オンデマンド事例Ⅱ

REA-NETの士協会試行が拡大されてゆくにつれて、地価公示取引事例カード二枚目(事例所在地図や地形図)作成について、究極のデジタル化が実現する方向が見えてきた。今や方向性などではなく、技術的環境を検討すれば、実施するかしないかの決断が待たれる状況にあると云える。


『現行の一般的に行われている事例二枚目作成』 (アナログ作成方式)
プリントアウトした地価公示事例二枚目書式に、所在位置図欄にはコピーした白地図を鋏で切り取って、糊で貼り付ける。地形図欄には同じく公図写しや測量図写しを切り抜いて貼り付ける。地形図は一部手書きする場合もある。作成したこの二枚目を原本としてコピーを分科会会員に交換配布する。
【 書式レイアウトはこちらのファイルを開く 】
『一部で実施されているデジタル化作成』 (準デジタル作成方式)
前掲の方式と手順は同じであるが、コピー図面切り抜きの代わりに、地図や地形図をスキャニングしてモニター上で切り取ったファイルデータを、地価公示支援ソフト上で書式レイアウトに貼り付ける方法である。作成した「事例二枚目イメージデータファイル」は、当然にハードコピーとして印刷配布も可能であるが、デジタル保存してオンライン配布も可能である。 所在地図についてのみ、GISを利用してデジタル地図をモニター上で切り取って、レイアウトに貼り付ける手法を採用している一部士協会もある。
しかし、士協会ネットワークが未整備な現状況では、イメージデータのデジタル配布が容易ではなく、せっかく作成されたデジタルデータも作成会員のパソコン上でのものであり、分科会で交換配布されるのは従来通りのコピー複写書類である。
既に士協会ネットワークが稼働している士協会では、地価公示支援ソフトではなく「市販されているドキュメント管理ソフト」を利用して事例カード二枚目デジタルファイルを作成した上で、オンライン配布交換している例もある。
『茫猿が提唱する究極のデジタル化作成』 (GIS利用デジタル化作成方式)
一挙に全面デジタル化を指向する方式である。概要は次のとおりである。
地価公示等については国土数値情報が公開されています。この数値情報とGoogleMapを利用して作成公開している「岐阜県不動産鑑定士協会DB:地価公示地価調査要覧」があるが、基本的な考え方はこの公示要覧と同じなのである。
市販の地図を背景として取引事例地の地理座標データを取得して保存し、事例地二枚目を作成するときにはブラウザ側でポイント表示位置を計算して地図データを取得し、レイアウトに取り込む。地形図については、法務局配布公図をスキャニングして保存し、二枚目を作成する都度切り取りしてレイアウトに貼り付ける。プレビューにて確認して印刷すれば、公示様式にしたがった書類が印刷できるのである。一連の作業は、プログラミングされてあり、評価員はREA-NET-JIREIから検索した該当レコードに付属する「事例カード二枚目作成」というコマンドアイコンをクリックすれば、プレビューと印刷が実行されるのである。
事例地地理座標をサーバからASP提供される背景地図をクリックして取得するか、所在地情報から緯度・経度 ジオコード(geocode)システムを利用して取得するかは、情報の精度と作成の手間を天秤にかけて検討されるべきものであるが、事例地地理情報としては地形図との併用が前提であるから、可能な限り自動化することにより省力化が優先されてもよかろうと考えるのである。
これらのAPI (Application Program Interface)について、GoogleMapの場合はGoogle Maps Api として、Googleから既に公開提供されているが、Google利用では会員向けのサービスは提供できないことから、それに代わる廉価で使い勝手の良い背景地図が求められる。背景地図についても候補は幾つか存在しており選択検討を始めるべき段階にある。  『GoogleMap利用は全面一般公開が前提となるが、公示作業では守秘義務との関係から利用が困難なのである。』
賢明な諸氏は既にお判りでしょうが、この背景地図を利用すれば、表示エリア内の利用可能な事例地ポイントが地図上に地価公示地点や地価調査地点と併せて一覧表示されることから、事例地の選択もモニター上でビジュアルに実行できるようになるのである。論理的には事務所内から紙データをほぼ全面的に無くすことが可能なのである。  『現実的には印刷した上で目視確認する方が評価作業は確実だし、眼にも優しいのであるけれど。』
以上が、「事例カード二枚目・究極のデジタル化」の概要である。既に技術的には十分可能との回答をエンジニアから得ているし、「岐阜県不動産鑑定士協会DB:地価公示地価調査要覧」等からも理解確認できるのである。 以上の作業はREA-NETを通じて実行生成されるものであり、会員の閲覧にも供されるのである。 つまり、いわゆる取引事例調査・三次データを作成確定すれば、このデータは月次ごとにREA-NETに移管されて事例地二枚目がほぼ自動的に生成されて会員の閲覧に供されるという訳である。これを称して茫猿は究極のデジタル化と云うのである。
肝心なのは、事例カード二枚目をスキャニングデータとしてデジタルファイル化することからは今や離れて、当該ファイルの基礎データのみを取得保存し、必要に応じてレイアウト様式に合わせて生成するということなのである。いわば、事例カードのオンデマンド作成である。
『追記』
事例カード二枚目のオンデマンド作成においては、現行書式の変更も検討されるべきである。アナログ書式に合わせてデジタルファイルを作成するというのは「愚の骨頂」だからである。紙使用量や保存・管理の便宜を考えて、現行書式はA4縦一枚に所在図と地形図を添付させるのである。
紙を使用せず、保存・管理の手間が大幅に省けるデジタル化書類においては、情報量は多い方がよいのである。即ちテキストデータを含めてA4二枚に固執することはないのであり、一枚目要因テキストデータ、二枚目所在地図イメージデータ、三枚目地形図イメージデータという、情報量の多い書式に改訂されるべきと云えるのである。
実はこの手の話をするのはこれが初めてではない、以前から機会ある毎に提案しているのである。でもその都度帰ってくる答えは判で押したように同じなのである。「書式の件は国交省所管だから。・・・・・」、茫猿だってその程度のことは先刻承知の上である。問題は、この提案に意味有りと考えるのであれば、然るべく内部調整の上で、所管庁に提案すべきなのである。地価公示依頼者にも受託者にも利のあることと認めたならば、働きかけを始めるべきなのである。
新スキームの検討初期にも似たような話があった。所管庁担当者は、「うまく機能するだろうか」と心配するし、鑑定士側も思案投げ首というときに、「心配など一つもありません。悉皆調査もネットワークも一部ですが既に数年も前から実施済みであり、経験を積んでいます。」と話したら、皆が愁眉を開いたという経験がある。互いの情報を交換し、より良い方向へ導いてゆくという姿勢が常に求められているのである。

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