態。(REA-NETはインフラである)
現在、(社)日本不動産鑑定協会において構築が進められている(仮称)REA-NETとは、ネットワーク上において提供されるサービスを指すものではなく、「会員録(会員属性登録)とその管理システム」並びに「ネットワーク接続会員認証システム」であることを銘記すべきである。
情報基盤すなわちネットワーク・インフラストラクチャーとして、会員録(会員属性登録)と接続会員認証システムが構築されるものであり、その後において提供される各種のネットワーク・サービスは各士協会の自主的選択に委ねられるものであることを周知すべきである。
現段階で用意または想定されているネットワーク・サービスは、(a)ファイルデータ交換システム、(b)情報交換システム(掲示板、伝言板、電子会議室等)、(c)オンライン地価公示システム、(d)市販グループウエア稼働、(e)個別士協会専用ファイルサーバ稼働、(f)三次事例利用システム、(g)五次事例閲覧システム、等が挙げられる。同時にネットワーク名称もTOPページのデザインも各士協会の意向に委ねられるものである。
各士協会は(仮称)REA-NET上において、以上のサービスの一部または全部を選択して稼働させればよいのである。同時に、これらのサービス稼働費用についても、事例二枚目イメージデータのデジタル化経費を伴う(g)を除けば会員負担額は著しく低額または無償であることも明示すべきである。
三、ネットワークが開く将来展望 (ナレッジマネージメントの実現)
ネットワークの本質は、多くの人間が集まることによって形成される集合知を、ネットワークを利用することにより、いとも簡単に「共有できる社会インフラ」であるところに認められる。
これを鑑定協会及び鑑定士協会という比較的結合の緩やかな組織体に於ける、ある種のSNS(Social Network Service)と置き換えることも可能であろう。
そこで近い将来に実現が期待されるのは新スキーム三次データの効果的かつ迅速な共同利活用の実現であろう。共同利活用の形態については各士協会会員の意向に委ねられるものであるが、その期待される方向性は明示されねばならない。即ち「地価公示スキームにおいて実施される取引価格情報調査」において得られる様々な情報の効果的な蓄積(ファイルデータ化)と利用のあり方である。
取引価格情報の道路幅員や最寄り駅距離、都計用途などの属性情報は テキストデータとしてファイル化され一部地域においては迅速な共同利活用が既に実現している。しかし、取引事例地の地理的位置情報(ジオコードや緯度経度座標値)並びに地形図情報(法務局備付け公図や測量図)については手付かずのままである。現在はイメージ(図示)情報として分類されるこれらの情報について、適切なファイリング管理方法を提示すべきである。
これら新スキーム業務過程において得られる様々な情報を原資として、照会調査に応えて頂いた市民の皆さんへ何らかのお返しをすることも将来的課題として考えなければならないだろうし、それは並行してロングテール的市民サービスの提供にもつながるものであろう。
国交省が提供する「土地総合情報システム・取引価格情報検索サイト」は地価公示価格等と連動するように改善され、要因と価格の相関関係散布図も表示されるようになったのである。全国展開して最初の四半期で4万件のデータを提供する価格情報開示は単なる開示に止まらず地価分析の分野に当然のごとく踏み込みつつある。
であればこそ、価格情報開示の最前線に位置する不動産鑑定士としては、士協会ネットワーク構築が単に、(A)内部に対しての効率化/経費削減の為のシステム構築に止まることなく、(B)外部に対しての攻め/マーケティングの為のシステム構築でありたいと願うものである。
(注)会員属性登録について
会員属性の登録とは「資料の収集・管理・閲覧・利用に関する規程」第25条に規定する閲覧資格要件のネット登録を指すものである。下記の他に、地価公示評価員も属性に含まれよう。
1.鑑定法第15条の規定による登録を現に受けている不動産鑑定士等。
2.原則として 本会定款第5条第3項第1号に当たる会員。
3.同時に定款同条第2項による団体会員の会員である者。
4.第13条に定める認定証を携帯する者。
5.第6章罰則基準の定めにより閲覧を停止されている者に該当しない者。
同規程25条3項では、「以上資格要件の確認は、資料を閲覧に供する士協会等において行うものとする。」と規定するが、会員属性をネット登録することにより確認行為が著しく簡略化できる。
(注)公示等事例カード二枚目(位置図と地形図)のデジタル化について
取引事例地の地理座標値と公図等地形図のスキャニングデータを有効にデジタル保存し共同利活用すれば、地価公示書式レイアウトに従った事例カード二枚目は、それら保存データを基礎資料として自動的に生成の上、印刷可能な技術的環境に既にある。

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具申意見書、開示 への2件のフィードバック

  1. てーて のコメント:

    茫猿氏もご覧になっておられるTV番組「爆問学問」、実は私も毎回録画して見ております。
    昨日放送の数理生態学者 吉村仁先生のお話の中で、「必ずしも強いものだけが生き残るというわけではない」と言っておられました。深く考えさせられます。
    私の上司のS氏は、当然ながら、私などより圧倒的に人生経験も豊富でバランス感覚に優れています。スポンジのような吸収力と柔軟性を備えながら、しかし、決してその知識を強調することはなく、眺めているのは常に人の心と人の動きです。それでいて、したたか。
    これが、エンジニアと営業マンの大いなる差なのだと私は認識していますので、私ができるだけ表には出ない方がいいと考える理由もそこにあります。
    ICTについて色々と考えているうちに、ICTで何ができるのかが徐々に見えてきてしまう。
    そして、おのずと今後の進むべき道までもがそれとなく見えてきてしまう。
    導いてくれるのは、
    トップダウンのリーダーシップ? それとも、ボトムアップを誘発するしたたかさ?
    どちらもあるのがバランスが良いですね。
    ロイター板も、ジャイロスコープも必要だと思うわけで(^^;
    伝わりにくいコメントですいません。m(_ _)m

  2. bouen のコメント:

    強者故に滅亡した恐竜あれば、
    弱者故に生き延びた原始哺乳類あり。
    生者必滅 会者定離
    地球環境の悪化を云うのであれば、
    その最大要因は人類の止まるところ無い増殖なので、
    何よりも繁栄の峠の向う側は降り坂、
    永遠に上昇する地価は無いという教訓はつい最近のこと。
    デジタルの世界が生み出すものがあり、
    失ってはならないアナログの世界もある。
    己の役目はロイター板にも、ジャイロスコープにもなく、
    翻訳者はたまた通訳者でありたいと考えるも、
    それとて、思い上がりか、言い訳か。
    とマァー、 そんな行きつ戻りつを繰り返す日々なので。

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