予想通りの脆さ

 予想通りの脆さであり危うさである。 何のことかと言えば予想外の大量議席を獲得した民主党のことである。 「マニュフェストに書いてある。」と言えば国民は納得し恐れ入ると思っているのだろうか。 八ツ場ダム然り、借入返済猶予然り、普天間基地然り、児童手当然りである。 民主党を支持したからと云ってマニュフェストの総てを支持したわけではないし、多くの国民はマニュフェストの見出しすら読んでいないかもしれないのにである。 ただ単に政権継続か交替か二者択一、◯Xテストの結果が09総選挙結果として現れたに過ぎないというに。


 勝てば官軍などというのは百年も前の話、今ではたかだか四年間、早ければ来年の参議院選挙で逆ネジレ現象に陥る可能性もある。 その危うさに気づいていない民主・国民新・社民連合政権に思えてならない。 謙虚さとか真摯さが感じられないのである。
 この八月の総選挙結果は獲得議席数で見る限り民主党の圧勝である。民主党は480議席数中308議席(64%)という圧倒的多数を得た、連立では2/3(66.7%)である。 しかし得票率で見れば、小選挙区では49.6%、比例区では42.4%である。 民主・国民新・社民合計でも小選挙区でかろうじて50.6%、比例区49.6%なのである。 このことは小選挙区制の盲点というか特徴であって、それは前回の小泉郵政選挙の裏返しでもある。
 「勝って兜の緒を締めよ」とか「前車の轍を踏むな」などと言わない。 そんなことは当たり前である、自らの勝ちを正しく評価できる当たり前の謙虚さや冷静さが欠けているのではと思わされるのである。 これから幾つかの民主党退潮リスクが予想される。 鳩山総理もファッションショーに夫婦で出て、浮かれている場合ではなかろう、「得意淡然、失意泰然」と言うではないか。 なにもショーに出るなと言うのではない、今のマスコミ種が外遊とファッションショーでは浮かれていると言われかねないと云うだけである。
1.臨時国会の鳩山資金疑惑は乗り切っても、通常国会予算審議で馬脚を現す。
 かつての百戦錬磨ほどではないにしても、自民党はまだまだ「腐っても鯛」かもしれない。 マニュフェスト論戦や景気対策論戦、自民前内閣補正予算見直し論戦で立ち往生も予想できる。
2.景気の二番底に直面し児童手当支給予算が編成できず、赤字国債を増発して来年参議院選挙の論戦で敗れるという予想もある。
 参議院選挙を乗り切り、連立過半数ひょっとして単独過半数を得れば、しばらくは安泰であろうが、でも国民は郵政選挙の見直しを行ったように、2009総選挙の見直しを2010参議院選挙で行うような気がする。 国民は浮かれている民主党よりも厳しい現実に直面しているし、それほど愚かではない気がする。 祭りのあとの「醒めた気分」を国民が感じはじめているということを民主党閣僚は判っていないようである。 2009/08まで食うに困っていた人が、国会議員となり年収2400万円プラス諸手当や議員特権を得たら舞い上がる気持ちも判らないではないが、それでは困るのである。
 民主党にとても好意的だった「永田町徒然草」の最近のエントリーは、こんな具合である。    《政治家失格》   《けっこう危ういぞ
 最も懸念されるのは、国民の賢さと選挙制度や政治制度の矛盾から日本政治がダッチロール現象におちいることである。 債務超過、赤字国債、劇場型選挙と政治、そしてバラマキ衆愚政治の罠に落ち空洞化現象が加速し、日本が二極化し疲弊してゆくことである。
 今はマニュフェストにいたずらに拘ることなく、出来ること出来ないこと、優先順位を明らかにして国政の透明化を図ることなのではなかろうかと思われる。
 茫猿は長野県で田中康夫元知事が宣明した「脱ダム宣言」は基本的に正しいと考えている。 その田中知事がなぜ敗れたかを今一度検証すべきであろう。 長期的にみて正しい政策も短期的に見れば正しくないと云うよりも、利害が反する人達をいかに説得できるか、代替措置を講じてやれるかが問われている。 ハードランディングよりもソフトランディングであり、独りひとりの国民にとって心情的に理性的には脱ダム派であっても、家族親族ときに自身がダム工事関係者、鉄鋼・セメント関係者、ひいてはひろく公共工事関係者という一面を有しているのである。
 何よりも国民は消費者であって生産者または生産組織の一員なのであり、景気浮揚や安心子育てや老後年金を先ず求めるのである。 そこでは十年二十年先の理念など何の役にも立たないのである。 現実に埋没してはならないが、現実と優れた妥協を考えない政治は混乱を助長し、結果として疲弊を招くだけだという歴史の示す回答を見直してほしいのである。
 足許を振り返ってみて、不動産鑑定士も市民であり消費者であると同時に、地価公示・地価調査・固定資産税評価等々官公需依存事業者であり、公共用地取得関連事業者である。 景気後退で民需も縮減するという逆風に直面している。 百年右肩上がりなど有り得ないと承知していても、今は官公需増加を願い民需拡大を願っているのも否めない事実である。

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