寅次郎・ハイビスカスの花

 寅さんシリーズ全48作BS放映の後半第一作は「寅次郎・ハイビスカスの花」(1980年制作第25作)である。マドンナはリリーこと浅丘ルリ子さんである。この第25作で寅さんとリリーさんは互いに大切な相手であることを心に刻み込んだと云えるのであろう。


 リリーが病床にあるとの報せを聞いて、大嫌いな飛行機に乗って沖縄まで見舞いに駆けつけた寅さんなのである。女性の手を握る寅さんなんて珍しいのである。

 かいがいしく食事の世話をする寅さんなのである。隣のベッドのおばあちゃんがうらやましがるほどなのである。テキ屋稼業の日頃の寅さんの言動からは想像もできない世話ぶりなのである。

 さくらの見舞いである浴衣を着て静養するリリーさんである。寅さんは今日も沖縄の町で啖呵売稼業に勤しんでいるのだろう。リリーさんも明日からは仕事探しにコザの町のキャバレーを回るのだろう。

 でも、病の癒えたリリーが仕事探しを始めるともういけません。元の生活感も責任感も無い寅さんに戻ってしまうのであり、リリーも癇癪を爆発させて卓袱台返しという荒技を披露するのである。

 こうして今回も実らぬ恋のまま、右と左に別れた寅さんとリリーであったのだが、半年ほど経てとある峠のバス停でバッタリ再会するのである。

寅さん「どこかでお目にかかったお顔ですが、
     姐さん、どこのどなたです?」 リリー、ニツコリ笑って
リリー「以前お兄さんにお世話になったことのある女ですよ」
寅さん「はて? こんないい女をお世話した憶えはございませんが」
リリー「ございませんか、この薄情者」
寅さん「何してんだ?、お前、こんなとこで」
リリー「商売だよ」(マイクロバスで歌手巡業の途中なのである。)
リリー「お兄さんこそ何してんのさ、こんなとこで!」
寅さん「オレはリリーの夢を見てたのよ」
 男はつらいよには数々の名セリフがあるが、なかでも秀逸なのが、第25作ラストのこのセリフであろう。極めつけといってもいい。
 それにしてもこのセリフ、渥美清・寅さんと浅丘ルリ子・リリーにしか言えないせりふだろうと思う。人情の機微を見事に描き出したセリフである。
 リリー「以前お兄さんにお世話になったことのある女ですよ」
 寅さん「はて? こんないい女をお世話した憶えはございませんが」
 リリー「ございませんか、この薄情者!」
 寅さん「オレはリリーの夢を見てたのよ」
 『寅さんシリーズ全48作BS放映予定』

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