新スキームの行方-3

新スキームの行方を考え続けていますが、時々はもうどうでもよいことだと思いもします。もう古びてしまった茫猿などが考えることでも、考えなければならないことでもないと思います。今現場にいる鑑定士が考えるべきことなのであろうと思います。それでも関わってきた歳月を思えば、茫猿の遠吠だけは続けるのが(悲しい)性(サガ)なのであろうと自嘲しながら、この記事を書いています。 新スキーム問題を考えるうえで大切なことは、現実的対症療法に止まることではなくて、現状を正確に分析し、一年内の目標値と工程表を、同じく二年内の、さらに三年後の到達目標を設定することであろうと思います。
取りあえずは、迂遠であろうし散文的に過ぎると思いながらも、様々な状況を一つ一つを書き記すことから始めます。


それにしても新スキーム問題を考える上で見落とせないのは、全国の状況が同じでないと云う現場の落差です。あまりにも違いすぎる現場の落差が問題の混迷を深めています。
1.地価公示すなわち新スキーム関与率
地価公示などのいわゆる公的評価に関わる会員数の割合が一様ではないこと。 それも既に関わり終えた会員と、現に関わっている会員と、将来は関わるであろうと見込まれる会員とを合わせれば、限りなく100%に近いエリアと、どう考えてみても50%に至らないエリアとが混在しています。 前者にしてからも一様ではなくて、固評や競売の関わり方が濃淡様々な陰影を落としていますし、そこに至った無視できない経緯もあります。
2.士協会の規模
単位士協会の会員数も数十名クラスから千名を超える士協会まで、同じ士協会とは思えないほどの落差が存在します。
3.士協会毎の閲覧実施状況
現在の新スキームというか、事例に関わる状況も、デジタル化が進み士協会内会員であってもオンライン有料閲覧制度を施行している組織と、独自の閲覧システムを運用したり、単一分科会内あるいは数個の分科会を取りまとめて事例交換を行っている組織もあります。分科会が事例交換組織として機能しているエリアでは、士協会外の会員に対しては事務局におけるアナログ的閲覧の便宜を図れば事足りるという状況です。それらを一括して一刀両断することなど、とんでもない荒療治なのでしょう。
《A士協会からのメールより》

 事例問題に関して地方圏の鑑定士は被害者意識が強いのではないか、とのご指摘は一面あたっているところがあるかもしれません。しかし、全国の事例を安価にネット上で取得できるようになると、ダンピング競争が激化している中、全国に評価対象が散らばる大量案件等では、事例の収集経費が下がることにより、地方の業務提携先に下請料金引き下げのプレッシャーがかかるようになるか、元請業者が業務提携先そのものをスキップしてしまう畏れがあります。
ようは、元請けの安値受注がさらに増えるだけで、その結果、全国的入札案件にも影響し、さらには地方の受発注にも影響が波及することを心配する向きは多いだろうと思います。現にこれまでもこのような形で負のスパイラルが進んできたはずです。この点については、貴兄が仰る「安値受注や依頼者の不適切要請を同時並行的に打開しなければならない」とのご指摘には全く同感です。しかしながら、ダンピング規制や依頼者プレッシャー問題は即効性のある妙案がなく鑑定協会も手をこまねいているのが実態ですので、鑑定協会執行部の空手形と引き替えに、大事な取引事例・閲覧収入を手放すわけにはいかないとの思いがどうしても先に立ってしまいます。

《B士協会からのメールより》

 小生が漏れ聞くところによりますと、大量閲覧や不正取得など、異常な事態になっているようです。 こうしたセキュリティ問題がフリーライダー問題と絡まり、取引事例の管理体制改善へと動き出していると受け止めています。
国が行うことをチェックすべき立場の者として、今こそ不動産鑑定士法による独立が必要なのではないでしょうか。 場合によっては国の意向に異を唱えることもあり得る立場の人間が、国に脅かされながら仕事をもらい、国に管理されていて良いのでしょうか。

《C士協会からのメールより》

 最近浮上しました新スキーム事例閲覧問題は、地方会とくに、会員数の少ない地方会においては、多大の影響を及ぼすと思います。
一つは、事例の著作権(それに類する作成者の権利)の帰属問題、二つはパートナーシップ制度の根拠と持続の可能性、三つは地方会のデータ管理や閲覧体制の整備並びに受益者負担の考え方の整理など多くの課題を抱えています。
特に、会費や閲覧料の問題については、成り行き如何では士協会財政に大きな影響をもたらします。次世代に過重な負担を残さぬよう、同時に公益性に配慮した持続可能な事例閲覧制度を確立する必要があります。

これらの事例問題に真摯に対応し真剣に悩まれている皆さんに何をお答えできるのか、悩みは深いものがあります。

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